魔王と聖女の転生日記 14
「これがアレク様の仰っていた…」
「そう。僕の息子の発明品だよ。レオ、アンドレに説明してやってくれるかい?」
「はい」
父様に頼まれ、俺は昨日両親にした説明をアンドレ殿の前で行う。俺がこの魔法道具を作ったということも半信半疑のようだった彼は、説明が進むごとに、目を輝かせていった。
最後は暖炉に実際に火をつけて見せて、俺の説明は終わった。
「これは驚きました。私でも簡単に使えるとは…。坊っちゃん、この商品是非とも私の店で売らせてください。私の商人としての技術や経験を全て生かしてこの発明品の素晴らしさを客にお伝え致します」
聞けば、アンドレ殿の店は町でも評判の良い店らしい。店主である彼が選んだものは外れがないと信頼を得ているようだ。そんな店に置いて貰えるとは運が良い。
「ありがとうございます。アンドレ殿が売ってくださるのならば安心ですね。販売価格はどれ程になりますか?」
「おや、坊っちゃんは商売の才能もおありのようですね。抜け目がないですなぁ。アレク様も見習いませんと。貴方様は作るだけ作って、後は私に放り投げておりますから、もし私が利益を横取りしようとすれば簡単に取られてしまいます」
「君の場合はしないじゃないか。君だから安心して任せているんだよ。僕だって他の商人に売るときはちゃんと交渉している」
父様とアンドレ殿は親しい間柄のようだなと二人の会話を聞きながら思いつつ、俺は魔法石を見ながらどれくらいの値段がいいかと考えていた。
俺の希望としては、平民でも手が届くほどの値段がいい。しかし、売るのはアンドレ殿だ。彼がどのように俺の商品を扱うのから知りたい。
「そうですね。この石一つで銅貨八枚でどうでしょう?」
銅貨八枚。聞けば火打ち石が銅貨十枚分である銀貨一枚であるそうなので、それよりも石自体は安いということになる。魔法石はそこら辺に転がっているものではないが、宝石としては珍しいものではない。
その魔法石を更に砕いて小さくしたものが俺が使う大きさなので、利益は出せるはずだ。
「魔法石自体は安く売るとのことですので、坊っちゃんの利益はどうしても少なくなってしまいますが」
「はい。それで構いません。魔力分で稼ぎますので」
魔法石はただの道具。エネルギーを俺だけが提供することができる限り、長期的に収入を得ることができる。
「私はあまり魔力に詳しくないのですが、坊っちゃんが全て用意して大丈夫なのでしょうか?身体に悪影響は…」
アンドレ殿は不意に、顔を曇らせ心配げな表情になった。