唯君を、特別視
人に合わせて生きてきました。
だから、ある程度人の思考は僅かな言動や表情などの変化で見分けることができるし、それに合わせたその人専用の対応も可能だ。
それで自分が無くなることはないし、自分の意見を主張しつつ生きていく様をこの十数年、後すこしで二十歳になるという年で大方編み出した。
だから別に人間関係に苦労したことはないし、割り切ることも同情することも得意だから誤った選択肢を選ばなければ大抵上手い人付き合いを保てた。
ただ、過去を繋げるのが面倒くさくて現在の環境でこれからの付き合いが無くなれば自然と疎遠になるけれど。
そのことを悪いとは思ったことはない。
ただ、会ったら会ったで今の環境に適した自分が既に完成されているから、過去の自分を思い出しながら接するのが億劫なだけだ。
それでストレスを溜めるなんてアホ臭い。
我慢した結果、不満の気持ちを爆発させてお互いを傷付け合うことの方が馬鹿らしいと思うんだ。
その他大勢の人に対しては殆どこう。
…だけど、君は違うみたいだね。
君だけは違うみたいだ。
「〇〇さん」
好きな声が名前を呼ぶ。
私とは違って君は面倒な過去も、不安定な現在も両方同じように大切にする。
戸惑う未来に自分なりに頑張って向き合っている君は、私にはちょっと理解できなくて。
でも、憧れてしまっていて。
そうなりたいな、と惹かれてしまって。
私は君とは違うとわかっているけれど、成れないと知っているけれど、どうしようもなく、
「どうしたの?」
ちょっと泣きそうな声で振り返る。
愛おしい君に近づけない私は、時折自分が汚く思えてしまうのです。
馬鹿な話だ。
君だけは失いたくないと矛盾する自分に同意してしまっているんだ。
可笑しいだろ?




