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部活動-1-

 夢のように楽しかった文化祭も終わり、いつもの日常が帰ってきていた。

 飛鳥が学校に復帰する日、彼女はあの時の照と同じように緊張していた。

 頬の傷を見られてきっと心配されるに違いない。あの女生徒と偶然遭ってしまったらどうしよう。

 でも、飛鳥は照から勇気をもらったのだ。

「…………よし!」

 景気付けに両頬を叩いて自分自身を奮い立たせた。

 傷から少し痛みを感じたが、今の彼女にとってそんなことは気にならなかった。



 結局のところ飛鳥を知ってる生徒たちには心配をされたが、クラスメイトは勿論心配をしてから、

「大丈夫だよ! すぐ治るって!」

「こういうのもあれだけど、なんかカッコイイよ!」

「遊木宮くんの家庭内暴力!?」

 と彼女を元気付けるように励ましてくれた。

 その優しさが暖かくて、彼女は純粋に嬉しかった。

 先生にも少し気にかけてくれたが、クラスメイトが気を利かせて柔らかく誤魔化してくれた。

 そして放課後、帰宅部部室。

「なるほど。そんなことがあったんだな」

 珍しく部員が全員いて、部長が傷の理由を訊いてきたので飛鳥は正直に答えた。文化祭の時は色々とゴタゴタしていたため、理由を聞きそびれていたのでこうした訊いたのだ。

「なんで先生や警察に言わなかったの? そうした方が夏撫ちゃんもその子のためになるのに」

 渚が当たり前に思うことを口に出す。そうは言ったものの、飛鳥のことなので大体は理解していたが。

「まぁまぁ。過ぎたことなんだし。飛鳥ちゃんも気にしてないし向こうも今日はなんにもなかった。それだけだよ」

 渚の問いかけを真面目に答えようとした飛鳥より先に瑛太が言って、答えさせないようにした。

 それに便乗するように部長も、うんうんも頷いた。

「そんなカナカナのために、こうして部員全員揃っていることだ。部活をしようではないか!」

 部活。それはみんなで楽しく遊ぶこと。

 飛鳥がこの部に来て初めてやったあれだ。

「此恵も賛成です! 今度は体を動かしたいです!」

 前回は室内での簡単なトランプを使ったゲームだったので、逆に外で遊びたいと提案する此恵。

 それには元からそのつもりらしく、悠里は簡単にその案を受け入れた。

「今回はけいどろをしようと思う」

「よりにもよってけいどろ……」

 遊ぶ内容を宣言した部長の隣に座っていた渚があらかさまに嫌な態度を見せる。彼女には体力がないため、外で遊ぶ遊びやスポーツは基本好んでいないのだ。

 だがそれもまたみんな知っていることなので、綺麗にそれは流された。

「今は七人だから分けると三と四で少ないから、今回は特別に生徒会の二人も混ぜることにしよう」

 けいどろをするには少し人数が足りないと思った悠里は生徒会の二人を足すことを述べてみた。

 部員たちは何も反論しなかったが、みんながみんな、そんな約束取り付けてないんだろうな、と察していた。

「というわけだから早速私は二人に持ちかけてみてくる!」

「大丈夫なの?」

 根拠がないその自信に渚は心配していたが、悠里はない胸を張って自信満々に言う。

「安心しろ、私を誰だと思っている? 泥船に乗ったつもりでいてくれ!」

「沈みそうね」



「連れてきた!」

「マジか」

 部長が生徒会室に向かった五分後。宣言通り生徒会長と会計を連れてきていた。

 その事実に驚きを隠せないでいたが、生徒会の二人の顔から思うと乗り気で来たわけではないようだ。

「まぁ、私の巧みな話術にかかれば朝飯前さ」

「お前じゃなくて百合子のためだからな! 勘違いすんな!」

 二人がここに素直に来たのは同じ生徒会のメンバーである書記の百合子の発言によるものだった。

 問答無用で生徒会室を訪れた悠里は詳しいこともあまり話さないまま二人を連れ出そうとするものの、その話に乗るほど暇ではない二人は断ろうとしたが、百合子が、

「たまには会長も保戸野木さんも、羽を伸ばしてください。ここは私に任せてください!」

 と力強く言ってきたため、半ば無理矢理生徒会室から出されたのだ。

「つまり悠里は何もしてない。と」

「それじゃあグループ分けをするぞ!」

 悠里が取り出したのは九本分の細長い紙切れだった。片方の先端を隠すようにして片手で持っていた。

「赤い印が付いている方がドロボウだ。白のままがケイサツだからな! 順に引いてくれ」

 結果、ドロボウが照、陽、此恵、初歌。

 ケイサツが飛鳥、瑛太、悠里、渚、志馬となった。

「詰んだだろこれ」

「にーちゃんがいるところにオレありー」

「ドロボウ役なんて楽しみです!」

「ふ。其方らの幻の秘宝……必ずや奪ってみせようではないか!」

「足でまといになりますけど、よろしくお願いします!」

「まー楽しくやろうよ」

「妥当なチーム分けになったな!」

「みんな頑張って」

「なんで俺らけいどろなんてやろうとしてるんだ……?」

 チームがわかり、思い思いに意気込みを言っていく。

「よし、制限時間までにドロボウ全員捕まっていたらケイサツの勝ち。一人でも捕まっていなかったらドロボウの勝ち。場所は学校の敷地内全体で、学校内もしくはその学校外には行かない。以上!」

 大雑把だがシンプルでわかり易いルールをみんなに伝えてから、けいどろが始まった。





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