再び
カマキリとの激闘からおよそ1週間が経った。その間、再びカマキリに襲われることはなかった。また、初期のようにはバッタや蜂は集まってこなかったが、それでも茂は着々とレベルを上げていった。そんなある日のこと……
【6の経験値を獲得しました】
うーん、だめか。もう前のレベルアップから4匹は倒してるんだけどなー。ちょっとアミルズ草だった時に比べてレベルの上がりが悪すぎないか? あの時は18とかそこらでも3匹倒せばレベル上がったんだけどな。それが今じゃ13レベで4匹超えかよ? これはひどい。
それにしても暇だなー。動いたらカマキリが襲ってくるかもしれないから、結局生活は進化前とほとんど変わらないんだよな。
ところでこの世界に来て暇って何回思ったろ? もう100回くらい思ったんじゃないかな? まあ、どうでもいいか。
そんな時であった。茂はある生物が遠くから来ているのに気付いた。
――ん? あれ、この気配って確か……人間!?
おお、久々の遭遇! まあ多分あいつらは気付いてないけど!
――あ! よく見たらあれこの前の3人組じゃん! 今日は何しに来たんだろ? また蜂退治とか? それとも採取か何かに来たんかな―――
そこで茂はある事に気付いた。
……ん? ちょっと待て。今の僕って……紫だったよな? 周りからすげー浮いてるよな?
もしかして……これ、ヤバい?
発見→スッパーンとかいう最悪の流れになんない!?
こんな見るからに周りと違っておかしい草があったら、真っ先に刈られてもおかしく無いよな!? どうしよう……
あ、そうだ! 身体操作使えるんだった! これで最大限まで伏せよう!
……ヤバい。トゲが多すぎた。
あのカマキリ戦の反省からトゲ大量増殖させたんだった。
ま、まあ、しょうがない、背に腹は代えられないか。
頑張ってトゲが無い所に伏せよう。
そう考え、茂が体を根元から折り曲げ、素早く倒した時だった。
ガサッ――
カマキリがいつぞやのように鎌を振りかぶり、茂みから突撃してきていた。
!? ちょ、タンマタンマ!! 今無理だから!!
そんなことはお構い無しに、カマキリは茂を狙って鎌を薙いできた。
クソッ、避けるしかない!! でもできるだけ三人組には見られないようにしないと!
そのような2つの思考が同時に頭に浮かび、気が付いた時には茂の体は見事な「つ」の字を描いていた。
危っぶねえ!! 早めに気付いてよかった!
だがカマキリ、僕は前のようには苦戦しない! 別人だけど!
ほら、突進してこいよ!
その思い通りに、カマキリは今度は鎌を上に振りかぶり、茂へと突撃してきた。
しかし、カマキリの進路上には一つのトゲがあった。そして、それが茂の狙いであった。
へっ! バーカ! 魔力操作!
そしてトゲはせり上がり、カマキリの腹を貫――――かなかった。
カマキリは、間一髪のところで危険を察知し、横跳びにトゲを避けたのである。
よっ――え? うわあああああ!
何で避けんだよ!? こ、こっち来んな!
しかし、形勢を整えたカマキリは、そんなことはお構い無しとばかりに再び突撃してきた。
もし茂がこの可能性を考慮し魔力を節約していたなら、再び攻撃に回ることができたであろう。
だが茂は、前回成功したこの攻撃に絶対の自身を持っており、次のために魔力をとっておくなどということはしていなかった。
そのため……
うわあっ、来るなぁ! ちょ、何で!? 何で避けられたんだよ!? 前回成功したじゃん! や、ヤっべえ!!
そんな思考の中でも、カマキリは容赦無く鎌を振り下ろしてくる。
しかし、茂は反応が遅れ、葉の一枚に大きな一撃を受けてしまった。
ぐっ、痛ッ! ……チッ、痛みでちょっとは冷静になれた。
クソ……この状況、どうすればいいんだよ? 混乱付加で一撃を狙うしかないか?
でも、結局それが今試せる方法の中で一番確実なんだよな。リスク高いけど、やるしかないか。
カマキリは再び鎌を振りかざし、茂へ迫ってくる。それに対し、茂も複数の葉を丸め、振りかざし、迎撃の準備をした。
よし、来い! 根性で当ててやる!
そして、カマキリの鎌が茂へ迫る――が、それを茂は茎をくねらせることでひらりとかわした。
同時に、茂の振りかぶっていた葉が一斉にカマキリへと迫った。
カマキリは、一瞬ひるんだが、その危険性を察知したのか、後ろにさがってかわそうとした、が……
いくらカマキリの身体能力が茂を上回っているとはいえ、数の力には勝てなかった。そして、一つの葉が胴体に直撃した。
よし、クリーンヒット!
【混乱付加のレベルが7から8に上昇しました】
レベルアップはうれしいけど今はそんなに必要無い! それより混乱してくれ、頼む!
……あんま動かないぞ? おおっ、混乱効いた! よっしゃあ!……で、どうする!? 早くしないと我に返っちまう!
あ、トゲに近づいてってる! これを上手く利用したい……そうだ、ボディプレスだ! もう時間が無い、急げ! そおおおおおおい!!
そしてカマキリは我に返った。その瞬間に見たものは、自身の目前まで迫る大きな影であった。
カマキリは避けるのは無理だと判断し、咄嗟に鎌を薙いだ。しかし、それはいくつかの葉を切り落とすに留まり、肝心の茎には傷をつけることができなかった。
そして、茂の体はカマキリを押し潰した。いくらカマキリといえど、自身の倍以上ある大きさの物体にのしかかられれば為す術も無く、ほんの少しの時間踏ん張って耐えた後には、もう絶命していた。
【20の経験値を獲得しました】
【個体:アミルズ魔草のレベルが13から14に上昇しました。それにより、ステータスが上昇しました】
おっしゃあああ!! 勝ったああああ!! ふう、一時は魔力が尽きてどうなることかと……痛たたたっ! あー、最後にあいつに葉だいぶ切られたから結構痛いな……
【スキル:痛覚軽減のレベルが4から5に上昇しました】
お、ありがた……くない。これ「痛覚軽減」とかいう名前だけど全然軽減しないじゃん。役立たずだわ、全く……
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ん? …あ!! やべえ、人間がいることすっかり忘れてた! 伏せないと……あ、そうだ! そういや僕気配遮断持ってたよな? 今が使い時じゃん、発動しよう! 気配遮断!
……うーん、いまいち変化がわからん。まあ、自分だししょうがないか。
おっと、そうだ、人間がいるんだった。監視しとかないと……
うん。結論から言うと、素通りしてった。なんかここが目的じゃなかったみたいね。余計な心配して損したわ……
あ、でも、もし本当にここが目的だったら危なかったもんな。心配するのは大事か。
はあ、今日は散々だったなー。もうこんな事起こんないといいんだけどなー。でも、無いとも言いきれないからなー。
よし、今度こんなことがあった時のために、対策立てとこっか。
戦闘シーンやっぱ難しい……(´・ω・`)
あと、前回からなんですが、ちょっと長めにしてます。




