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魔王と聖女の転生日記 26



「僕は冒険者になりたいんです。でも、父様が許してくれなくて」



サルトはそう話し出した。顔を地面に向け、自信がないようにぽつりぽつりと話し始める。


彼の話をまとめるとこうだった。サルトは幼い頃から強い冒険者たちに憧れていた。しかし、サルトの家には家業があるらしく、自分が跡取りになることはもう決まっている。


それでも諦めきれなくて、昨日父親に自分が冒険者になりたいのだと告白したそうだ。そして、父親は家業を継がないと言ったサルトを叱責し、非力なお前には無理だと言った。夢を否定されたサルトは家出した。


その後何がどうしてそうなったか知らないが、森に住む獣を退治出来たら父親も自分を認めてくれるのではと思い立ち、この森に入り、そして崖に落ちたと。



(つまらんな)



最初は耳を傾けていたが、俺は真剣に聞くのが馬鹿馬鹿しくなった。我が儘な子供の愚痴など聞いている時間は俺にはない。時間の無駄だ。聞かなければ良かった。


途中からは、サルトの話を聞く代わりに、次はどんな魔法道具を作るかを俺は考えていた。



「…レオさん、聞いてます?」


「聞いていない」



俺がそう答えると、サルトは「貴方が言えと言ったんですよ?!」と叫ぶ。



「思っていたよりもつまらない話だった。お前が嘘をついていないことも仕草で分かったから、もういいぞ。というか、口を閉じろ」


「理不尽!!」



アリスはサルトを肩を叩き、慰めるように言った。



「サルト、私は聞いてたから、大丈夫」


「アリスさんは、良い子ですねぇ。お兄さんとは違って」



そう言いながら、サルトはよしよしとアリスの頭を撫でる。アリスも満更もないようだ。サルトの話は飽きたので、俺はさっさと話題を変えることにした。



「それで、お前はどうするのだ?俺としてはさっさとお前と別れて、この森に来た目的を果たしたいのだが」


「目的?そう言えば、二人は何故こんな危ない森に?」


「採集しに来た」



サルトの問いに、俺の代わりにアリスが答えた。



(アリス、止めろ。詳しいことを言うな。コイツが杖に興味を持ったらお荷物が一人から二人になる!!)



これ以上の厄介事は御免だ。俺は必死に彼女にその口を閉じろと言う目を向けるが、アリスは俺の視線には気付かず平然としている。


「採集?」とサルトは首を傾げた。



「杖を作る材料の採集。レオが必要だって」



でしょ?とこっちを見るアリス。


お前、家に帰ったら死ぬほど聖水を作らせるからな。


俺は溜め息をついた。



「俺にはな。お前には必要ないはずだと何度言えば分かる。今からでも家に帰ったらどうだ?今ならば森の外までは送ってやるぞ」


「嫌。ここまで来たんだから、私も杖欲しい」



頑固者め。



「杖?どんな物なのかは良くわかりませんが、もしかして探している材料ってこういうのだったりします?」



俺とアリスの会話を聞いていたサルトは、思い出したように自分の肩からかけていたバッグを漁り始める。そして、「あった」と、何かを取り出した。



「実は崖に落ちる前に、偶然見つけたんです。父様の店でも見たことがない、珍しい石だったので取っといたんですけど」



サルトが取り出したのは、草緑色の鉱物だった。























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