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魔王と聖女の転生日記 19



「そうだ。アリス、お前には言っておこう」



瓶を懐に入れたところで、明日の予定を思い出し、俺はアリスに向かって言う。



「明日の昼、俺は少し出かける。身代わりの人形を置いていくから、問題ないとは思うが、もしもの時は父様たちの相手を頼めるか?」


「出かける、目的による」


「杖の材料になるものを探してくるんだ。手で魔法を使うことも可能だが、やはりこの身体だと杖がある方が効率がいい。そこまで時間がかからないと思うが」



火力石でも分かったことだ。人間の身体でそのまま、媒体もなしに魔法を使うのは効率が悪い。必要な魔力が大きい割に、使える魔法の威力が小さいのだ。


それを補うのが杖。前世で見た人間たちも、剣や杖を使って魔法を使っていた。ならば俺も彼らにならって杖を用意した方がいいだろうと考えてのことだった。



「杖?」



アリスは不思議そうな顔をして、尋ねる返してくる。



「何故そこで首を傾げる?」


「杖って何?」


「…杖が何か?」



嘘だろう。まさか、杖を知らないとは言わないだろうな。



「アリス、お前が俺を殺す時剣を持っていただろう。あれが何の代わりか理解していたか?」


「ううん。剣は拾った。魔王の城で物置きにあったから。持っていたのはなんとなく」


「自爆魔法を使う際に、剣を振り上げたのは?」


「なんとなく」


「なんとなく…」



予想外の返答に呆気に取られる。聖女はなんとなくで杖の正しい使い方を直感したらしい。なんとなくで。…ある意味、俺よりも才能があるのかもしれない。流石の俺も、なんとなくで杖を振り回したりしないからな。


それは置いておいて。世間に疎いとは思っていたけれど、これ程とは予想していなかった。


ただの赤の他人ならば放っておくが、アリスは俺の妹だ。彼女が無知のままでは、兄である俺も同じ目で見られる可能性があり、そんな勘違いはできれば避けたいものだ。


そこで俺は彼女に説明することにした。



「杖とは、魔法を使う時に利用する道具のことだ。魔族の場合は身体が元々魔法を使うことに向いているため、杖があるかどうかで大した違いは出ない。


しかし、人間は違う。杖の有無で大きく結果が変わってくるのだ。


アリスが城に来た時、剣がその杖の役割を果たしたが、本来、杖はそれに適した素材で作らなければならない。素材を選んで作った杖と、そこらの木の枝を代わりにしたものでは、魔法の威力もまた変わる。分かったか?」


「杖、大事。分かった」



随分簡潔に纏められたが、まぁ間違ってはいない。よし、と俺は頷くと、アリスも納得したようなので「では、明日は頼んだぞ」と言って、自室へと戻った。













「だった、はずなのだが…」


「杖、必要。私も」



次の日アリスが何故か俺の部屋を訪ねてきた。何の用なのかと尋ねると、自分も杖が欲しいと言い出したのだ。



「レオが、言った。人間、杖が必要だって」


「…無くとも別に魔法は使える。お前だって前の人生で杖のことを知らずとも生きていけたのだろう?」


「そう。でも今世は魔法使いたい。レオに教えて貰った魔法みたいな、素敵な魔法、沢山」



…アリスに魔法を教えたのは失敗だったか。


それに、杖の必要性をこと細かく説いてしまったせいで、余計に彼女に興味を抱かせたらしい。



「俺がこれから行く場所は少しばかり危険が伴う。攻撃魔法が使えないお前がいては足手まといだ」


「でも、レオは昨日浄化魔法できないって言ってた。なら、レオにできなくて私にできること、あるかもしれない」



昨日の自分は、どれだけ口を滑らしたのだろうな。俺は自分を殴りたくなった。





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