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魔王と聖女の転生日記 20


「お願い、レオ」


「駄目だ」


「レオ」


「駄目だ」


「…母様のハンバーグ」


「何?」


共に連れていって欲しいと頼むアリスと、それを拒否する俺の言葉が続く。しかし、そのやり取りの何回目かで、突然彼女は意味の分からないことを言い出した。



(ハンバーグ?)



それは今世で分かった俺の好物だ。それがどうしたのか。


アリスが俺を見上げて、言った。



「連れていってくれないなら、母様にもうハンバーグを作らないようにお願いする」


「…笑えない冗談だな?」


「冗談じゃない。本気」



アリスの目は、真剣だった。彼女は母様に激愛されているのは、初めに記憶を取り戻した時点で分かっている。彼女が母様にハンバーグを作らないで欲しいのだと泣きつけば、母様はもう一生あの素晴らしい料理を作らないかもしれない。


俺は、ぐっと黙った。何と言う脅しだ。母様のハンバーグがもう食えないだと?



「脅しか。聖女がすることではないな」


「レオはハンバーグ好き。母様のハンバーグは、多分、世界に存在する沢山のハンバーグのなかでも、一番美味しい。だから、今レオが断れば、貴方はもう世界一のハンバーグは食べれない」



母様の料理が世界一美味しいだろうというのは同意するが、それでも、それは脅しの材料にはならないはずだ。



「…俺が母様の背中に刃を突きつけて、作るように脅せば良いだけのことだ」



あとは父様かアリスを人質にしてもーーーーーー。



「その時は、ハンバーグをレオが食べる前に、一緒に死んであげる」



卑怯な真似をすれば、即座にお前を道ずれに自爆魔法を使うと。アリスはそう言った。死を恐ろしいと思わない俺と同じように、彼女もまた人間を守るためならば己の命を捨てることを厭わないのだろう。


そうなれば、もう俺はハンバーグを食えない。永遠に。


それは困るのでしょう?と、彼女の目は言っている。



(頭が回る厄介な聖女もいたものだ)



素晴らしい、ここまで俺に効果的な脅しをした者は前の人生を含めて初めてだ。俺は、溜め息をついた。



「仕方がない。母様のハンバーグは偉大だからな」


「…!!ありがとう」



アリスの目が輝いて、俺に抱きついてきた。俺はアリスを引き剥がし、さっさと出掛ける準備に取りかかることにした。


身代わりの人形はもう一人必要なのか。森で何が起こるか分からないから、魔力は温存しておきたかったのだが、二人とも無断で出ていく訳にはいかない。


床に核となる魔法石を二つ置き、呪文を唱える。



ーーーーー傀儡かいらいよ。我の姿、我の声を貸してやろう。この石を核とし、姿を現せ。



魔法石が紫色に光輝き、その光は人形に変わっていく。


暫くして光は収まり、そこには二人の子供が立っていた。俺とアリスにそっくりの容姿をした子供の人形だ。人形はゆっくりと瞼を開ける。



「我が主、ご命令を」



俺の姿をした人形が床に片膝をついて、頭を垂れた。
























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