最終回 真実
同僚が言っていたのは、国立図書館。
階段を登って大きな扉をくぐり、見渡す限りの本にめまいがする。
案内人に事情を通してあるらしく、すぐに目的のものは見つかった。
『魔法書』・・・持ち出し禁止。
ユリカさんのページを開いて、読んで見る。
王子殺害の容疑者であったが、
犯人は別に見つかり、
戦中の折り存命は確認していないが無罪の判決が申し渡され、
彼女の住んでいる土地をそのまま国は譲渡している。
※本人がそれを知らない。
「本人が、それを知らない!?」
――
――――・・・
僕は用意できるものを備え、再び樹海を駈け渡る。
早く、早く、早く。
早く、報せねば。
ユリカさんは無罪だと判断されている。
彼女から呪縛を解くんだ。
早く、早く、早く。
畑仕事をしていたユリカさんが遠目に見えて、俺は叫ぶ。
「ユリカさーん、魔法書を見てー、魔法書を見て下さいーっ」
ぱちくりとしているユリカさんがそこにいた。
すぐ側まで来て、おっかなびっくりされる。
「もう、戻らないんだと思っていました・・・」
「何を言ってるんですか。戻る、って言ったでしょうに」
「・・・お帰り、って言ってもいいのでしょうか?」
「はい。ただいまです」
ユリカさんが泣ながら、俺に抱きついた。
――
――――・・・
ユリカさんは魔法書を読んでいなかった。
一緒に確認をとって、無罪であることを国に確認して、真実は新聞になった。
一面を飾ったその話の盛り上がりがおさまったら、一緒に引っ越しをする予定だ。
とりあえず、俺の家に。
それから城からのお詫びとして、生活支援金が出るらしい。
それと・・・
周りの状況に納得したら、ユリカさんは「人間になりたい」と言ってくれた。
白魔女にも色んな体質がいるけど、ユリカさんの場合は子供ができない。
人間に戻ったら、もしかしたら不老が解ける代りに子供を成せる。
それは俺の家の決まりが関係していることだけど、結婚をするつもりだ。
結婚式には心配してくれた同僚たちも呼ぶ。
早くも薬酒造りの店を経営していいことになったユリカさんは楽しそうだ。
どうも隔離されていた土地も所有権をもらえる。
薬草の採取に戻ることはあるか確認を取った。
そんなのイヤよ、と、ユリカさんは素直に言った。
思い出が強すぎる、と。
でも必要なら採取をしに行くかもしれないわ、と添えた。
詫びのひとつとしての城での結婚式は、
トラウマに触れるかな、と思っていたけれど、
どうも楽しみにしてくれている。
俺がこの国の王子の隠し子であることが知れたのは、その後のこと。
継承権を与えられた俺に、妻のユリカは呆れてくれた。
産まれた娘も彼女に似ていて、とても可愛い。
いつも半端な恋しかしてなかったのを思い出したけど、
彼女への思いを一生分誓ってもいいと思った。
今では二児の父親ですが、父親なので護ります。
ご心配をおかけしてすいませんでした。
この記述が時を経て本として出版される件で、割愛もされています。
雑記を見た学者からのすすめで出版することになりました。
現代になると白魔女を軽蔑するひとがいるとかいないとか。
珍しい人種ではあるらしいです。
迫害の歴史も知りました。
今はもう妻のユリカは普通の人間です。
俺にはまだ戻っていない記憶もあるけれど、
愛しているひとがいる。
妻と子供たち。
今はそれでいいのです。
共に白髪になりたい、と妻に言っておきました。
この記述の題名を見たら、哲学書か何かだと思われそう。
なので、安全のためにファンタジー枠で出すことになっているし、
強調しようかと思います。
こめじるし、で。
これはユリカさんから習った「ホワイトウィッチ・クラフト」です。
あ。それから・・・
俺は自分の気持ちを現わすのが苦手で、それでちょっとした不良でした。
言動を怪しまれたらしいので、それは申し訳ない。
※この記述はファンタジーです。
書記〖リヴァイアタン・ジャスリン〗
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