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合宿 海-5-

「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……腕をあげたな、うたちゃん……」

「はぁ、はぁ、はぁ……く、くくく……なぁーっはっはっはげふっごふぅ!」

 結局二人はお昼休憩まで海水のかけあいをしていた。その結果、二人仲良くブルーシートに大の字になって横たわることになった。

 二人がブルーシートを占領してしまったため、照と渚は退くことになってしまった。

「楽しみすぎ」

「我ながら、ハメを外しすぎたようだ……渚、水……」

「はいはい」

 最初から持ってきていたペットボトルを、悠里の荷物から取り出す。

 それを手渡されたものの、パンパンになって疲れた腕を使おうとして落としてしまった。

「ははは……すまない、渚」

「しょうがない」

 落ちたペットボトルを拾って渚はキャップを開ける。悠里はいつでも飲めるように口を開けて待っていた。

 その姿を見て、いつか見た悠里のあの顔を思い出してしまった渚が、またあの時のような感情が産まれる。

「冷たい! つめごぶぶっ!?」

 何故か冷たい水を顔面にぶっかける渚。目や鼻、口に思いっきり入ってしまい、むせ返ってしまった。

 疲れて身体が動けないため、止めることもできずにただ水を受け続けることになっていた。

「わ、我が友よ! 我にも救いの手を!」

「はいはい。じゃあ身体起こして」

 渚にいぢめられている悠里を横目に、初歌も志馬に水を求めた。

 背中に手を入れて補助しながら、ゆっくりと初歌を起き上がらせてから買ってきたペットボトルを差し出す。

 悠里より疲れてはいなかったため、自力で持つことができたはずだが、わざと初歌は持てないフリをして志馬に飲ませてもらった。

「買ってきましたー」

「こばや先輩、楽しそうなことしてるですね!」

 そこに海の家で料理を買ってきた他のみんなが帰ってきた。

 その到着でようやく渚の手が止まった。

「焼きそばとかき氷、フランクフルトに焼きイカもありますよ」

 照と瑛太に食べ物を運んでもらっていて、みんなで食べようと悠里を立たせてから輪になって食べた。



「ビーチバレーやらね、照?」

 一通りみんな食べ終わったところで瑛太が照を誘ってみる。食後の運動ということらしく、道具もすでに準備してあるようで、瑛太の持ってきた荷物の中に入っていたようだった。

「別にいいけど」

「じゃあ決定。あと二人やりたい人ー?」

 特に否定することもなく照の承諾を本人の気が変わらないうちに受け、他のみんなに参加したいか聞いてみる。

 手が挙がったのは此恵と飛鳥だった。

「え?」

 というより、飛鳥は陽に挙げさせられていた。

「あすかっちもやってきなー。体動かしたほーがたのしーぞー」

 先ほど海で遊んでいた時に、たまに暗い顔をしていたことを陽はわかっていてそう言ったのだ。

 陽に気を使わせてしまい、申し訳ないという気持ちが溢れてきたが、そんな陽の気持ちを無下にしないためにもビーチバレーに参加した。

「準備も完了。チームは男女混合にするか」

 人が来ないところに移動してネットを張り、線も砂浜につけた簡易的なものを書く。

 荷物番は悠里と初歌がやってくれるとのことで、他のみんなは観客としてビーチバレーを見届ける。

 男女別でジャンケンを行い、勝ち負けでペアを組むことになった。

「頼むぜ、此恵ちゃん」

「任せてくださいです、瑛太センパイ! バレーといえば此恵ですから!」

「よろしくお願いします、照くん」

「ん」

 チームが決まり、自分たちのコートに入って軽い準備運動をする。

 そして、何故か陽が審判をすることが決まり、座りながら実況も兼ねた。隣には志馬と渚が並ぶように腰掛ける。

「解説のかいちょーにーちゃんー、この準備運動どーとるー?」

「俺解説!? つか始まってもないし準備運動にケチつける解説がどこにいるんだよ!」

「いーツッコミだー。それじゃー試合開始ー」

 志馬のツッコミを無視して、陽はビーチバレーの始まりを告げた。

「さー始まったけどー、なぎさねーちゃんはどっちが勝つと思うー?」

「チームワーク的には箕来くんたちの方がいいけど、遊木宮くんと夏撫ちゃんが息を合わせればわからないね」

「なぎちゃんの方が解説してるじゃん……」

「あー、あすかっちがミスしたー」

「遊木宮くんが怒ってるのを見て、これはダメかな」

「諦めるの早すぎ!」

「またまたあすかっちがミスしたー」

「箕来くんたちのチームワークは最高ね。士気も高まってる」

「もしかしてだけど夏撫さん、バレー苦手なんじゃ……」

「あすかっちはうんどーふつーだぞー」

「まぁ、普通だよね」

「普通なのか……」

「でもー、その分にーちゃんが補ってくれるはずー」

「でも遊木宮くんってバレーよりバスケのイメージが強いわ」

「急に関係なくなってきたな!」

「わかるー」

「よくいる不良の役ね」

「うん、まぁ確かにそんなイメージはあるけどさ……」

「でもにーちゃん、あんまりバスケ好きじゃねーんだよねー」

「そうなんだ」

「へー。意外だな」

「なんかねー、よく動くしぶつかるし疲れるって言ってたー」

「運動ってそういうものじゃないの?」

「元も子もないな……」

「まーにーちゃんはたにんずーのうんどーが嫌いなだけだからー」

「だから一人で走ってるのね」

「すげえ強引なまとめ方だな……」

「かいちょーにーちゃんはさー、何か好きなうんどーないのー?」

「志馬はこう見えて意外にも不本意ながらそうとは思えないけどなんと一応サッカーが得意らしいよ」

「そんなに俺って運動できないイメージあるのか!?」

「サッカーかー。あれだろー、判定ギリギリのところを目指すんだろー?」

「どこまでやったらレッドカードなのかを見極めるスポーツよね」

「ちげーから! そんな殺伐としてねーから!!」

「お前ら集中できねーから黙ってろ」

 照にそう文句を言われるまで、自分たちはビーチバレーを見ていなかったことに気付かず世間話をしていた。




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