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7's   作者: 小真希
交わりは終わりへ
2/13

牢獄

『お、目が覚めたか?』


 声をかけてきたのは悪友、青野あおの ゆう


『ここはどこだ?』


 硬く冷たい床、見覚えのない天井が視界に映る。


『おいおい、私は誰?とか言わねーだろうな?俺がわかるか?』


『言わねーよ!ダディ』


『冗談が言えるくらいなら大丈夫か』


 身体を起こし、辺りを見渡して確認する。

 ベッドが二つ。正面には鉄格子。換気用の小さな小窓から日の光が僅かに差し込む小さな空間。

 実際に見たことも入った事もないが、これが牢というやつなのだろう。


『ま、見ての通り、牢屋だろうな…』


『だよな。現状確認のつもりだったが…』


 互いに顔を見合わせてため息をつく。


『それで、俺たち何かしたか?目が覚めたらここにいたんだが…』


『確か図書室で美術の資料探してたよね?……って、なんでこんな落ち着いてるんだよ!』


『お互い様。焦っても仕方ないさ。それに、一人だったら今頃パニックになっていただろうな』


 確かに優の言うとおりだ。一人だったら考えることすら放棄していたかもしれない。


『優、図書室で見つけた本覚えてる?』


『ああ、文字が光って浮かび上がったあたりまではな』


『そのあと気づいたらここで寝ていた、と。…荒唐無稽だな。それで、どうすればいいと思う?』


『考えるしかないだろう』


 状況を整理し、これからどうするかを話し合う。

 とにかくここから出なければ、という結論に至るが、所持品は一切ない。

 ふと、遠くで何かが軋む音が聞こえ、金属のような足音が近づいてくる。

 次第に近づいてきた足音は鉄格子の前で止まった。


『…ここか』


 少々苛立ったような声。

 鉄格子の向こう側でこちらを覗く者はファンタジー系のゲームを彷彿とさせる鎧を纏った大男。

 俺達を見て軽く舌打ちする。


『…男かよ』

 

 更に苛立ちを乗せたその声はまるでその場に捨て置くかのように吐かれた言葉。

 仮に俺達が女だったらどんなことをされていたのか。舌打ちからなんとなく想像がつく。

 いろいろ思うところがあるものの、これはチャンスに変わりはない。

 立ち去ろうとする大男を慌てて呼ぶものの、無視してそのまま立ち去ってしまった。

 互いにかける言葉もなく、しばしの沈黙が訪れた。



 


 しばらくすると、再び軋むような音が聞こえ、カツン、カツンと先ほどとは違う足音が聞こえてきた。

 優と俺は目くばせして無言で頷き合う。

 足音からして先ほどの大男ではない可能性が高い。

 俺達が無実だと説くには相手の注意をひかねばならない。

 俺達二人は鉄格子を握りしめ、足音へと叫ぶ。


『俺達は無実です!ここから出してください!』


『とにかく話だけでも聞いてくれ!』


 先ほどの人物と違い、やや細身で黒いスーツのような服装の目つきの悪い三白眼の男が牢の前で立ち止まった。

 直観的にこの男は危険だと感じ、勝手に足が後ずさる。

 男は両腕を大きく広げ、笑みを浮かべるが、目つきの悪さと相まって、まるで悪魔の嘲笑だ。


『お前達は此度の儀式に選ばれた幸運なる者たちだ!歓迎しよう供物共!!!』


 すると男の言葉に呼応するように背後から二つの影がゆっくりと現れる。


『ッヒィッ!』


 優の口から声にならない悲鳴が漏れた。

 ソレ等は禍々しく、気持ち悪い。嫌悪感や恐怖を感じ、思わず身を竦める。

 ゆっくりと目玉らしきものがこちらに向けられる。

 冷や汗が滝のように流れ、首や背中を伝っていく。同時に頭の中を黒く塗りつぶされるようなイメージが湧きあがる。


『ん?…ふむ。さぁ、我が眷属達よ!拘束せよ!』


 男の命令に動きだしたソレ等は、スライムのようなブヨブヨした外見で手足はなく、体の中央部には縦に大きく裂けた口のようなものがあり、口の周りから何本もの触手のようなものが生えている。

 鉄格子をすり抜けてジリジリと近づいてくるそれに、腰が抜けて動けなくなる。


『たす・・・けて・・・』


 絞り出すかのような優の必死の懇願。

 恐怖に支配された身体は思い通りに動かない。

 必死に逃げようと床を這いつくばり、腕の力だけで 距離をとるものの、狭い牢の中、逃げ場はない。

 伸びた触手が身体を包み込むように伸びる。

 肌にまとわりく感触が気持ち悪い。この状況で意識を保っていられる自分を褒めてやりたいが、そんな余裕はない。できることなら気を失ってしまいたいのが本音だ。

 触手に拘束され、俺達は牢の外へと連れ出された。

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