狼なんて怖くないっ・・・もんっ!
今日も朝から一護が来ている・・・だからな、朝から焼肉丼は食えねぇからな?
「今日はコマちゃんとデートなのぉ。でね、ボク寝坊しちゃったから時間なかったのぉごめんねぇ?」
コマちゃんとは一護の彼女で辻川小愛結で、元々姫愛の友人らしいが・・・姫愛が詳しくは話さないから良くは知らない。
まぁ、知りたくもないが・・・
外見的には綺麗な黒髪を持つ、出るとこは出て、引っ込むとこは引っ込んでるという知的美人だ。もちろん頭は俺たちより良い。
二人でデートしてると『おねショタ』若しくは『ゆりカップル』と囁かれるらしいが、れっきとした同い年で異性だ。
「てか、時間無いなら朝飯作りに来んな。作ったとしてもトーストとサラダだけでいい。」
「やだ!僕の使命なんだから作る!これはコマちゃんにもちゃんと言ってあるもん。・・・ふむ。コタちゃんは野菜が欲しかったんだね?ゴメンネ?気が付かなくって・・・じゃぁ、キムチものっけてあげる!これで野菜もOKだよねっ?」
どさっと焼肉丼にキムチがてんこ盛りになった。一護は自分の焼肉丼にもどっさり乗っけている。・・・うわぁ・・・
「ボリュームありすぎるだろ・・・せめて、もっとあっさりか量を減らしてくれ・・・」
朝から胸焼け確定ってどうよ?こんなに食って道場行ったら吐くわっ!
姫愛は諦めたみたいで大人しく焼肉丼食べてる・・・あ、お前、何気に一護の丼に移してるだろ!ずるいぞ!
「ねー、一護、小愛結にたまには一緒に狩り行こうって誘っといてよ。」
・・・・はぁ?!今、焼肉丼吹きそうになったわ!!!
てか・・・おまっ!・・・ばっっ・・・誘うなよ!!俺は嫌だ!絶対に!!!!!!!!
「ん~一応言ってみるけど無理だと思うよ?三人で遊んでる僕見てるの好きみたいだし。」
「そう?しょうがないわねぇ・・・今日小レイド行こうと思ってたのになぁ。野良で募集する?」
「そ、それが無難だと思うぞ?な?たまには知らない人とか、いいんじゃないか?な?」
思わず吃ったし、早口になっちまったよ。しょうがないよな?焦ってたっていうのもあるんだし。いいじゃんか、言い訳しても・・・
「・・・大体わかるけどさ、必死すぎ。コタ、そんなに苦手なの?」
わかってて聞くな!あれは一種のトラウマだぞ?
思い出させんなよ・・・
んで、時間は飛んで三人でゲームにINしてます。ハイ。『三人』です。よかった・・・
ごほん。さて、小レイドのPT募集中です。
俺たちのPTでレイドたぶん行けるんじゃないかとは思うんだけどな?攻撃魔法使える人が欲しいよな?
目の前にスターテスを呼び出してその中にある『PT募集』のボタンを押して、必要なメンバーを書き込む。
もちろん『攻撃魔法使えるレベル40以上の人1名』とした。
40になればそこそこ使える攻撃魔法持ってることが多いから、でもあるんだけど、あんまりレベル離れると経験値が不味くなるからなぁ・・・
俺たちは一応60は越しているとだけ言おう・・・勿体つけてるわけじゃないぞ?今100がカンストなんだけど、50から異様にレベル上げがマゾくなるんだよ。攻略組と言われる廃人達が大体70~80あたりだといえば、どのくらいマゾいかわかっていただけると思う。正式サービスから約1年経とうとしてるんだけどな…
まぁ、俺たちは他にレアクエでもらった能力とかアイテムとか神の加護とか、なんかいっぱいあるから攻略組にも負けないくらいには底上げされてんだけどさ・・・
大体他二人が見つけてきたクエだってのが・・・なんだかなぁ・・・
あ、PT希望者から特定コール入った。
《まだ募集してますか?》
あ、男の声だ。
《はい。魔法使いの方ですか?》
《54の魔法使いです。小レイドってありますが、私でもいけますか?》
なんだか、えらく丁寧な話し方の人だな。
「54魔法使いきたぞ。えらく丁寧な話し方の男だけど?」
一応二人にも聞いてみる。
「ん~ボクはコタちゃんがよければ誰でもいいよ~」
「ま、何でもいいぞ」
・・・って、こいつら・・・丸投げかよ!
《4人のPTになりますがいいですか?》
《あ、構いません。ちょっと竜系のドロップ品が欲しいので・・・》
まぁ、話した感じ悪くなさそうだから、Okするか。
そう思ってPT招待を飛ばす・・・・ってぇ!名前が『ムスカ』って・・・あの?
〈よろしくお願いします。どちらにいけばいいですか?〉
〈よろしくぅ~〉
〈黒い森の手前の平原にいるのでリーダーツリーの辺りで待ち合わせよう〉
PTチャット使って会話しているが、俺は実はテンパっている・・・まさかな・・・うん・・・きっとよくある名前だよな?
俺は他の二人他は違って、いろんな掲示板も覗いていたりするんだけど・・・
俺達・・・割と話題に出てるんだよな・・・初めて見たときびっくりしたよ。
ウン。俺自体はそんなに上がってないみたいなんだけど、あいつらのせいで割とセットで最近目立ってきている。
あんな話題になるならてか、そっち系の話題になるくらいなら、目立ちたくはなかったかなぁ・・・って・・・
俺がテンパっていた間も時間は流れて、俺たちのところに『ムスカ』がきた。
「あ、初めまして『ムスカ』といいます。よろしくお願い・・・うぇ!」
あ、やっぱりあの『ムスカ』なんだ・・・あっちも俺たちに気が付いたようだし・・・
俺、今日は厄日じゃないか?朝の事といい、『ムスカ』の事といい・・・泣いてもいいかなぁ・・・
「はじめましてぇボクあずきです。67戦士でぇ~す」
「三郎だ。70回復職だが、バフ等も使う。」
「あ~・・・コタです。65格闘家です。とりあえずこの4人で小レイド行きましょう」
「あ、はい、頑張りましょう?」
・・・ムスカよ。何故疑問形なんだ?・・・あ~今度はこいつに晒されるんだろうなぁ・・・ま、いっか・・・害があるわけじゃないし・・・
てか、開き直るしかないだろうよぉ!ちくしょう!(ぐすん)
なるべくムスカに背後を取られないように(考えすぎ?しょうがないだろ!)平原を歩いているとシルバーウルフが1匹現れた。
1匹ってことは、はぐれって意味で普通のシルバーウルフよりレベルが高い。
・・・何故集団になるとレベルが下がるのかは謎だ。
「面倒だから消しちゃいますよ~」
ムスカの声に真面目な顔したあずきがストップをかける。
「みんなっ!手を出さないで!」
あずきは一人シルバーウルフに近づいていく。
・・・・何する気だ?まぁ、あずき一人で倒せる敵だが・・・何か嫌な予感が・・・
真面目な顔したあずきは直ぐにニコリと微笑んで見せた。
「よーしよし。怖くないよぉ?」
片手を差し出し『ちっちっち』と舌を鳴らしている。
・・・お前は何を目指しているんだ?ム○ゴ○ウさんのつもりか?
「えっと・・・ティムシステムなかったよね?」
ムスカがこちらを見て顔を引きつらせている。
あぁ、意外と普通だったんだな・・・スマン変態扱いして。
一応心の中で謝っておく。
ま、ケツは向けないがな。
「気にするな。あずきはたまに独創的なことをするから」
三郎が返事しているが、あれは『たま』なのか?
いや、初めての人に本当のことなんて言えないな・・・
そうしてるうちにあずきはてくてく近づいて直接撫でようとしている。
ほんとに・・・コイツ、何考えてるんだろうな・・・何も考えてないんだろうな・・・本能で動いてるんだろうな・・・あー疲れた・・・殴りたい。
もちろん相手はシルバーウルフ。ティムのシステムでもあれば違ったんだろうけど、『襲う』『逃げる』以外はコマンドないんじゃないか?
案の定、あずきは襲われた・・・いや、静かにがぷっと噛まれたんで、襲われてる感が少ない。
「あ、・・・」
どうしようとムスカがこちらを見る。
しょうがないな・・・
「あずきー・・・どうすんだ?」
「ダメっ!手を出さないで!」
こちらを牽制するように手をパーにして止める。
「100%懐かないと思うがな」
ため息一つ吐いて三郎は回復魔法を掛けている。噛まれるだけでも結構なダメージのはずなんだが、それでも嬉しそうにしているあずきを見ていて・・・何と言うか・・・やっぱ、馬鹿なんだろうなと改めて思った。
シルバーウルフに頭をというか、顔の真正面からがっつりと齧られているにもかかわらず、素晴らしい笑顔のロリ。傍から見ても異様な風景だと思う。ちらりとムスカを盗み見してみたけど、おーい、口があいてるぞぉ?
ま、気持ちはわかる。あずき・・・何とも言えないもんなぁ?
笑顔でシルバーウルフを撫でようとしているが、シルバーウルフは大型犬より大きい・・・牛よりはちいさいか?位なので、頭を咥えられてる今、足がプランと宙に浮いているし、顔は撫でられても、体には手が届いていない状態だな。
ホント何とも言えないわ・・・
「えっと・・・どうしたら・・・」
戸惑うムスカに三郎はたまに回復魔法をかけながら、
「あぁなったら気が済むまで放置だな。言う事聞きゃしない。すまんな。時間とらせて。」
と謝ってる。
ほんとに悪いよな・・・ムツ○ロ○さんごっこ終わるまで放置しかないんだよなぁ・・・
「いや、時間はいいんだけど、シルバーウルフ倒しちゃったほうがいいんじゃないかと・・・」
あ、ムスカの口調が崩れた。まぁ、そうなるわな。あんな風景見てたら。
「手を出すなって言うんだから、出さなくていいよ。」
とりあえず、肩を叩いて落ち着かせる。
「回復はしてるから、平気だ。」
ほら、三郎もこう言ってるし。気にすんな?
三郎って、こう見えてかなり優秀なヒーラーだから。
攻略組によく誘われてついてってるし。ほんと、レベルが開いていく一方だよ(ぐすん)