3人寄っても雑魚は雑魚
それにしてもあの蜘蛛、グライダーとか使って格好よかったな。僕も空とか飛べたら気持ちいいだろうなー。ま、植物じゃどうせ無理だろうけど。
あ、でも、ここ異世界だからな。地球のものさしじゃ測れないか。もしかしたら飛ぶ植物もいるかもしれないし。でもまあそれがいたとして進化できるっていう確証はないけど。
そうこう考えてるうちに1時間くらい経った。テンは相変わらず葉っぱをムシャム……って、ん? 何か吐いてる? 口のほうから何か出てきて……いや、違う。吐いてるんじゃなくて、出てきてる? ってことは……脱皮か!
おお! 結構早いもんだな! 1週間くらいしないと脱皮しないもんだと思ってたけど、その半分くらいで済むとは。何か嬉しいな。僕が育ててる……いや、違うか。僕を食べてるから成長が嬉しいんだな、多分。
皮から半身くらい出てきた。脱皮し始めからどんくらい経った? 1分くらいかな? 時間とか気にしてなかったからわかんないけど……って、ん? あ! 遠くから蜘蛛の接近を確認! またかよ。
でもまあさっきと同じように秒殺でき……ん? 何か多くね? ひい、ふう、みい――3匹。うん。どうしよう。
ちょ、待てよ! 何で今日はこんなに蜘蛛が来るんだよ! 群れで近くに引っ越しでもして来たんか? いや、でも、蜘蛛って群れで行動するのか? うーん……
……って、それは今はいい! いつの間にか結構近づいて来てんじゃん! マジでどうしよう? 一匹の時みたいにやるにしても、魔力足りるか?
どうする? えーっと……あ、そうだ。この方法があった。
――蜘蛛がトゲ地帯に進入したのを確認! 今だ、上から風! よし、蜘蛛がどんどん降下してってる。このまま態勢を崩したままでトゲに突っ込んでくれれば……
【8の経験値を獲得しました】
……トゲに刺さったのは一匹だけか。残りの二匹はグライダーの角度とか調節して、態勢を立て直したみたいだ。蜘蛛のくせにそんな格好いいことできるなんて生意気だ、全く!
まあ、でも僕の作戦はまだ終わりじゃないからな。魔力も使ったのは半分だけだし。
よし、上手い具合に近づいてきた。テンがいる葉っぱのほうに向かってってるな。やっぱ蜘蛛は蝶の幼虫も食うのか。じゃ、一応テンはあいつらに食われないように葉っぱでガードしとくか。
蜘蛛はこれを見て結構動揺したみたいだ。まあ、普通植物が動くなんて思わないよな。でも、動揺してもグライダーの操作をミスらないのは流石だな、畜生!
でもって、そんな隙を見逃す訳にはいかない。葉っぱ諸君! 総員、かかれー!
――よし、蜘蛛に大量に混乱の葉がヒットしてるぞ! やっぱいくらテクニックがあっても数の暴力には敵わないよな。数こそ正義!
お、流石の蜘蛛でも混乱したらグライダーの制御はできないのか。ふっ、ざまあ~!
で、その落ちた先がトゲならなおいいんだけど……
【8の経験値を獲得しました】
よし、片方は刺さったな。ま、ここら一帯はこれでもかってくらいトゲが敷き詰められてるからな。当たらないほうが珍しいくらいだ。
だから、当たらなかったもう片方は称賛に値するな。よし、褒めてつかわす。まあ殺すんだけどね。
ってことで、我に返ってグライダーを広げてこっちに来ようとしたところで……トゲをにょきっと!
【8の経験値を獲得しました】
【個体:アミルズ魔草のレベルが18から19に上昇しました。それにより、ステータスが上昇しました】
よし、殲滅完了だ! ついでにレベルも上がった! ハハハハハ!
おっと、そうだそうだ。テンはどうした?
――もう少しで脱皮が終わりそうだ。頑張れ! あと少しだ! がんばれ! お前ならできる! やれるって!
……某熱いお米の人みたいになってしまった。落ち着け、僕。脱皮くらいでこんな熱くなることはないだろ。静かに見守ってやるか。まあ思ってるだけだから別にうるさくも何ともないんだけどね。
……よし、全身が出るぞ! 最後だ、頑張れ! ――――よし、終わりだー! ん? あ、頭がまだか。……よし、今度こそ終わりだー! 前より結構大きくなったな、まだ小さいけど。これからの成長がますます楽しみだ。
30分くらい後。テンは相変わらずマイペースに葉っぱをムシャムシャしてた。これ見てるとあれだな、
「ムシャムシャしてやった。後悔はしていない。今は(ry」
ってのを思い出すな。どうでもいいけど。
そういえばこいつってどんくらいで成体になるんだろうな? 2か月くらいかかるかな? 待ち遠しいなー。蛹から蝶になって羽ばたいてく姿が早く見たいなー……
――――――ん? なんかあっちに大きい影があるぞ!? そういやこっちで大きい生物って見たこと無いな。まあ僕が大きいから大きいのも大きく感じない、ってのもあるかもしれないけど……どんな奴なんだろうな?――って、ん? あれ?
――――は!!?




