死
大変長らくお待たせしました、いやー、執筆意欲の低下って怖い。
でもそれも徐々に回復してきてるんで、少しは更新スピードも早くなると思います。あくまで少しですが…
あれから僕は、混乱に路線変更して殴り続けた。
いやー、やっぱ混乱は長い間使ってきただけあって、効果てきめんだなー。麻痺とは確率がダンチだわ。
で、そうこうしてるうちに魔力が半分くらい回復した。これくらいあれば十分決定打になるだけの魔法がぶっ放せるだろ。いや、それどころか1発撃ってもまだ余裕あるかもな。
じゃ、こうやってかわして……殴ると。なんか、この避ける動作繰り返してると、反復横飛びを思い出すな。それにしてもこんなに避け続けてると疲れてきた。
よし、混乱も入ったし、止めを刺しますか。それに、この魔力で地魔法放ったら、どんくらいの威力になるのかも試してみたいし。よーし……
「サぜ」
ズゴオッ!!
「キシイイイイイイイィィ!!?」
【スキル:地属性魔法のレベルが3から4に上昇しました】
おおお!? すげえ! 1mくらいまで伸びたぞ!? できるだけ高くまで伸びるように意識したってのもあるかもしれないけど、それにしてもすげーな。やべ、ちょっと今誰にも負ける気がしないわ。へへへへ、今くらいは調子乗ってもいいよな。カマキリも倒したし……
ザク
……ん? なんか腹ら辺に変な感触が……え? 浮いて……いや、違う? 切れて――
――切れて!?
「アア゛あああア゛あアア゛アあ゛あ゛アあああアあアアああ゛あ!! 」
痛ってええええッ!! うあぐっ、がああ!!
な、何で!? 何が起こっ――ま、まさか、カマキリか!?
あいつ、死んだんじゃ!? あれで生きてたってのか!? う、嘘だろ……?
【20の経験値を獲得しました】
【個体:マンドラゴラのレベルが5から6に上昇しました。それにより、ステータスが上昇しました】
畜生、今更、このアナウンスがあったって、い、意味無いんだよ……
……ああ、そうか、うっ、ど、通りでこのアナウンスが無かったわけだ……ああっ、クソッ、何で気付かないんだよ、僕の馬鹿……
クソ、この2度目の人生も、こ、こんなすぐに終わっちまうのかよ……まあ、か、考えてみれば、こんな命の危険がずっとついて回るような世界で、い、生き残るのなんて、安全な場所に慣れてきた現代人にとっては、難しいに決まってるよな……。異世界転生モノの主人公なんて、その点で言っても、じょ、常識はずれもいいとこだ。いまこんな状況に置かれて初めて実感したわ……もう、あのカマキリを恨む気も失せたよ……
……テンは、この先も元気にやってけるかな……あ、あいつには、無事に生き延びてほしいな……
……もう一度、転生とか……いや、あるわけないよな…。転生なんて、そんな事が何度もあるとは思えないしな……
短い間だったけど、ここでの生活も、楽しかったな……そうだ、死んだら、本当はどうなるんだろ……それを確かめるのも、こ、こんな生きる希望なんて無い状況じゃ、楽しみになってくるな……
……まあ、最期の瞬間くらいは、静かに迎えるか…………。
――――――――おかしい。
意識が……全然無くならねえ。
え、死ぬのってこんな意識はっきりしてんのか……? いや、そんなわけ無い。はねられた時はすぐ意識が朦朧としてきたし。
な、何で……? え、ちょ、ステータス――
―――――――――――――――――――
名前:無し 種族:マンドラゴラ 系統:植物系
Lv.6 体力:0/51 魔力:0/99
攻撃:35 魔攻:74
守備:35 魔守:85
速度:35 養分:219
状態:瀕死
―――――――――――――――――――
え、体力0じゃん、なのに何で……
……ん? 状態のところが……瀕死? なんだそれ?
もしかして、これ、死んだ判定になってない……?
――マジかよ。
う、うわあああっ、はずっ! 何が 「最期の瞬間くらいは、静かに迎えるか…………」 だ! 何が 「短い間だったけど、ここでの生活も、楽しかったな……」 だ! 僕のアホーーーッ!! ああ、穴があったら入りたいってこういう事なのか……。誰かに聞かれるわけでも無いから良かったけど、それでも黒歴史確定じゃねーか……、最悪だわ。
……まあ、とにかく生き延びられたんだし、良しと……いや、できない。できるわけがない。うう、もういっその事、無かった事に……うん、そうしよう。
黒歴史なんて無かった。黒歴史なんて無かった。あ、大事なことなので2…どうでもいいか。
恥ずかしい事なんて言ってない、考えてない。そうだ、生き延びられることは最初から知ってたんだよ!
で、問題は……いや、さっきのも十分問題だが――ああ、そうだ。さっきは何も無かったんだった。そうだ、そうだ。
で、問題は、何で生きてられてるのか、ってことだ。まあ、そういう仕組みだ、ってことでカタをつけることもできるんだが、それだと(笑)とかカマキリとかはどうなんだ、って話になるからな。
うーん……、この世界はやっぱわからん事がいっぱいあるなー。ま、時間が経つのを待つかー。
――おい、もう丸1日経つんだが。何も変化が無いんだが。ちょ、どういうことよ?
――ああ、やっと変わった。もうあれから3日目だよ、もう退屈で退屈で仕方なかったわ。もうちょいすぐに変化があってもいいんじゃないの?
まあそれはそれとして、何というか、断面から新しく何かぴょこんと突き出てきた。僕の見たところによると、多分これは大根、もといマンドラゴラの先端じゃないかと。
これってアレか? 人参とか大根とかの上の部分を切って水に浸けたら成長する的なヤツか?
でもそれで成長するのって葉っぱとか芽とかだよな? じゃ何でこの部分が出てきてんだよ。まあこれも「異世界だから」「そういう仕組みだから」で片付けられちまうんだが……それだと何だか納得いかないんだよなー。
でもまあ、僕は学者じゃないしな。生前の世界とは全く別の世界の科学なんて、そう簡単にわかるはずが無い。しゃーない、ひとまずはそれで納得しとくことにしよう。
で、それだけなら良いんだけど、1つ問題がある。
泣き別れになった僕の下半身、あれも再生してきてるんですよ。
……これってどうなるんだ?
仮に僕と下半身……いや、僕と僕? 上半身と僕? ――ああ、もう面倒だ、上半身と下半身でいいや! が両方とも無事に再生したとして、これってどうなるんだ? もしかして僕が2人……いや、2本? になるのか? そうなると、ん? 僕って一体どっちだ? こっちが元々あった意識なのか? それともこっちは分裂してできた新しい意識なのか? それ以前に、僕は僕なのか?
【実績:哲学者を獲得しました】
……あー、もう、わからん! こんな哲学みたいなこと考え続けても、生憎僕にはそんなことを理解できる頭は無いからな。
ああ、話が逸れたか。で、2本になって、どっちも同じ意識になるのか? それとも、どちらかには別の意識が芽生えるとか。それなら、僕には前までの記憶があるし、僕が本体? だっていう可能性が高くなるのか。まあ、それ以外にも色々考えつく事もあるから、わからんのだが。
まあ、実際に見た方が早いよな。待つか。どうせ暇だろうけど。で、あっちがもし敵対してきたなら、その時はその時だ。でも、僕としてはあっちも僕だった方が都合がいいなー。チームプレイができるし、何より退屈しなくなるはずだしな。まあ、どっちがどっちだかわからなくなる可能性も大だが。
まあ、どういう結果にしろ、面白くなりそうだな。




