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正午を過ぎた頃。よく晴れていた朝と異なり、どんよりと曇り少し薄暗いくなった森の中を一人の少年が歩いていた。
「ちょっと遅くなっちゃったな」
苦笑いしながらそう呟くシランの腕には二人の一週間分の食材が、そして
「気に入ってくれるといいんだけど」
彼のポケットの中には、桃色の花のアクセサリーがついた、ヘアゴムが入っていた。
たまたま見つけた雑貨屋で、アイリスに似合うと思いシランが買ったものだ。
彼女が料理をするとき、髪が邪魔そうだったというのもあって買ったのだが、誰かに何かを送るという経験のないシランにとってたかが髪止めとはいえ、なかなか不安を覚えるものだった。
「まあ、そんなこと考えても仕方ないか。気に入ってもらえなかったら、今度は一緒に買いに行けばいいし」
町民達の安全など頭にもないようにそう呟いた。
そして、自分の中で結論を出して初めて彼は周囲の異変に気付が付いた。
「おかしい、何で...」
二人の住んでいる小屋までもうすぐだというのに全く感じないのだ、彼女がアイリスが放出する力が。
シランの頭にふと朝見た夢がよぎる。
「くっ」
シランは一気に駆け出す。
まるで彼の不安を掻き立てるように、曇った空から冷たく雨が降り始めた。
シランが何度か通ったことによって出来た獣道を全力で走り抜けた、今まで感じたことのない足の重みに苦しみながら。
数十秒走るとすぐに小屋が見えた。
いつもと何も変わらない筈の風景、だが不安は一層膨れ上がる。
そしてやっとドアの前向き着いたシランは、恐る恐るドアを開いた。
「アイリス?」
呼び掛けても返事はなく、かのじょ彼女の気配もない。
(きっと具合が悪くなって、寝室で休んでるんだ。それなら力が回復に回るから、力の放出が無くても納得できる)
そう自分に言い聞かせながら、濡れてしまった食材をテーブルの上に置き、寝室のドアをそっと開いた。
そして、
「はぁ~、やっぱり寝てたのか」
そこには、ベットの上で仰向けに静かに眠るアイリスの姿があった。
シランは脱力のあまり座り込んでしまった。
「ははは、なにやってんだろ」
必死になっていた自分が可笑しくなり、シランは声を上げて笑った。
シランはすっと立ち上がり、眠るアイリスに近付いた。
「でも、何も無くて良かった」
恐らく体調不良で寝ているのだろうから、何もないというわけではないのだが、それでもアイリスはここにいる。手の届く距離に。
優しく微笑みながらアイリスの寝顔を見る。すると、いつもより肌が白いように感じた。
(もしかして、かなり体調悪いのかな)
少し不安になり、シランは半分無意識にアイリスの手を握った。
「ぁ..........」
その瞬間、シランは全てを理解した。
そして、ただ感じた。世界から色が抜け落ちていくのを...
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