甘い薬草の採取
ユリカさんと採取のために外出。
切り立った崖の下に、岩場がある。
その岩の陰に、ある程度群生するらしい、『甘い薬草』。
その採取に来た。
「手を・・・つっこむんですか?」
「はい」
「何が取れるか分かりませんよっ・・・」
笑いながら採取を始めるユリカさんは、岩陰に腕を突っ込んで薬草を摘む。
根っこは残しておいた方が良いらしく、岩陰は案外と深い。
恐る恐る腕をつっこむと、薬草の葉に手の甲が触れて変な声が出る。
そんな僕を見て、ユリカさんはご機嫌だ。
「この赤い部分はとっても貴重なんですよ」
「どうしてですか?」
「他の部分も貴重なんですが、赤い部分が特に甘いんです」
「生で食べて大丈夫ですか?」
「あ、少しならいいですよ」
「じゃあ、一枚・・・・・甘い!びっくりしたぁ・・・甘い、なぁ」
『スーパースィートレッドバジル』って名前らしい。
どこかで聞いたことがあるような、って言うとユリカさんが言った。
「シュアザローナ」
「・・・あっ!思い出した!伝説とか架空とか希少とかの植物!」
「はい。これが、それ、です」
「ほう!なんだか感動」
赤いバジルみたいなだいぶ甘いやつだからそのままの名前らしい。
これを薬酒に混ぜるんだそうだ。
近隣の部族なんかに喜ばれるとユリカさんは言った。
それで生計をたてているらしい。
その日そのシュアザローナを混ぜたパンを焼いてもらった。
焼きたてをいただく。
かぶりついて、自然と僕は涙をこぼした。
その様子を見て、ユリカさんは慌てた。
「やっぱり成人男性には食事量、足りてないんですねっ?」
かぶりを振ったけれど、バレた。
ユリカさんが僕に抱きついて、「ごめんなさい」と泣きそう。
なんてことなんだ。
ユリカさんって・・・可愛い。




