庭で初めての採取
ユリカさんの家の裏には、小さな畑がある。
おもに野菜が育ててあって、自給自足の生活らしい。
きゅうり、トマト、プチトマト、ナス、ピーマン、少し近くにヨモギの自生もある。
田舎暮らしを夢見ているひとには、あながち夢みたいな生活の気がする。
ただ、家族も友人もいない。
写真も、絵も禁止。
ラジオやテレビもないし、電子レンジもない。
電気、ガス、あたりは魔導具で動いている。
わずかに出る生ゴミは、肥料にするために専用の箱に別けるらしい。
時々、取っ手をぐるぐる回して中身をかき混ぜるだけで金になるらしい。
「野菜とか、管理はむずかしいですか?」
「土地柄、簡単なほうよ?」
「んん~・・・だったら、交換に使ったらいいのに。それか、売るとか」
「・・・は?」
本当にぽかんとしているユリカさんの顔は、可愛いと素直に思った。
「誰かに別ける分、作っておいたらいいのに」
「誰かに・・・別ける、分?私は追放されてるんですよ?無理です」
「じゃあ僕の分は?」
「一時的なものでしょうに」
「まぁ、それは・・・そうですけど。僕、けっこう食べるので」
「もしかして足りませんか?」
「うーん・・・なんだか新しい風を欲しているのかな、ここ、って思ったんです」
「新しい、風・・・?」
「説明はむずかしい」
「分からなくもないわ。あなたがここに来てから、森が楽しそう」
「森の意思が見えたりするんですか?」
「なにそれ?」
「ああ、いえ、いいです。いいです」
庭での採取は特に苦労もなく、楽しく終わった。
これでお礼ってわけにもいかないので、やっぱりまだ少しユリカさんと一緒。
なぜか思い出した『ナスのレンチン塩とごま油風味』がレシピに追加された。
乱切りにしたナスにごま油と塩を適量ふりかけ、レンジでチンしたらできるやつ。
電子レンジはないけれど、ユリカさんの魔法で叶った。
電子レンジの約3分の加熱を、魔法の杖が調べたらしかった。
魔法の杖って、独自の意思持ってるんだ?




