釣り
偶然サケは手に入ったけど、基本的に魚は貴重だし、領地内の湖で釣るらしい。
網は禁止されていると聞いた。
僕は以前に、釣りってしたことあるんだろうか?
そこらへんの木の枝にテグスを縛って、先に円針にミミズを付けて水中へ。
この湖はどこかの海につながっているらしく、時々『タコ』が獲れる。
そのために『蛸壺』って言うものがあって、その様子を見てくると言われた。
どういうことなのか分からないけど、服を脱いでいるのが遠目に見える。
そのまま湖に飛び込み、潜水。
・・・大丈夫なんだろうか?
一緒に泳いでみたいけど、自分が泳げるか知らない。
一度息継ぎのために水中に現われたユリカさんは、「いますよ」と嬉しそう。
『タコ』とか、食べていいんだ?
なんだかイメージでダメなんだと思ったのに。
そんなことを思っていると、片手にタコが巻き付いているユリカさんが来た。
「見事ですね」
「タコはお好きですか?」
「湯がいたものをレモンとパプリカパウダーで?」
「それもいいなぁ。マリネとかは?」
「食べたことないけど、美味しいなら食べてみたい」
「プチトマトと相性がいいんです」
「『プチトマトとタコのマリネ』?」
「あ、ビネガーは平気ですか?こちらはレモンを使うのですが」
「どちらも大丈夫。なぜかそれは言える」
「竿、つんつんしてますよ」
「え?」
竿を持ち上げてみると、釣れたのは『オカムー』。
黄色を基調とした、エビみたいな足を持つ珍しい魚だ。
ここでは食べてもいいらしい。
「ヒレと尾は薬になるので嬉しいのですけど、見た目が・・・できれば、おひとりで」
なんて幸運なんだろう?
蒸して食べるのが最適なオカムーが、大きめの皿に乗ってやって来る。
僕はオカムーを、足の方からかぶりついた。
魚の部分の少しの骨と皮を残して、完食。
オカムーが怖いからと言って、ユリカさんはタコの調理と保存をしている。
ちなみに翌日に出た『タコとプチトマトのレモンマリネ』も美味しかった。
ローズマリーやレモンも、敷地内で採れるらしい。




