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第3話 初めての守り手

朝の光が山の木々を柔らかく照らす中、咲弥は谷を抜けて自分の社へ戻った。

胸の奥で光核が穏やかに脈打っている。


あの夜、影に飲まれそうになった少年のことを思い出す。

まだ幼い心の中に、揺れる光が残っていた。

それは守る価値のある光だと、咲弥は確信していた。


社の奥で、咲弥は桜の枝を取り出す。

昨日の夜、光核の力を少しだけ流し込んだだけで、枝は淡く光った。

だが、一晩経つとその光は消え、ただの木になってしまった。


咲弥は唇を噛んだ。

「まだ……足りない……もっと強くしないと……」


胸の光を集中させ、手に持つ桜の枝にゆっくりと光を流す。

枝は震えるように温かくなり、淡い光を取り戻した。


小さな枝だが、握ると柔らかく脈打つ。

その光を、咲弥は自分の胸に当てて感じる。

「これなら……守れるかもしれない」


村の子どもや家族に渡すと、枝の光は小さな波紋のように広がる。

泣いていた子どもは落ち着き、怒っていた母も静かになった。

咲弥は胸の奥で光が揺れるのを感じながら、心の中でつぶやく。


「優しさを、形にするんだ……」


しかし、枝の光は数日経つと消えてしまう。

力はまだ不完全で、強さも長持ちしない。


咲弥は深く息をつき、再び胸に手を当てる。

光核の波が指先まで広がり、ほんの少しだけ、桜の花弁の形が見えた。

まだ小さな光の粒だが、確かに芽吹き始めている。


「守る力は、誰かの心の中に宿るもの……

 壊れない優しさを持つ人にこそ届く……」


その時、咲弥の耳に微かな音が届いた。

遠くの谷で風がざわめき、ひそひそと人の声のようなうねりが重なる。

影の気配が、少しずつ形を持ち始めている。


咲弥は決意を新たにした。

「私が、この光を守る……

 誰かが壊れそうになったら、絶対に止める」


桜の枝は手のひらの中で温かく脈打ち、

胸の光核はその温度を吸収するかのように震えた。


少女は知っていた。

この光を完全に形にし、長く留める方法を見つけることが、

未来に必ず現れる“折れない優しさの持ち主”のためになることを。


空に、ひとひらだけ桜の光が舞い上がる。

その光は遠い未来に届き、名前も知らぬ誰かの胸で芽吹くはずだ。


咲弥は小さくうなずき、光を胸に抱いた。

守るための旅は、まだ始まったばかりだった。


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