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ダニエルのお見合い  作者: 岸野果絵
ダニエルのお見合い
3/12

朝食

 セーラは、朝食を食べるダニエルの様子を観察していた。


 ちょっと前から、なんとなく元気がないような感じだったが、ここ数日は明らかに変だった。

たまに、虚ろな目で遠くを眺めては「はぁ」と切なげなため息をつく姿は、まるで恋煩いをする乙女だ。

何度か声をかけようかとおもったが、その独特の空気感に、なんとなく声をかけそびれていた。

 

 今朝のダニエルは、一段と暗いどよーんとした空気をかもしだしている。

 いつも食事のときは、本当に幸せそうなぽわーんとした顔をして食べるのに、今朝は無表情で黙々と食べている。

心なしかうつむき加減だ。


「今年の桃は美味しいねぇ~」

 ニコラスはダニエルと正反対に、かなり上機嫌で桃を頬張っている。

「ジョンも食べる? あーんして」

 甲斐甲斐しく息子のジョンにも食べさせたりもしている。


 セーラは無言でニコラスとダニエルを見比べていた。


 どうも釈然としない。

 明らかにダニエルの様子がおかしいのに、なんでニコラスは平然としていられるのだろうか。

ニコラスとダニエルの間に何かあったのだろうか。

いや、何となくそれは違う気がした。

ニコラスは一週間ほどの出張を終えて帰宅したばかりだ。

ダニエルの暗さが増したときには、ニコラスは不在だった。

それに、昨日、ニコラスが帰宅したときは、二人はいつもの調子でしゃべっていた。


「ごちそうさまでした」

 ダニエルは暗い声で言った。


「師匠。今日は僕、実家に行かないといけませんので」

「そっかぁ。ルアードによろしく言っといて」

 ニコラスはいつもの調子でこたえる。


「セーラさん。僕、お昼は実家で食べることになってますので。夕食までには戻れると思います」

 少しうつむき加減で言うと、ダニエルは食器を重ねだした。 


「ダニエル君、大丈夫?」

 セーラはこの時とばかりに尋ねてみる。


「え?」

「なんか、元気なさそうに見えたから」

「あ、ちょっと胃もたれがしてるだけです」

 ダニエルが少し視線を彷徨わせる。

セーラは口を開きかけた。


「ダニエル。食べ過ぎちゃダメだよぉ」

 絶妙なタイミングでニコラスが会話に入ってきたので、セーラはそれ以上聞くことができなくなってしまった。

セーラは軽くニコラスを睨んだが、ニコラスはどこ吹く風という様子で鼻歌をうたっていた。

大きなため息をつきながら、セーラはダニエルを見送った。

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