魔法書
時々現われる頭痛に悩まされている。
いつ起るのか、統計はまだ取れていない・・・
一人暮らしの美少女の家にご厄介・・・
屋内に視線を巡らせてみて、気を紛らわせるものはないかと思った。
本棚には書籍がいっぱいで、全部がユリカさんの物であるらしい。
その中に、『魔法書』と題名がある書籍を見つける。
本で読んだことがある、サイズが変わるあの本・・・!?
偶然の留守中だったので、許可を得ずに、ってことになる。
本棚から指で引き抜いて片手に持ち、魔法書を折りたたんでみる。
そして元の大きさに戻してみる。
「本当にあるんだ・・・!?」
魔法のかかったその書籍は、魔法使いについて記述がされている本。
そのページをなんとなくめくってみると、そこにユリカさんのことがあった。
どうやって登録するのかは知らないが、顔写真が載っている。
セピア色のその顔写真は、まるで指示されたかのように少し笑むと言う動きを見せた。
「すげぇや・・・」
自然と文字の記述も気になって読んでみる。
【通称:白魔女ユリカ】【性別:心身共に女性】【母国の王子を殺害した容疑】
「えっ・・・?」
ざっと見ていた内容が、驚いて身を退こうとした瞬間に奪われる。
驚いた顔のまま振り返ったその場所に、魔法書を持っているユリカさんがいた。
「す、すいませんっ・・・!!」
泣きそうな顔をしている彼女は、ふいと顔をそむけた。
「そちらの本棚にある書籍は自由に読んでもよろしくてよ、ただ、この本はダメです」
「は・・・はい」
涙を溜めたユリカさんが言った。
「それから、私は容疑をかけられただけで犯人ではありません」
「えっ・・・す、すいませんっ。全部は読んでないですっ」
「・・・いいです。この本は隠しておきます」
「どこに?」
ユリカさんが僕を二度見した。
「・・・お加減は?」
「あ、はい。だいぶよくなって来ました。採取ってやつの手伝いできるかも」
瞬いた彼女は意外そうな表情をしたあと、荷物を示した。
それは男物の洋服いくつかで、僕のものらしい。
着替え。
つまりまだ、この家に居ても良いようだ。




