はじまり
大学への進学を辞めて、親族が経営する地元の運送会社へと就職が決まり、人生最後の夏休みを存分に謳歌するべく、補習回避の為に俺、環ウルスラは真面目に授業を受けていた。
容姿は日本人の母親似。少しつり目で、まつ毛の長いパッチリとした二重、赤茶色で落ち着きのある自然な雰囲気の髪。
趣味はゲームで、ジャンル問わずこよなく愛し、アニメチェックも欠かさない。
女の幼馴染もいなければ、姉妹もいない。彼女が欲しくないわけではないが、周りの女子に興味を感じない。どちらかと言えば年下が好きな紳士である。
夏休み六日前、俺達は悩んでいた。
朝のホームルームが終わり、一時間目がはじまる。
『粘土って美術じゃなくて工作じゃないのか?そもそも粘土捏ねても粘土にしかならないよな?』
愚痴や屁理屈ばかり溢す友人、青野優。幼稚園からの付き合いで、近所という事もあり、よく互いの家を行き来して遊ぶ、俗にいう腐れ縁。悪友だ。
『粘土捏ねただけじゃないか。いいからさっさと資料見つけて適当に作ろうよ。』
『ウルは昔から凝り性だろ?俺に言わせればお前はセンスの塊だ!そりゃモテるだろうよ』
『わけのわからん事言ってないで、粘土でなるべく簡単に作れそうなの探せって!』
誰もいない図書室で二人で本を漁る。
『それにしても暑いなぁ。冷たい粘土が恋しいぜ!』
確かに暑い…。
これからが夏本番。おそらく更に気温は上がるだろう。
『ならさっさと何つくるか決めろよ…』
とは言うものの、俺もまだ決まってはいない。
『お、これなんてどうだ?』
それは図書室の片隅、棚の一番端にあった一冊の絵本。
優が手にした本を一緒に覗きこむ。
詳しい内容はわからないが、魔女が杖を振り翳し、少年に魔法をかけているページが開かれている。
『魔女!?ハードル上げるなぁ』
『違うって!杖だよ杖。魔女の持ってる杖!』
魔女って箒を持ってるイメージなんだが…
『粘土転がして伸ばすだけじゃん…』
『馬ッ鹿!これをよりリアルにだな…』
そんな話をしていると、ふいに外が暗くなり、空を見るといつのまにか黒い雨雲に覆われていた。
『お、おい!ウルッ!』
呼ばれて振り返ると、机に置かれた絵本が勝手に開く。
突如本から光が飛び出し、文字が宙を舞い、二人を囲むように回りだした。
『どうなってんだよこれ!?』
眩い閃光の中に青く光る文字が浮かぶ。
本に原因があると判断し直観的に閉じようとするものの、強烈な眠気に襲われ、立っていることもままならない。
膝をつき、倒そうになる身体を支えるために床へ伸ばした右手が何かに触れた。
床にも文字が浮かび、円のように二人を取り囲む魔方陣のようなものが完成した。
『これはっ!?…』
状況も理解できないまま俺の意識は途絶えた。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
全体の構想は考えてあるものの、ざっくりとしていて、見切り発車とあまり変わりません。肉付けしながら書いている状態です。
初投稿ですので至らない点、改善すべき点ばかりですが、レビューをつけれるみたいなので、感想等あればいただけると嬉しいです。
改善点などは辛口だとさらに嬉しいです。今後につなげていこうと思います!
よろしくお願いいたします!