黒幕を発見し、戦いを挑む
ロスは頂にたどり着くと一か所だけ、太陽の光が照らしている場所を発見した。
「ン? ずいぶん早いですな」
そこにいたのは影の怪物と同じ姿をしていた。だが言葉を話し、身体は影のような黒ではなく、鎧は黒い横縞の入った白色で、右手に持つ剣は純白に染まっていた。
そして、絶えず霧のようなどす黒い闇が体を覆っている。
「お前がこの騒動の黒幕だな」
ロスの言葉に、頂にいた怪物は肯定するかのように頷く。
「左様、私は魔王様の忠臣、名はパイフーと申します」
パイフーはまるで騎士のように恭しく頭を下げる。
その動きはどこか芝居がかっていた。
「貴公らは私から太陽を奪った、魔王様というかけがえのない太陽を。我らは嘆き、涙を流して悲しんだ。なれば私が貴公らから光を奪うのも、また道理。奪われたのならば、奪い返せばいい」
パイフーの身体から溢れている闇が空に昇っていき、雲をさらに濃くしていく。
「あいつを倒さない限り、この事態は収まらないようですね」
「チンロンといい、何故旧魔王の配下は本拠地に直接攻めてくるのじゃろうか……」
「考えるのあと、よそ見ダメ」
「この世界に復讐を、全ては魔王様復活のために‼」
ロスは三人を下ろし、攻撃に備え風魔法を展開する。
だが荒れ狂う嵐でさえパイフーの闇を消し去るには至らなかった。
「行きますぞ、暗黒斬!」
パイフーは剣を振り下ろす。放たれた斬撃は闇と混ざり合い、漆黒の斬撃となってロス達を襲う。
ロスは風魔法を幾重にも重ねるが、その一撃を相殺できず、逸らすことしかできなかった。
「なんて火力だ」
「あいつの遠距離攻撃は余が何とかしよう。その間に内側に潜り込むのじゃ」
メツの指示通り、風魔法で加速しながらパイフーに迫る。次々と暗黒斬は放たれるが、メツの空間魔法によりお互いがぶつかり合って相殺されていく。
ロスは杖から雷魔法を放ち、パイフーを狙う。パイフーはそれを躱すこともせず、涼しい顔で受け止めた。
「なんと軽い一撃か! 迷い、悩み、ふらついた一撃など、私には蚊ほども効きませんな」
ロスは自身の攻撃が通じないことに動揺する。
そんなロスをあざ笑うかのようにパイフーは腕を大きく振り、大げさな身振りで自身の嘆きを表現していた。
「余りにも期待外れ! 私は失望を隠せませんな。このように決意の欠けた持ち主など相手にもならない! 復讐を果たすためには、その相手も太陽の如き存在でなくてはならない! 自身らを照らす英雄のような存在を失えば、民の嘆きと絶望は数倍にもなる!」
ロスは何度も魔法を直撃させるが、パイフーは微動だにしない。
魔法に耐性があるのかと尻尾をぶつけ、爪で切り裂くがパイフーの鎧に傷をつけることはできなかった。
「言ったはずだ! 決意無き者など私の相手ではない!」
パイフーは用無しと言わんばかりにロスの腹部を切り裂く。血があふれ出て、激痛でロスは倒れ込んでしまった。
「ロス!」
ピカは悲鳴を上げ、ロスに近づこうとするがユウがその手を掴む。
「放してください! ロスが、ロスがああ!」
「落ち着いて、下手に近づけば、私たちも危ない!」
必死でユウがピカを宥める姿を見てパイフーの口元が吊り上がる。
パイフーはロスを蹴り飛ばすと、ピカ達に向かって駆けだした。
「こちらには近づけさせんぞ!」
メツは空間魔法を使おうとするが突然足元がぐらつく。先ほど空間魔法を多用したため、想像以上に体に負担がかかっていたのだ。
結果、パイフーは瞬く間に二人近づく。ユウはピカを庇うため勇ましく、前に立った。
「ピカは、ユウが――」
「邪魔です!」
ユウの身体がパイフーに殴られあっけなく吹き飛ぶ。ユウは血を吐きながら転がっていき、動かなくなった。
「ユウ――がッ!」
パイフーはピカの頭を鷲掴みにして、持ち上げる。
ピカは抵抗するため、パイフーの手を叩くが、無駄なあがきだった。
「その手を放すのじゃアアアあ!」
メツの雄たけびと共にピカがパイフーの手から消える。
その体はロスの元に一瞬で移動していた。
「ぐ……ここまでじゃの……」
メツは糸が切れたように倒れ込む。
限界以上の力を引き出し、もはや意識すら保つことができなかった。
ピカは急いでロスに呼びかける。
抑えた腹部から血が止まらず、ロスは苦痛に顔をゆがめていた。
「しっかりしてロス! 死なないで!」
「ご安心を、その者は私が責任を持ってあの世に送りましょうぞ」
ピカが振り向くと、そこには満開の笑みを浮かべたパイフーの姿があった。
「貴公のこの者に対する決意は素晴らしいですな。純然たる決意の輝き、私の剣の錆にするべき相手としてふさわしい。英雄よ、さらば! 魔王様が照らす新たな世界で再び会いましょうぞ」
パイフーはピカを殺すため剣を振り上げる。
ピカはせめてロスは傷つけさせまいと、その体をロスから離し、目をつぶった。
だがいくら待っても痛みが襲ってこない。
恐る恐る目を開けると――
「ロス!」
ロスがピカを庇う様に立っていた。




