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短編シリーズ【恋愛/ラブコメ/青春】

双子の妹は何でも欲しがる 「彼と別れて、私にくれないかな?」

作者: 紅狐

 双子の妹、紗羅さらはいつも私のものをねだってくる。


「おねーちゃん、それいいなぁー」


 今日は私がお母さんに買ってもらったぬいぐるみ。


「紗羅も同じもの、持っているでしょ?」


 一緒にデパートで買ってもらった。


「違うの。同じじゃないの。ほら、ここ」


 よく見ると少しだけ色が変わっているところがあった。


「ほんの少しの違いじゃない」

「それでも、そっちがいいのー」


 こうなるともう手が付けられない。


結羅ゆら。お姉ちゃんなんだから、交換してあげたら?」


 お母さんもそんなことを言う。

これは、私が買ってもらったのに……。


「わーい、ありがとう! お姉ちゃん大好き」


 無邪気に抱き着いてくる紗羅。

私は笑顔で交換してあげた。でも、本当は嫌だった。


「いつもありがとうね、お姉ちゃん」


 好きで先に生まれたんじゃない。

私だってわがまま言いたい。

私だって、妹のようにみんなに可愛がられたい。


 私だって、わたしだって、ワタシだって……。


 ※ ※ ※


「お姉ちゃん! 私のリボン知らない!」


 今朝も朝から大忙し。


「昨日の夜に準備していなかったの?」

「だってー! あー、遅刻する!」

「だったらほかのリボンでもいいじゃない」

「いやっ! 今日はあのリボンの気分なの!」


 本当に世話が焼ける妹。


「ほら、ここにあったわよ」

「あった! よかったー! さすがお姉っ、今日も可愛いねっ」


 私に冗談を言いながら先に玄関から出ていく妹。

見た目は同じなのに、どうしてこんなに性格が違うのかしら。


 勉強は私の方が得意で妹は運動。

私は物静かで妹は活発。

私は人見知りするけど、妹はすぐに誰とでも仲良くなれる。


 どうして、妹と同じクラスなの?

どうして妹と比べられないといけないの?

どうして?


 私はいつも悩む。

活発で誰とでも話ができる妹。

当然クラスの中心的存在。

それに、聞いた話だと男子からも結構人気があるらしい。


 それに比べ、私はいつも一人で本を読んでいる。

騒ぐのがあまり好きではない。

でも、妹のようにみんなの輪の中に少しは入りたいと思ってもいる。


 妹の輪の中にいる同じクラスの佐藤君。

たまに委員会の事で話をするけど、いつも私の目を見て話してくれる。

少しだけ抱く恋心。そんな私の想いは誰にも話さない。

もちろん妹にも。


  ※ ※ ※


「朝倉さん、良かったら僕とお付き合いしてもらえないかな?」


 思いを寄せていた彼に告白された。

私は無言でうなづいた。


 初めて彼ができた。

どうしたらいいんだろう、どうすればいいんだろう。

誰かに相談したい。誰に相談したら……。


 彼には、付き合っていることを二人だけの秘密にしてほしいと言われた。

密かに彼は女子から人気がある。

かっこいいし、成績もいい。それに次期生徒会長ともいわれている。


 彼と付き合いたい女子はたくさんいるのだ。

そんな彼は、私を選んでくれた。

大勢いる女子の中から、たった一人。私だけを選んでくれた。

そう、妹ではなく、私を選んでくれたんだ。


 でも、これからどうしたらいいの?

どうしたら……。


 ※ ※ ※


「さ、紗羅?」


 私のベッドの上で転がりながらスマホをいじっている妹。

なんで自分の部屋ではなく、私のベッドの上なのだろうか。


「どうしたの? 何か悩み事?」


 さすがは双子。話さなくてもわかってくれる。


「あ、あのね。私、彼氏ができたの」


 妹はすごく喜んでくれた。


「そ、それでね誰とは言えないんだけど、これからどうしたらいいかなって……」


 妹は自分の事のように笑顔で話し始める。

下校や登校、デートの方法やメッセージの交換の仕方。

それに、ファーストキスのこと……。


「でもね、簡単に許しちゃだめだよ! お姉は無害そうだし、押しに弱いからね。で、その人の事好きなの?」

「多分、好き、かな?」


 きっと私の顔は赤くなっているだろう。


「そっか、幸せになれるといいね」


 ※ ※ ※


 それから、彼とはつつなく交際をこっそりと続けた。

クラスのみんなや家族にわからないようにこっそりと。


 そして、ある日──


「あのさ、お姉。付き合っているのって同じクラスの佐藤君?」


 ばれた。妹にばれてしまった。


「そ、そうだよ」

「そっか……」


 いつもと違う表情の妹。

でも、私は知っている。この表情は──


 紗羅は笑顔で、ゆっくりと口を開く。


「あのさ、お姉。佐藤君の事私も好きだったんだよね。彼と別れて、私にくれないかな?」


 心臓が痛くなる。

まさか、こんなことを言われるなんて夢にも思っていなかった。

あんなに笑顔で喜んでくれたのに。

二人で幸せにねとか、言ってくれたのに。


「どうして? どうしてそんなこと言うの!」

「そうしてって……。私が欲しいから?」

「そんなこと、いいわけないでしょ!」

「お姉にはもっといい人がいるよ! だから、佐藤君は私がもらう! 好きだったの!」

「いやっ! これ以上私から奪わないで! 私だけの、私だけの佐藤君なのっ!」


 その日以降、私は紗羅と口をきいていない。

会話もなければ目も合わせない。もう、あいつとは絶交だ。


 ※ ※ ※


「そうなんだー、へー」

「そうなのーそうなのー。ねぇ、あのさ。佐藤君。今度、私と一緒に映画でも行かない?」

「映画?」

「うんっ! 私、佐藤君のこと気になるんだよね。もっと、あなたの事知りたいなって」


 クラスのみんなが聞こえる中、私の目の前で会話する二人。


 やめて、やめて、やめて。

私と佐藤君は付き合っているの。

誰にも言えないけど、本気で付き合っているの!


 お願い、やめて。私から奪わないでっ!


「んー、いいよ。今度映画行こうか!」

「やったぁ! へへっ、楽しみだね」


 笑顔でこっちを見てくる紗羅。

勝ち誇ったような、その表情。

どうして? 佐藤君もなんで映画に行く約束したの?


 私と付き合っているんだよね?

私たち、恋人同士なんだよね?

妹と私は同じ顔だから? 同じ血が流れているから?

私と同じだから?


 ※ ※ ※


「じゃ、いってきまーす!」


 土曜日、紗羅は佐藤君と映画に出掛けた。

私ではなく、妹と。いったい私は何のために……。


 心が空っぽになった感じがする。

私にはない、何か。その全部をきっと妹が持っているんだ。

私はいらない? 妹が、私の代わりに全部……。


 だったら、妹がいなくなれば私が必要になる?

妹さえ、いなければ……。


 私はふらふらと考えもまとまらないまま、二人が行った映画館を目指す。

そして、日も落ち真っ暗な夜、私の心と同じ真っ黒な闇があたりに広がる。


 物陰から二人を見つめる。

映画の後、二人は公園に行った。

そして、二人で、ずっと何かを話している。

何を話しているのだろうか……。


 私はこっそりと二人の声が聞こえるくらいまで近寄る。


「今日の映画面白かったね」

「うん、そうだね。この後どうする?」

「この後、どうしようかな……。家族には遅くなるって伝えているけど……」


 そんなことは聞いていない。

どうして、映画が終わったら帰るんじゃないの?


「もう少し、二人っきりで話せないかな?」

「二人っきり?」

「うん……」


 佐藤君の手が紗羅の肩に触れる。

やめて! お願い、やめてよっ!

どうして紗羅は笑顔なの? どうして!


「佐藤君……」

「紗羅……」


 少しづつ二人の距離が近くなっていく。

や、め、て……。


「佐藤君、目閉じてよ。恥ずかしいから」


 佐藤君が目を閉じた。

もぅ、見ていられない……。


──スパァァァァァァァン


 ものすごい音が公園に響き渡る。

な、なにが起きたの?


「い、痛いじゃないか!」


 佐藤君の悲鳴だ。


「痛い? それがどうした! お姉の心の痛みに比べたら安いもんだろ!」


 ど、どういうこと?

どうして、紗羅が佐藤君の頬を殴ったの?


「な、なんのことだ?」

「知らないふり? まぁーそうだよね。あんた、いままで何人の女子と付き合ったの? 二人の秘密? はっ、ジョーダン!」

「秘密、いったい何のことだがぁぁぁぁぁ」


 紗羅のこぶしが、佐藤君のみぞおちにめり込んでいる。

紗羅、あなた一体……。


「私は知っているんだからね! あんた、こっそり付き合って、やるだけやって別れるんでしょ? その噂、かなり広まってるよ!」

「そ、そんなことはない!」

「は? 私のお姉ちゃんに手を出そうとしたよねっ!」

「そ、そんな、ことは……。ない! ぐほぉっ」


 紗羅のぐーぱんが、佐藤君の鼻に……。

い、痛そう……。


「黙ってみていたけど、大好きなお姉に手を出したのが間違い! 私が姉さんを絶対に守る! あんたなんかには、絶対に渡さない! 私がきらわれても、姉さんだけは絶対に幸せにしてみせるんだから!」


 息を切らしながら紗羅は大声で話している。

それを聞いてる佐藤君は地面に転がり、虫の息だ。


「あんたから姉さんに別れ話をしなくてもいい。私があんたを奪ったことにするから。話し合わせてね。腐ったあんたでも、好きになった姉さんを悲しませたくないの。私が、あんたを姉さんから奪うんだから……」


 紗羅はそう言い切ると、肩を落とし頬に雫を流しながら公園の外に向かって歩いていく。

暗くなった街。闇に包まれていた私の心は明るくなっていた。


 歩いていく紗羅を追いかけ、後ろから抱き着く。


「紗羅っ! 帰りが遅いから迎えに来たよ」


 慌てて頬をぬぐう紗羅。


「お、お姉っ。ど、どうしたの? そんなに遅かったかな?」

「うん。遅かった! 私が紗羅の気持ちに気が付くまで遅かったよ!」

「どういうこと?」

「秘密! さ、一緒に帰ろう!」


 私は紗羅の手を取り、一緒に帰る。

きっと、私はいままで紗羅に守ってもらっていた気がする。

私の気が付かないところで、いままでずっと……。


「これからは、自分の事は自分で! 紗羅の事も守って見せるからっ」


 ぽかんとした紗羅の表情。

私の言いたいことは伝わったのかな?


「えっと、お姉──」

「紗羅。大好きだよっ」


 腕を絡ませ、私を瓜二つの顔をした紗羅に微笑みを向ける。

私と同じ顔をした紗羅は、私と同じように微笑みを返してくれた。


「二人で幸せになろうね!」


 いつか、お互いに彼氏ができて、結婚して、子供が生まれて……。

いつか、その子供を二人で抱きしめて、お互いに幸せを……。


お読みいただきありがとうございました。



もし、よろしかったら下の☆を★にお願いいたします。

そうすると、作者がとっても喜びます。


よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 自分双子だから言うわ なんで同じクラス???
[良い点] 多分そーゆー意味じゃない。…あー百合って素晴らしいな
[気になる点] 双子の姉妹に対して片方にお姉ちゃんなんだからは母親頭おかしい
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