僕は死にたいんだ
「死にたい」
そう思い始めたのは、もうだいぶ昔の話。
そうだな、だいたい23億年も前のこと、誰もが「えっ?」って、流石に思うよね。
そう、君の察する通りかも知れない、僕は…
不死身なんだ。
僕が生まれたのは、もう数え切れないほど昔…そう、遠くてもう戻れないくらい離れた昔さ。
神って知っているかい?
まぁ、通常、神って言ったら世界を作ったとか天災は神の怒りだとか未来を知っているだとか物凄く現実離れしていて科学的根拠のないまったく未知の存在であり目に見えないっとかって言われる奴だよ。
あの人はね、そんな偉い存在ではないよ。
そうだな言うなれば、う~ん。 単なる、知識と力の支配者?かな。
そう、彼は支配者だ。 確かに彼は世界を作った。
でも、ただ作っただけ、後のことは本当に自然と起こった事なんだ。
それに、彼は目にも見える。 現れないのは恥ずかしがり屋な上に、大したこと別にしていないのに君達に拝められちゃってるからなおのこと出にくいんだって。
まぁ、そんな神が僕を作った。
無目的にね…。
僕は神が大嫌いだ。 殺したい。 形がなくなるまでに粉々にグチャグチャにしてやりたい。 物凄くね。
なんでかって?
僕はね何度も言うけれど死ねないんだ、何をしても誰に僕を殺させようとしても殺そうとしてきた相手が死んでしまう。
自殺しようとしても何度も何度も蘇ってしまう幾日も幾日もずっと死のうとしてきたのに死ねない。
そもそも、なんで死にたがるのか君に話していなかったね。
それじゃあ、教えてあげるよ。
あれは、もう30億年も前のこと、今でもはっきりと憶えているよ。
僕が人間達と仲良く暮らしていることができたはずの頃のこと。
僕はある集落の人達と狩りをしていたんだ。 狙いは一匹の大型魔獣だった。
そうそう、この時代は魔法が先に発達した時代だったんだ。
今は不本意ながら科学が先に発達してしまったけれどね…。
まぁそんなことはおいといて、話の続きに戻ろうか。
僕と集落の人達は両手に浮体魔力を宿して一気に魔獣を仕留めようとした。
“一斉にかかるぞ”ってそうリーダーが合図してきて、僕はマナを放ったんだ。
そして、魔獣は倒れた。
僕等は“やった!”そう喜んだ。 でも、その時 奴はまだ死んでいなかった。
密かに反撃の時を伺っていたのだ。
僕等はそれに気付かず魔獣を村へと運んび、その夜、村では長老の思いつきで宴が執り行われた。
大きな炎を中心にその周りで踊った。
もう、宴も終盤って時だった。
魔獣が目を、その真っ赤な目を、鋭く尖った牙を爪を、その巨体を再び僕等に見せ付けた。
なんの装備もしていなかった村の人達は次々と狩られていった。
血が飛び散って、人の体が飛び散って、腕や足、首、脳、目玉、腸、心臓、肉片、村中にばらまかれたそれはただただ、恐怖という一つの感情を呼び起こした。
楽しい宴は人の叫び声が木霊する悲劇の夜へと変わり、僕はその光景をただ呆然と眺めることしか…立ち尽くすことしかできずにいた。
ただ、そんな僕を見捨てずに彼は僕へと歩み寄る。
ゆっくりとゆっくりと。
そして、彼の鋭く尖った爪が月明かりに照らされた、今、魔獣の腕が僕に向かって来るというその瞬間 僕は倒れ込んだ。
どうやら、誰かに突き飛ばされたらしい。
だが、その時の僕はそんな冷静に見ていられなかった。
彼女は僕の何十何万億か分からない時の中で初めてできた“友達”って呼べる人がただの…肉片に変わった。
彼…魔獣のせいで…、ただの肉片に…。
ほっといてくれても僕は死なないのに…死なない…の…に…。
死なないのに死なないのに死なないのに死なないのに死なないのに死なないのに死なないのに死なないのに死なないのに死なないのに死なないのに死なないのに死なないのに死なないのに死なないのに死なないのに死なないのに死なないのに死なないのに死なないのにぃぃぃぃ!!!!!!!!
不意に目から流したことのない何かがこぼれ落ちた。
僕はその魔獣の足を、腕を、体を、首を、頭を、全てを、ひたすら魔法で壊し続けた。
全力を、命を賭けて。
何も残らなくなるまで、奴が死んだ後もずっと。
村が無くなった後もずっと。
ある感情に身体を任せて。
ずっと。
腕が削れて骨が無くなってその後もずっとマナを宿した身体で殴り続けた。
そうして、とうとう頭だけになった。
もう、復讐ができない。
でも、不死身だから僕は死ねない。
でも、彼女は死んだ。
だから、僕は彼女のいるところに行きたい。
だから…
僕は死にたいんだ
僕は死にたがりの不死身、名は、シセ。
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