白い部屋
「何故いつも怯えているんだい。」
不意に彼女は問われた。
「怯えているんじゃない、ただ不安なだけよ。」
あまりに唐突に問われたため、彼女は少し困惑していた。そして、いつも不安に思っているわけではないと。
ただ、自分に自信がなくて不安に感じている時があるだけなのだ。
彼女は元々内気な性格だったわけではない。
ごく普通のどちらかと言えぼ、明るい女の子だった。
だが、取り繕って気を使っているうちに、周りだけでなく自分にさえも嘘をついてしまう彼女がいた。
(何をしているんだろう。無理して笑う必要もないのに。)
(あれ、これで良かったのかな。)
次第にこの様に考えるようになったのだ。
ここには、彼女だけしか居ないはず。
何故ならここは、彼女の心の中だから。
誰にも邪魔されず、1人で居られる場所だから。それなのに、なぜ問われたのか。
彼女は不思議で仕方なかった。
「自分しか居ないのに、むしろ、自分しか入れないのに何故。って顔をしているね」
彼は話しかけてきた。
「少し考えたら分かるだろう。」
「もう1人の私。」
「まぁ、そんな所かな。最もここは、君の心の中だ。だから君の心であり、感情だ。」
私の心であり、感情か。
1人でここに蹲っていたかったのに、と思いながら再び彼を見た。
彼は少し申し訳なさそうに、また話す。
「1人で居たいと思いながら、本当は誰かにいて欲しかったんじゃないか。そして、溜まっていたものを吐き出したかったんじゃかないのか。」
(なんだ、今までの私の言動に文句を言いに来たのか。間違ってはない。
むしろ、彼の言う通りだ。
だけど、他人に言われる筋合いはない。)
と少し不機嫌になった。
「だったら、なんだって言うのよ。あなたに言われる筋合いはないわ。それに、1人の方が楽よ。」
「いつもそうやって強がって、我慢して、傷ついて。僕はいつも見てきた。
でも、もう心が限界だと言っている。」
「・・・・・。」
彼女は言い返せないでいた。それは、彼女自身分かっていた。心も身体もボロボロだった。本当は誰かに助けて欲しかった。
しかし、こんな事を人に話しても、と考えては話せずにいた。
感情を押し殺して、ずっと閉まってきたのだった。
「そろそろ、全部吐き出したらどうだ。
泣くことを我慢してたらしんどいだけだぞ。」
(分かっている、分かっているけど。。)
「大丈夫、僕が受け止めてあげるから。」
彼女は堰を切ったように泣いた。
やっと泣けたのだ、周りの目を気にしないで自分の心のままに。