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クリスマス会-4-

「四番が一番を揉む」

「三番王様に肩叩き」

「炭酸を一気飲みにしようかな。二番」

「六番、即興ポエム」

 無茶ぶりも色々混ざりながらも、次々と二回誰もが王様が回ってきていた。

「やったです! 此恵が王様です!」

 王様ゲームも終盤に差し掛かってきたところ。残ったうちの此恵があがりを示した。

 これで残りは照と飛鳥のみとなった。

「それじゃあ二人でコンビニで何か買ってきてください!」

「はぁ? なんつーめんどくせえことをするんだよお前」

「ま、まぁまぁ照くん。王様ゲームですから」

 仕方なくと言った形で照はコートを羽織り、外へと出て行った。それに続いて飛鳥もまた扉の向こうに行った。

「……時々思うんだが」

 二人がいなくなった途端、部長は前から心に思っていたことを話し始めた。

「なんであいつら付き合ってないんだ?」

 その質問はみんなの中ではすでに共通のモノとして思われており、今更どうしたと誰しも心の中で呟く。

 しかしその不思議に答えが出なく、こうしてモヤモヤとして残っているのだ。

「うーん……ただ照がそう思ってないからなんじゃないっすかね?」

 同じ男として瑛太が代弁してみる。付き合いは陽ほど長くはないが、その次の位置にいるつもりだ。

 此恵も中学からの後輩として意見を述べる。

「先輩、そう言う事に前から無関心です」

「まーにーちゃんの置かれてたかんきょーがかんきょーだしなー」

 その張本人自らが付け加える。兄と姉、そして妹に追いつくために必死だった照は恋愛なんてしている場合ではなかったのだ。

「それもそうだが、カナカナの方にも問題があると思うんだが」

「夏撫ちゃん、自分のことを何故か卑下してるからね」

 飛鳥自身にも問題があることもみんなはわかっていた。だが彼女に関しては転校生やあまり自分のことを話さないということもあり、彼女の本心がわからないのだ。

「でも、飛鳥ちゃんの照への依存っぷり? 世話焼きっぷり? を見るとどこか不思議なんだよな」

 照のみにしていることを見てみると、明らかに好意を示しているようにしか見えない。それを否定することは、それを肯定していることになる。

 好きな人にみんなの前では嫌いと言うことはよくわかる行動ではある。

 それにしては初対面があんな運命的だからといって、それだけでここまでなことにはなるのか。

「カナカナ本人に訊いても同じことを言うだけだしなぁ」

 ボクなんかじゃ照くんと釣り合わないし、そもそも照くんのことなんて嫌いですから。そう言うに違いない。

 みんなで知恵を振り絞るものの、情報が少なすぎて何も答えへの道のりが掴めない。

「…………ま、ここで色々と考えてても仕方ないか」

 先へと進めないと思った悠里は自分のコップに残ってるジュースを一気に飲み干す。

「付き合う付き合わないは本人たちの自由だな」

「話題を提供した悠里がそう結論付けるの?」

 ジト目をしてきた渚のことをスルーしながら、二人が帰ってくるまでの時間潰しとしてまた話題をふっかける。

「で、お前らは誰かと付き合ってたりしないのか?」

「そういう部長は……あ、参考書が恋人でしたっけ? 股かけるのは止めておいた方がいいですよ」

 小馬鹿にしながらそう言ってくる瑛太に、開き直るようにして悠里は返す。

「……あぁそうだとも。エイエイはモテそうなのにそういう話はないのか?」

「まぁ照の隣にいると自然とっすね。なんなら部長が付き合ってくれるっすか? なーんて」「いいぞ」

「「え?」」

 売り言葉に買い言葉のはずだったのに、悠里の軽い肯定に瑛太は素で驚いてしまった。

 その驚きと重なるように渚も声に出していた。

「ん? なんだその反応は。というよりなんで渚が反応したんだ」

「じ、冗談っすよ部長。部長とは恐れ多くて付き合えないっす」

「そ、そうよ悠里。あとまだ受験が残ってるじゃない」

 慌てて二人が否定するが、悠里はもう自分のことを曲げるつもりはないらしい。

「受験が終われば別にいいだろ。それに、付き合わないとわからないことだってあるかもしれないだろ?」

「た、確かにそうっすけど……」

 額から脂汗がじわりじわりと出てくることを身に染みて感じている瑛太。

 そんな彼の複雑な心境を知らない此恵と陽は簡単にお祝いの言葉を述べた。

「いいじゃないですかみらい先輩! みんなに自慢できるです!」

「おー。おめでとー」

「では改めてよろしくな、エイエイ」

 悠里に握手を求められ、瑛太はしばらく動揺していて手を取れなかったが、ゆっくりとその手を握り返した。

「………………お、おぅっす……」

 内心で思っている以上にビビリながら、掠れた声を出した。これからどうしよう。一花にはどう説明しよう。怒られる。その気持ちでいっぱいだった。

 その隣で、渚が真っ白に燃え尽きている状態になっているのには誰も気付いていないみたいだった。




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