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真の勇者の定理とは  作者: 山本羽布実
第一章 世界の洗礼
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第四話 二人の気持ち

こんばんは。山本羽布美です。

人の気持ちを書くのはやはり難しいですね。

日々邁進していくのでよろしくお願いします。

 中上湊人なかがみみなとは山道を駆け下り、村への道のりをただひたすら走っていた。村長や御者に足手まといと言われてただイラついていただけかもしれない。しかし今はそんなことは考えられなかった。立ち止まって村を見ると村から煙が上がっているのだ。もしかしたら魔物たちに村人たちが殺されているかもしれない。たった一日しかいなかった村でも異世界に飛ばされて疲弊していた湊人にとってはとても温かいところだった。もう大切なものを失いたくないそう思った湊人はまた走り出した。


「リエナ!逃げろッ!」


キーンが叫んだ頃にはゴブリンはもうリエナの目の前にいた。


「シャァァァァッ!」


その掛け声とともに刺付きの棍棒が振り下ろされる。殺されるそうリエナは思った。それ以上に誰でもいいから、助けてと。その刹那


「うおおおおおおっ!」


という気迫のこもった声とともに一人の男が突っ込んできた。


 なぜここにいるのか、とリエナは思った。そう助けた男は二日前に馬車で近くの避難所にいったはずのミナトだった。しかしそんなことはどうでもよかった。湊人がリエナを押したことで棍棒は止まらない。そのまま棍棒は湊人の体を捉えた。ガリッという音とともに湊人の服が引き裂かれ鮮血が迸る。



「ミナトッ!!」


リエナが叫び前にいた魔物たちを倒したイオナとキーンが湊人のところへ駆け寄る。そしてイオナが焦った口調で湊人に呼びかける。


「ミナト!しっかりしろ!聞こえるか!」


イオナが湊人に呼びかけるが湊人の反応はなかった。真っ青になったイオナはすぐに脈があるかを確かめた。幸い湊人の脈はまだあった。しかし一刻の猶予を争う自体だった。


「回復魔法が使えるものは早く来てくれ!頼む早くっ!!」


イオナの異常を感知したのか村の魔法使いが湊人の近くに寄った。


「ミナトに回復魔法をかけてあげてくれ。今すぐに!」


「は、はい。」


「スキル・キュア・回復術ヒール


魔法使いがそう唱えると湊人の体が神々しい光に包まれ傷を塞いでいく。しかし傷が全て癒えるまで待ってくれる魔物ではない。湊人たちの周りを取り囲んだ。絶体絶命かそう思われたとき。


「おいおい、お使いから帰ってみれば随分と村の様子が変わったな。魔物とじゃれてたの?」


「ちょっとそんなふざけたこと言ってる場合じゃないよ!」


 声が聞こえた方に魔物が反応する。そこには二人の男と女が立っていた。男は腰に大量のナイフフォルダーをつけていた。一方女は弓を背に背負い腰に矢を携えていた。魔物が女に襲いかかろうとしたとき男がナイフをすぐに抜きゴブリンの頭に差し込む。それは一瞬の出来事だった。


「ありがと、クリス」


「どういたしまして。リンダ」


ゴブリンは仲間を殺され標的をクリスリンダに絞った。


「イギャァァァァァッ!」


その怒号とともにゴブリンが突っ込んで来る。クリスはそれをいとも容易く避けナイフをゴブリンの首元に刺す。首を刺されて声が出ないのかシュルルルという音を立ててゴブリンは死んだ。しかしクリスは次の行動に移るのが遅かった。


「ジャァァァァッ!」


ゴブリンがクリスのすぐ目の前まできていた。


「クリス!油断しない!」


リンダはそう言うと矢を引っ張り狙いを絞ると矢を離した。矢は吸い込まれるようにゴブリンの頭部に刺さりゴブリンを絶命させた。


「サンキュー!リンダ」


「あんまり心配させないでよ」


クリスとリンダが戻ってきてからは魔物たちの殲滅はすぐに終息を向かえた。最後の魔物も倒し村の人々は

疲弊した体を休めていた。そしてクリスたちにイオナが駆け寄る。


「クリスにリンダ本当にありがとう!お前たちが戻ってきてくれなかったら、どうなってたか。」


「イオナさん良かったよ本当に。村もみんなも失わずに済んで。」


「うんうん。でもクリスはイオナに早く会いたいとか言って走ってたよね。」


「女性が困っているなら火の中、水の中何処へも行くのが僕だしね。」


場を和ますようにリンダたちが会話をしていた。




湊人は魔物に襲われてから数時間の間、意識を失っていた。治癒魔法で治療したあと湊人はイオナの店の中に運ばれた。


「ミナト起きてよ...。」


とリエナが湊人に向かって話しかけるが、返事はない。リエナは湊人が店に運ばれてから。誰になんと言われようとその場を離れようとしなかった。リエナは湊人が自分の油断のせいで傷ついたと思って罪悪感で今にも押しつぶされそうだった。このままミナトが目を覚まさなっかたら私はあなたにどう償えばいいのとリエナが思っていると。


「う...ん」


気を失っていた湊人が目を覚ました。


「ミナト!」


その声とともにリエナが湊人に抱きつく。目を覚ました瞬間に抱きつかれると思っていなかった湊人は驚きで声が出なかった。


「心配させないでよ...。」


「ごめん。」


しかし、リエナはすぐに湊人から離れると怒り出す。


「なんで私なんかを庇ったの!もしかしたらあなたは死んでいたかもしれないのよ!」


「そんなこと言ったらリエナだって死んでいたかもしれない。」


「そんなの屁理屈よ!あなた自分がどんなに危険な状態だったかわかる?あとちょっと深く棍棒の刺が刺さっていたら本当に死んでいたのよ!」


「だからそれはイオナにも同じことが言えるって言ってるじゃないか。俺はあの時イオナを守りたいって思ったから庇ったそれだけ。」


「なんで、なんでよ!私たちは三日前に出会ったばかりでそんなに仲もいいとは言えない。なのになんでそんな私を自分の命と引き換えにするようなことをして庇えるの?」


「俺はさ二年前に両親が死んだんだ。いきなりだった本当に親戚のおっさんにそのことを言われたときは本当にショックというかそのことが信じられなかったんだ。でも死体となって俺の前に現れた。その時思ったんだもう誰かを失うのはやだって。」


「だから私たちは!」


リエナが反論しようとしたところで湊人が口を開く。


「そうかもしれない、リエナが言いたいことだってわかる。」


「だったら!」


「でも!この村の人たちは本当に優しかった。確かにこの村にいてこの村で生活したのは本当にわずかな時間だった。それでも家族といるような感覚だった。村全体がだれかのことを思って行動している。そんな様に俺は見えた。しかもリエナは俺の命の恩人だ。あのまま森の中にいたら魔物に殺されてた。俺はお前の優しさに救われたんだ。そんなお前を見殺しにすることなんてできないよ。俺にはお前が必要なんだ。だから私なんかなんて言うなよ。」


「わかった。今はそれで納得する。」


「そんな今にも泣きそうな顔で言うなよ。泣きたいときは泣いてもいいんだぞ。」


その言葉を聞いたときリエナの中で何かが切れた音がした。


「うわあああああ」


リエナは泣いた。ただ嬉しかったのだ。自分を守ってくれる人がいて。その人に必要とされたことが。ただ感情に身を任せて泣いていた。



店の外にその様子を伺う三人。クリスとリンダとイオナだ。


「あーあ。いいところ全部あの子に持って行かれたね。」


「ねーイオナあの子名前はなんていうの?」


リンダがそうイオナに聞くと。イオナは胸を張って。


「あいつの名はナカガミミナトだ。」


そう言うとクリスが顎に手を当てた。


「ナカガミ...どっかで聞いた気が...。」


「クリスどうしたの?」


「いや、何でもない。気のせいだろう。」


十分ほどが経ちリエナも泣き止んだ。するとリエナが湊人に言う。


「見苦しいところ見せちゃったね。」


「そんなことないよ。すっきりした?」


「うん。ありがとう。本当に。」


「これくらい何でもないさ。」


二人の会話が途切れる。そこにクリスがやって来る。


「いい雰囲気のところ悪いんだけど。もういい時間だし夕食にしないかい?」


「あんた誰だ?」


「自己紹介が遅れたね。僕はクリス・リンベルマン。リエナのことを守ったんだってね。ありがとう。」


「なんであんたが礼を言うんだ?」


「村の住民は家族同然だから。」


「お前いいやつだな。」


「よく言われる。」


二人が意気投合しハハハと笑っていると。


「クリス遅いわよ。何してるの?」


とリンダが店に入ってきた。


「紹介するよ。彼女はリンダ=ススルト。僕とパーティーを組んでる。幼馴染さ。」


「イオナから聞いたよ。ミナトこれからよろしく。」


「ああ。よろしく。」


夕食は湊人があまり動けないこともあり、四人は湊人の布団の近くで集まって食べていた。その日は夜中まで笑い声が絶えなかったという。


それから3日が経った朝、湊人はある人物の元へと向かっていた。湊人は早朝の訓練をしているその人物に話しかける。


「クリス!お前に弟子入りさせてくれ!」

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