部活動-2-
ドロボウ組はケイサツ側より早く校舎から出てて、ゲームの始まりはケイサツが出てきた瞬間である。
五分の猶予を与えられたドロボウは、作戦を考えるかもしくは好き勝手に逃げるかの二択になる。
「お前らもし捕まったりしたら罰ゲームだからな」
照が自然な流れでリーダーとなってしまったこのチームは最初から恐慌政治が開始された。
そんな脅しには此恵と初歌しか効かなかったが。
「ば、罰ゲームって何するです!?」
「わ、我に聖なる鉄槌を下すというのか!?」
久々の照の睨み顔に見事に怯んでしまった二人は、互いの手を握ってガタガタと震えていた。
「悠里のことだ、負けたチームには罰ゲームが待ってる。俺はそんなのゴメンだ」
「そ、それとは別の罰ゲームを……?」
恐る恐る此恵がそのようなことを訊いてみると、照は無表情で無慈悲に伝えた。
「負けたら俺に一ヶ月間学食を奢る」
「「えーっ!?」」
その宣告は二人にとっては罰ゲームそのものだった。高校生が毎回学食を食べることは意外とお金がかかったりするものなので、少ないお小遣いから自分のためではなく使われるのは厳しいものだ。
だから二人は全力でこの勝負に勝ちに行くことが決まった。
「頑張りましょう、ほとのセンパイ!」
「漆黒の鎧を纏いし者よ! この聖戦、必ずや我らに勝利をもたらそう!」
やる気満々になった二人を横目に、陽がボソッと照に耳打ちした。
「で、にーちゃんへの罰ゲームは?」
「知るか。あいつらはそんなの関係なさそうだ」
「あはは。まーいーかー」
外道の模範回答を示した照だったが、陽自身もあまり気にせずにけいどろを楽しむことにした。
一方ケイサツ側では。
「制限時間は最終下校時刻ギリギリの十分前、つまり四十分となる。それまでに外にいる四人全員を見つけ出して捕まえる。何か良い案があったら言ってくれ」
部室内で真面目な会議を行っていた。
みんなが丸くなって集まり、いかにもな雰囲気を出していた。
「言っちゃあなんだが、初歌はああ見えて確かに運動音痴だ」
「ふ、言っちゃあなんだが、このチームに運動音痴は二人もいるぞ」
「足引っ張りまくるから監獄の番人は任せて」
「だ、ダメダメですけど頑張ります!」
「でも条件は五分五分。逆に飛鳥ちゃんや瑞凪ちゃんをどう立ち回せるかがポイントっすね」
「向こうには陸上のプロが二人もいるのに五分五分か?」
「陸上のプロと言えど、これは陸上競技ではない。まぁ体力的なハンデくらいくれてやろうではないか」
「ハンデというより手加減がほしいけどね」
「手加減してもらうよりはお互いに全力でやりたいです」
「良いこと言ったね飛鳥ちゃん。それでこそ一部員だね」
「はぁ。夏撫さんくらいは普通だと思ってたんだけどなぁ」
「可愛い部員だろ?」
「うちの看板娘だしね」
「あんまり可愛くはないですけど……」
「十分可愛いよ。うん、飛鳥ちゃんは可愛い!」
「え、何この流れ」
「顔の傷は可愛い者選手権大会による名誉あるそれだからな」
「でも見事に優勝してわたしは感動したわ」
「も、もう! みなさん!」
「あははは」
途中からただの雑談になってしまっていたが、これで変に入っていま肩の力を抜くことができた。
「よし、頑張って勝つぞ!」
「「「「おー!」」」」
拳を作った手を天井に向けて高く挙げ、ドロボウチームに負けないほとの意気込みを見せた。




