ホムンクルスの夢日記
―――『人間とは何なのか』、この質問こそが、可能性の生き物たる人間を表すのかもしれない―――
作られた命、神への冒涜
人間の傲慢、浅はかなる業
『私』の存在こそが罪で
『私』の苦悩こそ天罰なのだ
フラスコと培養液が『私』の世界
何も強要されず、故に何も期待されない
『結果』ではなく『過程』にこそ意味がある
生まれて来た時点で『私』の意味は消えていた
知恵は諸刃の剣である
人間に無限の可能性を与え
数多のジレンマも突きつける
存在への苦悩は彼らを蝕み
倫理と道徳は彼らを圧搾する
自身の本質も知らないまま
やがてあやふやな世界に疑念を抱く
『私』にはそれが哀れに思える
無限の可能性を与えられているのに
彼等を待つのはイカロスと同じ運命
疑心暗鬼は永遠の敵であり
己の本質もわからないまま
他者の本質を定義しようとする
それこそが争いの種だとも知らずに
しかし同時に『私』は羨ましい
どれだけそれが前途多難であろうと
彼らは己の『本質』を模索できる
『私』には生きる意味も無ければ
『己の本質』と呼べる物も無い
『私』は所詮、作られた存在であり
クリエイターの意図こそが私の『本質』
しかし『私』はそれを『私』だと認めない
それは作り物たる『私』の唯一の反抗である
悩める事は不幸かもしれない
しかしそれ以上に幸せかもしれない
己すらも考察対象にして、
『人間とは何なのか』と問い続ける事こそ、
『人間の本質』なのかもしれない
しかし『私』なりの解釈を書き記すには
この夢日記の余白は狭すぎる
いつか人間として生まれた時の為に
この難題の答えは保留にしておこう。