彼女の主食はニセグリ
「どうしてここでひとりで住んでいるんですか?」
共に食事をしてくれるようになったユリカさんに僕が質問する。
食べているのは『ニセグリ』と言う、木の実を蒸かしたもの。
食べる手を止めて、ユリカさんが苦笑した。
「容疑をかけられたから、です」
「まさか、追放されたんですか?」
「はい」
「じゃあ、僕が着てるこの服は?」
「交換要望所に、成人男性用の服を要望して、叶いました」
「誰と交換したんです?一体何と?」
「一番近くにいる部族が、街に出た時に叶えてくれます。代償は今回お金です」
「・・・なるほど、いくらしたんですか?」
「・・・んん~・・・覚えていません」
「ええっ?」
彼女は微笑した。
「どうしても採取の手伝いをしてもらいます」
「そう言えば、何の採取なんです?」
「魔法の森にある、良薬や薬酒を作る材料です」
「これを食べたらすぐに行きましょうよ」
彼女はさらに苦笑して表情をやわらげかぶりを振った。
「採取のためには、知識と知恵が必要です。そのためにまず本を読んで下さいね」
彼女は『ニセグリ』を食べ始め、僕は女性との食事を再意識してしてしまう。
どうやら本棚にある書籍類は、図鑑的なものや植物に関する文献などらしい。
絵を見ながらの説明のほうが分かりやすいはずですから、と彼女は続ける。
本棚に娯楽性のある物が見当たらないな、とは思っていた。
少女達のための実用書などもなかった。
なので魔女だと言うし、違和感があるけどやっぱり年上なのか、と思った。




