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第6話 光を守る者

山の麓の村に霧が立ち込める早朝、咲弥はゆっくりと歩を進めた。

胸の光核が淡く脈打ち、手にした桜の枝に微かな振動を伝える。


村の外れ、川沿いの道で子どもたちが遊んでいるのが見えた。

笑い声が霧の中に溶ける。だが、その背後に、不穏な気配があった。


黒い霧がゆっくりと近づき、形を作る。

影喰いだ。昨夜よりも大きく、うねる速度も速い。


咲弥は立ち止まり、胸の光核に手を当てる。

「怖くても……泣きそうでも……守る!」

光が枝を通してほとばしり、影に向かって放たれた。


影は子どもたちに手を伸ばすが、光は優しく彼らを包み込む。

黒い霧が光を避け、形を保てずに崩れていく。


子どもたちは泣くことも逃げることもなく、ただ桜の枝から溢れる柔らかな光を感じて立っていた。

咲弥はゆっくりと歩み寄り、枝を胸に抱く。


光が胸の中で震え、七つの波長がそれぞれ反応する。

喜び、愛、優しさ、楽しさ、幸せ、誇り、信頼——

全てが一つに溶け、影を押し返す力となった。


影は最後の力を振り絞るが、咲弥の胸の光核は揺るがない。

少女の意思と、守る対象への想いが光を形作る。


光が子どもたちの周りを包み込み、影は消え去った。

村の空気は一瞬にして柔らかくなり、朝霧の向こうに、桜の淡い光が舞った。


咲弥は胸の光を抱きながら、そっとつぶやく。

「誰かを守る力……少しずつ形になる……」


だが、光が強くなるほど、胸の奥にわずかな違和感が生まれる。

この力は誰にでも宿るわけではない。

壊れやすく、守る対象が純粋であるほど力は安定する。


咲弥は小さくうなずき、村の子どもたちを見渡した。

「この光は、必ず……未来に届く」


遠い未来、名前も知らぬ誰かがこの光を受け取り、守る力を完成させることになる。

その瞬間を信じ、少女は今日も桜の枝を胸に抱き歩き出した。


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