バニーとの出会い
8月の始め。カンカンと照りつける太陽。暑い。
日陰者の俺の部屋にはクーラーがない。なぜ暑いのにクーラーのある部屋に移動しないかというと、18禁のエロゲをやっているからである。そして、現在においては俺以外の家族はいないが、連中がいつ帰ってくるかわからない状況だからである。
暑いと言っても、我慢できないほどでもない。扇風機がある。網戸もある。気まぐれで吹く、そよかぜもある。心頭滅却すれば、火もまた凉し。
そんな折、俺のゲームへの集中を妨げるかのように外で物音が聞こえた。
ピンポーン ピンポーン
インターホンが何度も鳴るが、居留守を使う。どうせ、なんかのセールスだ。相手にする事はない。
「大変です、おじいさんが事故で危篤です。早く、来てください」
若い女の声で懸命に呼びかける。
うちに、おじいさんはいない。父方も母方もこの世を去った。かなり、悪質なセールスのようだ。
「本当に危篤なんです。早く、来てください」
しつこい、何回目だ。これ以上は近所迷惑だ。文句言ってやる。俺はムクッと立ち上がると玄関に向かった。
「一体、何のマネだ。うちには、おじいさんなどいない。父方、母方、両方とも死んだ!」
玄関のドアを開けながら俺は文句を言うが、外を見て驚いた。ドアの前にいたのは、バニーガールだったのだ。しかも、かわいい。巨乳、黒髪、セミロング、色白、ナチュラルメイク。
俺の中のお嫁さんにしたいランキング、堂々4位入賞。まったく俺のハートを鷲掴みである。
「やっと、出てきてくれましたか。大事なお話があります。心して聞いてください」
真剣なまなざしで俺に訴えかけるバニーガール。
「んっ! 宗教の勧誘か? 間に合っているんだけどな、そういうの。俺、高校生で夏休みの宿題やらなきゃならないんだ。悪いけど、つきあってられない」
もったいないと思いつつも、玄関のドアを閉める俺。
「待って下さい。すぐ終わります。だから聞いてください」
閉めようとするドアの間にハイヒールを履いた足を捩じ込むバニーガール。
「驚かないで下さい。あなた様はかぐや姫の婿殿に決まったのです」
「はぁー!? もう帰ってくれ」
「さあ、月に参りましょう。貴公子様。かぐや姫がお待ちです」