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奢る男の笑顔

作者: 遥 一良
掲載日:2018/03/02


 学生の頃に比べて、友人もしくは知人。どちらに関係なく、誰かに食事を奢ってもらうことは減った気がする。


 誰かに食事または、飲み物なんかを奢る行為はあくまでも、奢る側の気分だったり気持ちがあってこそのサプライズみたいなもの。


 だけど、あのひとは今思えば、どこか普通じゃない。そう思えた。彼氏でもなければ、親しい友人関係でもなく高校が同じで、クラスの中で何となく話す機会が多かっただけの人。


 だからこそ、あの日の恐怖が誰かに奢られる時にフラッシュバックの様に甦ってしまうのだけれど。


「今日は割り勘ですよね」


「いや、俺が払うよ」


「え、だってこの前も全部出してくれたじゃないですか! そんなの悪いですよ」


「いいのいいの、俺の気持ちでしてることだから、君は気にしなくていいからね」


 彼は笑顔を見せたまま、自分以外の食事代まで支払っている。こんなことが、時々飲みに行ったり、食事だけしたりする時に続いた。


 いくらなんでも、私も社会人。割り勘で自分が食べたぶんだけ払わなきゃ、何か嫌だ。


 そうして、二ヶ月ぶりに会ったあの人との食事で、私は先に会計を済ませていた。帰る時、彼は当たり前の様に笑顔を振り撒きながら、私の分まで払おうとした。


「こちら、既に会計を済ませております」


 店員が手でわたしを示しながら、彼に向けて会計を促している。


「いつも出して頂いていたので、先に済ませちゃいました」


 わたしは彼を見ながら、そういうことなので……と軽く頭を下げた。


「ふざけるな! 俺の気持ちを何だと思ってやがる?」


「え、いや、だってさすがに払いすぎですし、私も社会人ですのでいつも奢られるのは遠慮しますよ」


「なら、済ませた分の金を受け取れ」


「いえ、ですからそれは……」


 みるみるうちに彼の形相が変わり、別人の様に怒り狂い出した。既に自分の分を払った私は先に失礼します。そう言って店を出た。


「金を受け取れ! 奢るって言ってるだろ」


「結構ですから。お気持ちだけで」


 何故ここまで執着するのか、理解できなかった。彼は私の恋人あるいは、占有したなにかだと思っていたのだろうか。


 奢る男はいつまでも私を追いかけてきた。片手には奢るはずだったお札を握りしめたまま……


 ここまで来ると異常過ぎて怖くて、最後には警察に行くしかなかった。この出来事以降、付き合いは消え、奢ってくれるひとに恐怖を感じるようになってしまった。


 何事もほどほどにお願いしたい。そう思いながら。

一部、修正しました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 彼はなぜ、食事代を出そうとするのか? それが最後まで【謎】でしたね。 読者に想像させる、 その余白が残されているからこそ、 この作品の可能性は広いのだと思われます。 大変興味深い短編小…
2018/03/02 13:36 退会済み
管理
[良い点] 人間それぞれ、執着するものへの違いについて考えさせられる文章でした(><) 怒りにまで発展してしまう執着、純文学で取り扱えそうな題材ですよね!
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