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部活動-4-

 時間もあまりないのでざっくりと校内をグルッと回ったが、ドロボウ組は誰も見当たらなかった。

 校内にはいないことになると、もはや一体どこに隠れているのかわからなかった。

「……まさか、外に?」

「で、でもさすがにそれは……」

 残る選択肢はそれだけになるが、校内諸共ルール違反には違いなかった。

 と、そこに悠里宛てに電話が着た。

 バイブ振動が起こってるスマホをスカートのポケットから取り出してみると、瑛太からの電話だった。

「誰か見つかったのか?」

『此恵ちゃんと初歌ちゃん。この二人陸上の用具置き場に入ってた』

 完全にかくれんぼの領域に達したこのゲームに、悠里は嫌な予感を感じていた。

「じゃあ遊木宮兄妹もどこかに隠れてることになるな……」

『そう考えた方がいいっすね。残り時間もそんなないっすから適当に切り上げてこっちに来てください』

 あまり時間がないため返事もそこそこにお互い切ってしまう。

「ふむ……テルテルは素直に外で隠れることはしないが……」

「うーん……あ、わかりました!」

 何か閃いた飛鳥が頭の上に光った豆電球を出した。

 その策を是非教えてもらおうと悠里は口に出そうとしたが、彼女もまた同じことを思いついたのだ。

「そうかあるじゃないか。校内じゃなくて尚且つあまり見つからなさそうな場所が!」

 そこに向けて二人は走り出した。



 場所は三階。

 今は誰も残っていない教室のドアを開け、そのまま真っ直ぐに二人は進んでいく。

 進んだ先にあるのは、窓ガラス。

 だが二人の用があるのはその先だった。

「いました!」

 二人が窓を開けて身を乗り出すようにして見たそれは、ベランダだった。

 この学校には二階から上の教室にはベランダが作られており、そこならばと考えに至ったのだ。

 案の定、そこには壁に寄りかかっている照がいた。

「判定ギリギリもいいところだな、テルテル」

 ケイサツが二人も来たことに対しての彼の反応が思っていたほど薄く、余裕さを感じていた。

 それを示すようにまだ寄りかかったままの姿勢だった。

「お前らは外に出てから校内に入ってきただろ。ルール違反じゃねーのか?」

「まぁその屁理屈を否定しないし寧ろその手があったと驚かされた」

 悠里が照のルール違反スレスレの行為わ認めてしまっていたことを飛鳥は驚くものの、彼女は続けた。

「でも、ギリギリのラインを行くならこっちにも手がないわけじゃない」

「あ? お前らはルール違反したから俺を捕まえられねーだろ」

「誰が私たちだと言った?」

 にやりと笑った悠里の顔を見た照はそこでようやく彼女の真意に気付き、咄嗟に横に転がった。

 先ほどまで彼がいた場所には、タイミング良く現れた瑛太が飛び込んできていた。

 三階のベランダまでの道のりを瑛太は無理なはずの外側から必死に手すりをつたって登って来たのだ。

 照がベランダにいると気付いた時に、再度瑛太に連絡を入れてここまで来させたのが作戦内容だった。

 もっとも、この作戦は瑛太が無事登ってくることが大前提だが。

「流石だエイエイ!」

「もう命綱無しのロッククライミングはコリゴリっすよ!」

 息を切らしながらも、逃げようとする照の後を追う瑛太。

 しかし照もまたこのことを念のために予想していたらしく、瑛太と距離が最大限に広がっている今、今度は照がベランダの手すりに手を掛ける。

「あ、照くん危ないです!」

 今更危ないという言葉を出しても、この状況でなくても照は思いとどまらずに行動するだろう。そのまま彼は手すりを乗り越えて一気に下の地面まで落ちて行ってしまった。

 普通の生徒なら一瞬戸惑ってしまうほどの高さのはずだが、そんなこと気にせずに迷うことなくそうした。

 ベランダに残された三人は落ちた照の姿を見るために身を乗り出して確認した。その時見た彼は丁度着地をするところで、それは見事に成功していた。

 そしてそのまますぐに、落下の衝撃で痺れが来たはずの足を使って走り出した。

「エイエイ負けるな! 翔べ!」

「無茶言わないでくださいっす。さすがにこの体力じゃすぐには無理っす」

 つい先ほどまで急いで三階まで登ってきたのだ、無理もなかった。

 この時点でケイサツ側は残り二人しかいなく、更に時間も残り僅かだったため、ドロボウ組の勝利が確定した。





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