僕に金貸して下さい!
玉座の間は、重厚な扉が開き、来客者の足音が響いた。
アルテミア国王は玉座に座し、威厳の眼差しを投げる。
臣下たちが息を潜め、王の言葉を待つ。
突然の訪問者――一介の国民が、王の前に進み出た。
国王は玉座から身を乗り出し、声を轟かせる。
「よく来た。ワシがアルテミア国王である。何用かな?」
男は王の前に跪き、声を張り上げる。
「国王! 金貸して下さい!」
国王は男の言葉に驚き、咳払いをする。
「な…何だと? 突然の訪問に驚きを隠せないぞ。」
男は拳を握り、必死に続ける。
「国王! 僕、チンチロリンで負けて無一文です! 金貸して下さい!」
国王は困惑した表情で、玉座の肘掛けを叩く。
「そ、それは無理じゃ…我が国の財政は厳しくてのう。」
男は目を潤ませ、声を震わせる。
「じゃあ、僕どうしたらいいんですか!? 国王! 一人の国民が死んでしまいますよ!」
国王は焦りながら手を振る。額に汗が滲む。
「待て待て! 落ち着いてくれ! そんな大袈裟な話になるとは…」
男は王座に近づき、懇願する。
「国王! 来月には倍返しします! そしたら財政も豊かになるでしょう! だから、僕に金を貸して下さい!」
国王は首を激しく横に振り、深くため息をつく。
「いや、そういう問題じゃないじゃろう! 国庫から個人への貸与など前代未聞じゃ。」
男は声を荒げ、王座を指さす。
「でも、その前代未聞を起こさないと、僕飢えて死にますよ!? もしくは犯罪に手を染めてしまいます! 国王! 平和の為に僕に金を貸して下さい!」
国王は困った様子で顎に手を当て、考え込む。
「むむむ…確かに国民の安全は最優先じゃが…しかしのう…」
男は王座にすがるように続ける。
「国王! 貴方はこの国の王でしょう! 国民を助けて下さい!」
国王は苦しそうな表情で目を閉じる。
「分かっておる…だが、これはあまりにも例外的過ぎるんじゃ…」
男は懐からサイコロを取り出し、提案する。
「じゃあ、僕と博打しましょうよ! 僕、サイコロ三つ持ってますわ! それで、チンチロリン勝負して、僕が勝ったら金貸して下さいよ!? それでいいでしょ!?」
国王は驚愕して飛び上がり、顔を真っ赤にする。
「な、なんという提案じゃ! ワシが賭博なぞできるわけがないっ!」




