幼馴染と姉弟は共通の趣味で遊ぶ
お待たせです。
目が覚めると何故か揚げ物の匂いがしてきた。
・・・いや、まて、うん、朝から揚げ物とかありえなぇよな?
とりあえず寝巻き替わりのスエットのまま部屋を出てキッチンへ向かう。
「ふんふ~ん♪」
めっちゃご機嫌で料理を作ってる奴がいる・・・
「一護・・・お前、人ん家で何してんの?」
「コタちゃん~おはよぉ~朝ごはんもうすぐ出来るから、顔洗って着替えてきなよぉ~」
こいつは俺の幼馴染で竹中一護。所謂男の娘ってやつでまぁ、可愛い。
ぱっちりした大きめの目とふわふわした髪。
ご機嫌な時とかはちょい高めの声を出しているが、普通に喋ればちゃんと男声してんだけどなぁ・・・ある意味計算なんだろうな。
それにしても・・・うん。男には見えんな。
てか、こいつに合鍵渡したの誰だ?母さんか?親父か?・・・きっと親父だな。
「ちょっと一護!朝から何作ってんのよ!」
腰に手を当てて仁王立ちになっているこいつは、俺の双子の姉、神宮姫愛だ。
天パの髪をポニーテールにしていてちょっと外人的な顔をしている・・・因みに美人ではない。
「ちょっとコタ~今、お姉さまに対して失礼なこと考えなかった?」
「いんや?キノセイですよ?」
一護の白くて可愛らしい手が、テーブルにカツ丼を置いていく。カツはサクサク卵とろっとろな美味そうなカツ丼・・・
いや、せめて昼ごはんなら喜んで食べるよ?
今、朝だからね?姫愛が言うように何作ってんの?って感じだ。
「朝ごはんはしっかり食べなきゃだめだよぉ」
言いたいことは間違ってないんだがな?量と味が濃すぎじゃないか?
「しっかりじゃないわよ!朝からこれは勘弁して!私は朝はあっさりしたのがいいの!」
「えぇ!!カツ丼はダメだったの?・・・やっぱ牛丼にしとけばよかったかな??」
「・・・うん。牛丼もこってりしてるからな?」
「朝はトーストとサラダ、スープで十分よ」
一護に付き合って飯食ってたら、太ったって嘆いてたからなぁ・・・ホント結構食うのに細っこいコイツのどこに入っていくんだろうな?痩せの大食いってやつか?
因みに俺は普通に太る。から、馴染みの道場で今も稽古させてもらっている。
師範には言えねぇよ・・・道場通うホントの理由がダイエットとか・・・
姫愛も行けばいいのにな。
まぁ、姫愛曰く『格闘オタクに付き合いきれないわ!』だそうで。
「えーっ姫愛ちゃん。デザートも用意したんだよ?」
「・・・一応聞くけど、何?」
「チョコレートパフェ~」
あ、一護の頭に姫愛の鉄拳が落ちた。
「痛いよぉ姫愛ちゃぁん」
「だからなんで、朝っぱらから甘ったるいものまで用意してんのよ!」
「むー・・・んじゃあっさりめのベリーパフェにする?」
・・・相変わらず、コイツの思考が解らんというか・・・頭ん中お花畑すぎるっていうか・・・
でもまぁ、しょうがないからカツ丼に付き合うか・・・後で胃薬飲んでおこう。
姫愛もカツ丼は食わないかもしれないけど、チョコパ、朝から食ってりゃ痩せないと思うぞ?・・・言わないけどな。
「んー姫愛ちゃん食べないならボクが食べよ~っと。残したら勿体無いもんね?」
ほんと、お前、どんなブラックホール胃に飼っているんだ?
今更ながら俺は神宮小太郎。姫愛とは双子だけど、二卵性双生児ってやつなせいかあんまり似てない。
もうね、そのへんにウヨウヨいる普通の顔立ちだ。
姫愛の名前は厨二病の親父に付けられたんだが、俺は母さんが付けたらしい。・・・感謝だ。きらっきらな名前なんか遠慮したい。
三人とも19才の大学一年生だ。
可もなく、不可もなくって感じの普通の大学に三人揃って入学した。
入学して親元から離れて、親が買ってくれたマンションに姫愛と二人で生活している。
まぁ、俺たちは顔は普通だけど、親は小金持ちなんでバイトしなくても、贅沢しなければ暮らしていける程度には仕送りも貰っている。
一護も同じマンションに生活しているが、しっかりお隣さんになっているのが、ちゃっかりしてるというかなんというか・・・
こいつは昔からよくいろんなことに首をつっこんで、俺たちを巻き込んできたけど、悪気がないってとこがタチが悪くて、主に俺が一番苦労してるんじゃないんだろうか?
「ねぇ、今日は何時頃にINできるぅ?」
目下三人がハマっているのはVRMMOの「ガードオンライン」捻りもなく「この世界を冒険者として守ろう!」なんてキャッチフレーズのオンラインゲームで、三人でチーム組んでクエを消化していっている。
元々三人ともゲーム好きで、勉強はできなくてもゲームはできる(だめじゃん)から、廃人・・・とまではいかないが、そこそこ廃狩りしてる中、姫愛の異様な運の良さと、一護の妙なところに気がつく癖(?)のおかげで、普通ではできないレアクエストを拾い、クリアしていったせいか、チート気味なスキルをいくつか持ち、廃人並にレベルは上位にいる。
俺の特技?・・・俺は至って普通だ。きっと一人でプレイしてたら、レベルはこんなに上がってはないだろうなと思うくらいには普通だ。
「ん~講義は昼までだから遅くても3時くらいにはINするかな?」
「あ~俺も道場に寄ってくるからそんくらい。」
「武器強化したいからさぁ、黒針山の坑道に付き合ってよぅ。」
「んじゃ、3時に北出口の前に集合ってことでOK?」
「OK~」
「あ、私も装備に使いたいからレアメタル狙いでよろしく~」
何気に気がついたら、三人ですべてを賄える様になってた。
一護が戦士で鍛冶師と調理師。
姫愛が回復職兼状態異常系職の魔法使いで裁縫師と錬金術師。
俺が格闘家で薬剤師と装身具師。
最近俺の薬剤師のスキルが、変な方向に進んでいっている気がしなくもないが、キニシナイ。
約束の時間になったからゲーム内にINして、北出口に準備を整えて軽く身体を動かしながら待つ。
ゲーム内の俺は、キャラ名を『コタ』と名乗り、リアルとあまり変わらない体型をしている。
顔もたいして弄ってないので平凡な顔になっているし、色彩も茶髪に茶色の目と平凡感がありありと出ている。
「あ、コタちゃぁ~ん!!お待たせ~」
パッと見7~8歳位の白いワンピースタイプの可愛いドレスを着た少女がこちらへと走ってくるのが見える。
真っ直ぐな銀髪はお尻の下ぐらいまで長く、前髪は眉ぐらいでパッツンに切ってあり、右目は赤で左目は青という厨二病バリバリのオッドアイを持った少女は、ナント一護のキャラで『あずき』という名前だ。
「ねーねーこのドレス似合う?サブちゃんが新作って作ってくれたのぉー」
ちなみにあずきの言っているサブちゃんっていうのは、姫愛のキャラ名のあだ名で、本名のキラキラネームに対抗して付けたのか『三郎』と名乗っている。
・・・何故三郎なのかよくわからんが、本人が良いならイイんだろう・・・
その三郎もあずきの後ろからのっそりとやってくる。
相変わらずむっさいわ・・・
ガチムチのボディービルダー並みの筋肉という鎧を纏った2mくらいのデカイ男が三郎だ。
着ている黒い神父の服がピッチピチになっていて、ボタンがはじけ飛びそうだ。
正直そばに居たくはない。
「待たせたな。」
声はちゃんと男声に設定しているから違和感はないが、中身が姫愛だとわかっているからなんとも言えん。
「んじゃ、行くか?」
いつも通り俺がリーダーになり、PT申請を出すと程なく3人PTが組まれる。
「何だァ?ガチムチに幼女の組み合わせとか、キモイな」
知らない声がかけられ思わず振り向く・・・が、相変わらず俺、空気かってくらいスルーされてるな・・・
レベルは多分下だろうな・・・騎士系の職の男だ。
装備とかからしてそこまで強くなさそうだ(←失礼)
「わざわざ声かけてくるなんてぇ、ボクに構ってもらいたいのぉ?」
あずきの声にニヤける騎士・・・お前ロリコンか?俺はお前の方がキモイぞ?
「逆だろ?俺に構ってもらいたいから振り向いたんだろ?悪ぃな、俺胸のデカイ大人な女の方が好きなんだわ。」
多分騎士のPTなんだろう・・・こっちをからかうつもりで仲間内でゲラゲラ笑ってるようだが、アホか?こいつら。それとも子供か?喧嘩売って歩いてるようなガキを相手にする奴なんか少ないだろうなぁ・・・
もちろんあずきは、その少ない方に入るんだけどな・・・面倒臭ぇ・・・
「その胸のおっきな女性にはモテないからぁ、構ってくれそぉなボクに声かけたんだよね?可愛そうねぇPVくらいなら相手してあげるよぉ?ボク優しいもん。」
あーあ・・・あずきのやつ、にっこり笑って無邪気を演出するなんて・・・PV好きだな・・・
「この・・・マセガキが!潰してやる!」
こいつ馬鹿だろ?VRで外見がロリでも、中身は違うことぐらいわからんか?まぁ、コイツがどうなっても自業自得だが、後のこと考えると・・・面倒臭ぇなぁ・・・
く・・・苦情は聞かないんだからねッ・・・ってツンデレてみても、中途半端感は否めない・・・更新亀ですみません。