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終わりゆく世界に花は咲く  作者: 霜月 式
9/10

9

「主よ、いったい何が!?」

悲鳴にも似た声が響いた。

 そこは天上に聳え立つ城、神とその従者たる天使らが住まう地だ。その玉座の置かれた場所、神の鎮座するその場所は天使でさえ大天使と呼ばれる最高位の七人の天使のみが入ることの許された神聖な場所、そこで神と大天使たちが悪魔との戦について話し合っていた。

 そのさなか玉座に座る神の口元から突然血が流れたのだ。

 動揺する大天使らを制し、神は言った。

「勇者の元へ送った私の分身が消滅しました」

「なっ?!」

 分身であろうと、それは神自身が作り出したもの、それが消滅したなど普通はあり得ないことだった。

「…魔王ですか?」

 もしそれを可能にする存在がいるとすればこの世界で唯一神に並びうる、悪魔の王だけだろう。しかしそれでも、神の分身を消滅させたその余波だけで神に血を流させるなど、到底信じられる話ではなかった。

 神が、その問いに答えようとした瞬間

「大変です!!」

 一人の若い天使が勢いよくその場所への扉を開いた。

「貴様、ここがどこか分かっているのか!」

 大天使の一人が怒鳴る。認められた者以外が入った瞬間首を飛ばされても仕方ない、そういう場所なのだ。

 自らの失態に気づき硬直する、しかし

「構いません。何があったのですか?」

 神は訪ねる。

 若い天使は、言った。

「も、申し上げます。地上において莫大なエレルギーの放出を確認。その周囲が耐えられず、崩壊を始めました」

「!馬鹿なそんなことが」

 その報告に一人の大天使が反応する。この世界は、神が膨大な力と神以外の者は理解することさえ出来ない英知の結晶だ。

 それは成長し、たとえ損傷を負っても自動で再生するようできている。

 成長し続けた世界の持つエネルギーは当初の『神の約七倍のエネルギー』を大きく上回る。その世界が、一部といえど再生せずに崩壊しているなど、ありえることではなかった。

 だが、若い天使の報告はさらに続いた。

「現在、魔王軍が崩壊の拡大を食い止めています。また、その崩壊を招いているエネルギーの中心にいるのは」

 魔王軍が崩壊を食い止めているという事実を飲み込みきれぬ大天使たちに、最後の報告が届く。

「彼の勇者です」



 神らが原因の場に着いた時その場にいたのは、いや、その場にあったのは死んだ少女を大切そうに抱きかかえる勇者と、そして一人の黒髪の女性だけだった。そこにあったはずの森や近くにあった筈の街は、勇者を中心とした半径五キロほどの円状に消え去りただ何も無い真っ黒な場所があるだけだった。

 ふと黒髪の女性が神らを見た。その目は鋭くその瞳は、燃えるように紅い。

 神に気付いたその女性はニャリと笑っていった。

「おせーじゃねぇか」

 その言葉遣い態度に神とともに地上へ降りてきた七人の大天使達は、怒りを露わにした。

「おいおい、そんな雑魚共連れてきても無駄死するだけだぜ」

 その言葉に神は眉を顰め、大天使達は激怒した…いやしようとした。しかしそれが叶うことはなかった。

「!!」

 大天使達に理解できたのは、今までなんの動きもなかった五キロ以上離れた勇者の方から突如として規格外の力をぶつけられたということだけだった。

「これは…」

 神が呆然と呟く。

 黒き無が一気に倍に広がったのだ。そしてそこにあった者や物は神を除いて全て消え去った。大きな力を持つはずの天使でさえも…

「ちっ」

 魔王が苦しげに舌打ちをした。その表情に神は納得する。

「なるほど、あなたが抑え込んでいたのですか」

 そもそも、半径10キロ程度にしか及ばないような力では天使を、その中でも最高位の大天使を一瞬で消し去ることはできない。魔王が結界を張り一人で抑えていたのだ、膨大な力が広がるのを。

 勇者から溢れ出す力は刻々と増加しているのだ。

「おい、あいつ勇者とはいえ人間だろ、なんでこんな力持ってんだ?」

「それは、本人に答えてもらいましょう」

 そう言って二人の視線がシランの方を向いた。

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