小さいリンゴと蜂蜜酒の交換
ユリカさんの敷地には小さな実をつける野生のリンゴの木がある。
その収穫を手伝った。
軸をハサミで切って、傷んでいるのは捨てて、新鮮なものをカゴに入れる、
その作業の繰り返し。
帰宅してその小さなリンゴをコンポートすると言う。
「なんだかもったいないなぁ」
「ん?私が考えたものなのですが、可愛いコンポートですよ」
「可愛い?」
「添えてもメインでも可愛いんです」
小さなリンゴを半分に切って種をとりのぞき、
赤い皮が付いた状態で水と砂糖で煮る。
すると砂糖が浸透、そして皮の赤も実に移り・・・
甘くて美味しい透明感のあるピンクなものに変わる。
これはウリエラーに好評らしく、蜂蜜酒と交換してもらえるらしい。
「冷やしてロックで飲むんですか?」
「冷やす!?意外だわ。美味しそう」
意外なんだ?
「かき氷とかにかけたりしません?」
ユリカさんの瞳がキラキラしている。
そうか。
追放されてから氷とかとも特に縁がないんだ。
なんだったら、思いついたこともなさそうな顔。
ヤバい。
氷はどうやって採取するんだろう?
洞窟とかからか?
「さっそく交換に行きましょう?」
「え、あ、はい」
無事に交換が終わって、ユリカさんは氷をウリエラーから買った。
それをどうやってかき氷にするのか、て言うと・・・
魔法。
バリアの中にいれて、風魔法で砕いていく。
ものの数秒でできて、ふぅ、と息を吐くユリカさん・・・かっこいい!
ふたりでかき氷に蜂蜜酒をかけていただいた。
マジでうまい。
あとでユリカさんが、本当に君に出会えてよかった、って泣いていた。
なにもしないから、今日は一緒に眠りませんか?って自然と聞いてみた。
ユリカさんは自然と、何もしないなら、と応えてくれた。
特に大きくないベッドに、身を縮こめあって横になってみる。
ぎくしゃくしていたけれど、ユリカさんはこちらの顔を見て微笑んだ。
可愛い。
「うでまくら、しましょうか?」
「それがいいですね。少しの間・・・」
腕枕をされた俺に、彼女の吐息が近くでしてる。
安心した様子で無邪気に眠っている彼女の顔を見つめていた。
綺麗な香り。
美味しそうだと思ってしまった。
腕がしびれてきても、我慢していた。
結局自然と腕枕は解かれて、僕もいつの間にか眠っていたらしい。
窓からの光で朝を迎える。
ほほをつねられる。
「いひゃいっ・・・」
もう身支度をしたユリカさんが微笑した。
「おはようございます」
「お、おはようございます」
「本当になにもしないなんて」
「ええっ!?」
「ん?」
「別にいいですっ」
「ん?」
「いいですっ」
自分で何を言っているのか、定かではなかった。




