1話(2)
前回に上げたものがあまりにも中途半端は終わり方をしたので、急遽次の部分を上げることにしました。今回も尻切れ蜻蛉になるかもしれませんが、よろしくお付き合い願います。なるべくちゃんとした終わり方になるように心がけますが、その辺りはあまり期待しないでください。まぁグダグダ言ってても仕方ないので本編行きましょう。
日が高く上がっていて気温も丁度いいためか、城下町の大通りは、活気にあふれていた。両脇に数ある店の中から、自分の母が経営する店を探す。
「母さん、薪取って来る。テキトーになんかちょうだい。」
何も知らない人が聞いたらなんと図々しい子供かと思う事は間違いないだろうが、生憎、この城下町で、この家族の事を知らない人はそう多くない。
「はいはい。気を付けてね。」
母親はそう言ってネロにパンなどの軽食を差し出す。
「それといつも言ってるように」
言い終える前に、ネロはつまみ食いに来た猫に対して、右手も向けた。掌から黒色のエネルギー体が伸び、猫の首を掴んでどこかにやってしまった。それを見た母親はネロの顔の真横に向かって包丁を投げた。
「マナは使わないようにって言ってるでしょ。普通の人はできないからって。」
包丁の刺さった先には大きな虫が壁に磔にされていた。それを見たネロは、いつも言われていた「マナの扱い」を思い出した。
「うん、ごめん。」
「じゃあいってらっしゃい。」
母親に店で出している食べ物を少し貰い、ネロは西の城門をくぐった。
「よぉ、ネロ!相変わらずとぼけた面してるな。」
城下町のヒトの出入りを記録する名簿に名前を書いた時、背中を強く叩く者がいた。
「衛兵さんも、お元気そうで。」
「また親父さんのパシリか?」
「まぁ、そんなトコ。「いつもの」ある?」
叩かれた背中を擦りながら問う。
「あるぜ。ホレ。」
衛兵が小さな小石を放る。それを受け取り、ポケットに入れた。
「ありがとう。これが無かったら仕事できない。」
「小型化の魔法なんて輸送のためだけにあるようなモンだからな。お得意様だし、親父さんの事もあるから金は要らねぇよ。」
「ありがとう。じゃ、行ってくるよ。」
「気を付けろよ。最近どうにもマナが活性化してやがる。」
その声にネロは片手を上げて返事をして、西に広がる大樹海にむかって走って行った。
「いやぁ・・・今日も地上は平和だなぁ。」
ネロの住む城下町の外れにあるとある喫茶店で、紳士然とした中年の男が街道を眺めて呟く。
「そろそろ始まるな。彼はどう動くかな?」
ウェイトレスが運んできたコーヒーのお替りを一口含んだ瞬間、
「見つけましたよ、神様!!何でこんなトコでこんなコトしてんですか!?仕事が溜まってんですからとっとと帰りますよ!!」
割烹着を来た気の強そうな少女を見て思いっきり吹き出した。
「ちょっとぐらい休憩しても――」
「――貴方はいつも休憩してるでしょ!?どちらかと言えば私に休みくださいよ!!」
「・・・ハイ。」
言い終える事も許されず反論されてうなだれる「神」と呼ばれた男を無視して少女は男の腕を掴んで続ける。
「これから評議会で年中行事の議決をしてその後天上界の行事関係の予定を立ててそれを評議会議員に検討してもらってそれを元に予算の決議をしてそれから各所の掲示板に全て公布していくんですから休んでる暇なんて本来無いんですよ?分かってます?分かってないですよね?分かってますよ縛って連れて帰りますから安心してください。痛いのはほんの一瞬ですから。本当に遊んでる暇なんて無いんですからね!?」
「拒否権くだs「お断りします。」」
きっぱりと言い切られて、男は自由が無いことを悟り、諦めたように少女に連れられて行った。
(・・・自由ってなんだったんだろう。神って、何なんだろう)
考えてもムダであることは彼も分かっていたが、つい考えてしまっていた。
城下町西門観測台
城下町は穏やかな昼下がり。だがここだけは様子が違った。
「西におよそ6km地点に強力な汚染反応を確認!!浄化機関への連絡急げ!!」
「街の中から誰も出すな!!汚染反応が出た住人は優先的に浄化させろ!」
「出入りした時の名簿から帰ってきてないヤツを洗い出せ!!」
「民間人は全ての作業を中断させて家に帰せ!!城の兵士にも連絡しろ!!」
「周囲の警戒を怠るな!!いつ発狂したヤツが来るか分からないぞ!!」
西の方面に強力な魔法を使用した時の反動で発生するマナ汚染が発生していた。
通常、魔法や魔術を行使すると、魔法に変換されたマナと、変換しきれなかったマナが生み出される。一般に、変換しきれなかったマナが少ない魔法師や魔術師程優秀とされている。
「魔道機関から外にでたヤツは居るか!?」
「魔道機関は先日の魔法事故の後処理で外に出られる余裕はありません!」
変換しきれなかったマナは基本的に体内に蓄積し、それが元となって寿命を削る。故にマナに関わらない人は総じて長命であり、マナに深く関わる人程短命である。しかし、膨大なマナを使用する第三位階魔法以上の魔法を使用した時、そのマナは反動として体内に収めきれず、周囲に拡散させてしまう。これが元となって環境を汚染し、そこに住まう生物の意識を侵食、発狂させる。これを浄化して元の環境に戻すのが浄化機関である。しかし、第三位階魔法とは基本的に攻撃魔法であり、汚染が発生するのは魔法の行使から最低24時間が経っている場合である。さらに、各属性の第三位階魔法は10km地点でも視認できる程派手なので、対策を立てやすい。だが今回は前触れも無く、突如として、大規模な汚染が発生した。
「浄化機関への連絡は終わったか!?」
「まだです!」
「速くしろ!!連絡が終わり次第、城壁の上で発狂した奴らを全部叩き落とすぞ!!」
「発狂した連中には絶対に触るなよ!?」
「了解!!」
門番は急いで城下町に駐留する浄化機関に連絡した。が、この時点では既に手遅れだということを誰も知らなかった。2人を除いて。
城下町専属浄化機関実働部隊本部
「上空に汚染反応を感知!!数、10、12、24。さらに増加!!」
オペレートシステムが組み込まれた機功種製の計器が叫ぶ。
「思ったよりも早いな。」
酒瓶を片手に持つ銃士が呟く。
「どうするの?こんな小さな街じゃ応援もロクに呼べないよ。」
その隣で少女が魔道具の調整をしている。もっとも、彼女のマナの貯蔵量を考えるとそんなモノは必要ないのだが。
「だからこその俺達なんだろ?とっとと片付けて飯にしようぜ。この時期のラム酒ってのは格別なんだ。」
「またそうやって遊ぶことばかり・・・」
「それに、浄化を優先するんなら街は放置して構わない。そうだろ?」
「まぁ、そうなんだけどね。」
だが、と男は酒を煽って続けた。
「これはもう逃げた方が良さそうだ。」
「・・・どういうこと?」
城下町から西に7km地点 タイタス大樹海中心付近
「こんなモンか。」
以前切り倒した大木を暖炉に入るサイズまで細断したネロが汗を拭く。目の前には数えきれないほど――持ち運べない程、ではない――の薪が山のように積まれていた。その隣には細断に使われた、マナを注ぐと巨大化する斧がころがっていた。
「これくらいか。まぁ早い方だな。」
門番の衛兵から貰った小型化の魔法石を使って荷物をまとめ、帰り支度を始めた時、大樹海の奥から異質な気配を感じた。
「何だ?」
隠す気の無い、あからさまな敵意。それも動物的なモノではなかった。家業の手伝いによって街の衛兵すら簡単にあしらう程の体力を持つネロは一応警戒するために背の低い木に登り、枝伝いに高い場所へと移って行った。直後、真上を巨大な鳥が過ぎて行った。
「ロック鳥だ。何でこんな所に。」
本来、ロック鳥は他の生物が入れない程樹海の奥に巣を作ってその周辺で生活するため、滅多に見られない。且つ、非常に縄張り意識が強く、警戒心も高いため巣を放り出して樹海から出ることは無い。
不思議に思っていると、突然、地鳴りが起こった。
「今度は何だ!?」
もうもうとたちこめる土煙に口と鼻を押さえて地面を見る。
「・・・何だよ、何が起きてる。」
地面では地上で暮らす獣の群れが何かから逃げるかのように移動していた。猪や鹿を始め、熊や獅子の肉食獣までも必死に逃げていた。呆然と見つめるネロの頬を何かが掠める。
「痛っ。」
切れた頬を押さえて周りを見ると、虫の類も空を飛んで移動していた。この不気味な大移動の原因はすぐに分かった。それはネロの予想の遥か上を行き、戦慄させた。
「むき出しのマナだ。汚染が出たのか。」
持ち主の制御を離れた高濃度のマナが濁流の如く地面を舐め尽くし、嵐のように吹き荒れる。その奥から、また新たな脅威が姿を現す
・・・どうですかね?尻切れ蜻蛉になっていたらごめんなさい。なってないならそれは良かったです。
現状、上げている部分は全て別のファイルからのコピペなので、部分的に変えると、ファイルの中での話のつなぎ方がおかしなことになるので、できるだけそのままの形にしておこうと思っているのですが、どうやらそれが裏目に出ているようで・・・。まぁその辺りは要検討ですね。
とりあえず、貴重なお時間をこんな粗製に費やしていただいてありがとうございます。次の更新も不定期です。