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文化祭 白雪姫

 むかしむかしあるところに、大きなお城に住んでいる双子の姉弟がいました。

 二人は大変仲が良いですが、弟の黒王子(くろおうじ)は放浪癖の持ち主で、いつも何十日とお城を空けてどこかへ行っているのです。

 連絡もなしで帰ってきたと思ったら、ふっとまたどこかへ出かけてしまうのです。

 これに困っていた姉の白雪姫は、お城のお宝に見つけた、なんでも答える鏡に相談してみました。

「なーなー鏡ー。ほんとーになんでも答えてくれるのかー?」

「え、呼び捨て? 自分、あなたよりは年上だと思いますけど。そんな態度でいいんすか?」

「確かこの辺にハンマーがあった気がするなー」

「すみませんごめんなさい自分が悪かったです調子に乗りました」

「よろしー。じゃーさー、にーちゃんの今いる場所ってどこー?」

「黒王子は今樹海にいますね」

「じゅかいー?」

「はい、樹海。そこは一度入ってしまうと死ぬまで二度と出れないという噂がありますね」

「なんで死ぬと出れるんだー?」

「え? それは、まぁ、死んでるからですよ」

「なーなー、死ぬってどーいうことなんだー?」

「え、えーっと…………………………く、黒王子に会えなくなるってことですよ」

「そっかー。それはダメだなー」

「ホッ」

「あとついでだけどさー、世界で一番かわいーのって誰ー?」

「ついで感覚で聞くんですね……白雪姫と黒王子ですよ」

「一番なのに二人ってなんでー? どーりついちーなのかー?」

「いやだって同じ顔ですし」

「そー言えばそーだったなー。忘れてたー」

「そんなこと忘れないでくださいよ……」

「じゃー行ってくるー」

「はい、いってらっしゃ……ってまさか!?」

「んー? なんだよー、割るぞー」

「やめてくださいお願いします。それより本当に樹海に行くのですか!?」

「いやー? 自分の部屋に戻るだけだけどー」

「………………そうでしたか、はい」

 それから白雪姫は、勿論自分の部屋には戻らず、黒王子のいる場所に向けてお城から飛び出しました。

 初めての外の世界に戸惑いを感じながらも、白雪姫は弟に早く会いたい気持ちでいっぱいいっぱいになりました。

 そしてあることに気付いてしまいました。

 樹海の場所を知らないのです。

 お城に戻ってまたなんでも答える鏡に聞こうかと思いましたが、鏡に旅路を止められることが目に見えていたので、どうしようと悩んでいました。

 すると、目の前に小さな小さな人が倒れているのが見えました。大きさは手のひらに収まるほど、小さな生き物でした。

「た、助けてください……」

「おー、喋ったー」

「お腹が空いてもう一歩も歩けないんです……」

「食べ物かー。なーんもねーんだよねー」

「そ、そんなぁ……」

「困ったー」

「えーっと、そ、それじゃあ何か食べ物も持ってきてくれませんか?」

「んー、仕方ねーなー」

「ありがとうございます!」

「お金ー」

「え?」

「だからー、お金ー」

「…………手持ち、ないんですか?」

「あるわけないじゃんー」

「…………助けてもらう人を間違えたかな……」

 小人から財布を預かり、白雪姫は小人に教えてもらって近くにある町に向かいました。

 そこの町で何か食べ物を買おうとした時、偶然の出逢いがありました。

「あれー、にーちゃんじゃんー」

「なんだお前か。しぶといな」

「なんの話ー?」

「別に。つか、なんでお前がここにいるんだよ、城はどうした」

「にーちゃんが樹海に行ったってきーたからさー。いてもたってもいられなくなったんだよー」

「樹海? そんなとこ知らねーよ」

「あの鏡嘘ついたのかー」

「変に木がたくさんあって雰囲気が暗いところにさっきまでいたけど」

「嘘はついてなかったかー」

「で、お前は何しに来たんだよ」

「にーちゃんに会いに来たー」

「帰れ」

「ヤダー」

「じゃあこのリンゴやるから帰れ」

「やったー、にーちゃんがオレに何かくれたー」

「はよ食べろ」

「いただきまーすー…………うっ」

 黒王子からもらったリンゴをなんの疑いもなく食べてしまった白雪姫は、突然その場に倒れてしまいました。

 そう。黒王子が持っていたリンゴは、樹海から勝手にとってきたリンゴだったのです。

 更にそのリンゴには猛毒が入っていて、一時間もすれば全身に毒が回ってしまい、死んでしまうのです。

 しかしそんなことを気にせずに黒王子は、丁度近くに置いてあった棺桶の中に白雪姫を入れて、お城に引き返しにいきました。

 途中、白雪姫にお使いを頼んだ小人とすれ違いましたが、黒王子はその存在には気が付きませんでした。とっても悲しいです。

 さて、無事にお城に戻ってきた黒王子は、棺桶に入れたまま白雪姫を置いてどこかに行ってしまいました。

 一人残された白雪姫でしたが、黒王子がお城から出て行って少し経って、むくりと起き上がりました。

「んー……よく寝たー」

 猛毒が回っているはずですが、白雪姫にはそんなものに負けるほど弱い身体ではありませんでした。

 しかし、それでも今日の出来事をすっかり忘れてしまっていました。

 今日も不在の黒王子の居場所を探しに、なんでも答える鏡を見つけにいきました。

 蛇足ですけど、黒王子は死体愛好家という特殊な性癖の持ち主なので、白雪姫をどうやって綺麗なままの状態で死体に出来るのかを探している最中でした。

 無限ループって怖いですね。おしまい。




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