魔王と聖女の転生日記 12
魔法石を持って俺たちは父様のいる談話室へと訪れた。
「魔法を作ったって?」
「はい。父様」
本を呼んでいた父様に魔法を作ったから見てくれないかと頼むと、父様は快く頷いてくれた。
「僕の影響かな?レオは畑にとても興味を持っていたから、自分でも作ってみたくなったのかい?じゃあ、是非とも僕に見せてくれ」
ただの子供の遊びと思われているな、これは…。
父様の言葉からして俺がまさか本当に新しい魔法を作ったとは思っていないようだ。何かのガラクタを作ったとしか考えていないのだろう。
説明よりもまずは見せた方が早いか。
「あら、なぁに?どうかしたの?」
「母様、レオが魔法作ったの。見て」
「まぁ、レオが。こんな小さい時から魔法を作りたがるなんてやっぱり父様の子ね」
「いや、僕は五歳の時は周りのことへの興味が一段とあるだけ生意気な子供だったよ。いつも何故?と尋ねて大人を困らせるだけのね。それなのに、レオは一度僕の魔法を見ただけで魔法を作ろうとしたんだ。僕以上の逸材だ!」
父様と話していると、母様も談話室に入ってきた。夕食の準備が一段落したのだろう。丁度良い。料理をする母様の意見も聞きたい。
「では簡単に説明します」
俺はポケットから部屋でアリスに見せた魔法石を取り出し、何か燃やしても平気なものはないかと視線をめぐらす。そして、火が消えている暖炉に目を止めた。これならば、大丈夫だろう。
「母様、この暖炉を使ってもいいですか?」
念のため、母様に尋ねる。
「ええ。好きに使っていいわよ。でもその手に持っている石に何か関係あるの?」
母様は不思議そうな顔をした。
「はい。一言で言うと、この石で火をつけることができます。薪に石を近づけて、火をつけるように念じれば…」
自室でやった時と同じように石に火をつけるように念じる。魔法石がぼんやりと光り、石から小さな火が現れた。石から突如現れた火を父様たちに見せ、そして暖炉にある薪に火を移す。すぐに薪に燃え移った火はパチパチと薪を燃やし始めた。
一連のでき事を見ていた母様は、驚いたような声を上げる。
「まぁ、火がついたわ!!」
「このようにすぐに火をつけることができます。この石は父様から頂いた魔法石で、中には火をつける魔法式と俺の魔力を入れています。その為、魔力を持たない者や魔法を使ったことがない者でも簡単に火を起こせる。これで家事の面倒はいくらか減るでしょう」
魔法石を見せながら、構造とメリットを説明する。この石の強みはやはり魔力を持たない者でも魔法が使えることだろう。これならば、貴族だけでなく平民も誰でも使えるのだ。
家事の面倒が減るという言葉に母様は目を輝かせる。「レオ。その石を少し見せてくれるかしら?」と言われたので渡せば、「火打ち石よりもずっと軽いわ。小さいし、ポケットに入れて持ち運べるわね。それに綺麗だわ」と興味を持っているようだった。
なるほど。軽さや大きさも考えなければならないのか。母様が言った言葉もこれからの開発の参考にしよう。
「私も欲しいわ。やっぱりいつも火を起こすのが面倒だと感じるもの」
「材料さえあれば簡単に作れるものですから、明日にでも渡しますよ」
「嬉しいわ!ありがとう、レオ」
母様はどうやら気に入ったらしい。実用的で使い方も簡単で良いと言いながら、アリスと共にわざわざ暖炉の火を消して、自分たちでもできるか試している。
父様の方は…。俺は途中から黙っている父様の方に目を向けた。