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合宿 海-1-

 朝日が昇ってきており、夜空が次第に明けてきた時。朝早く起きる人には少しだけ早い時間帯。

 照と陽、そして飛鳥の三人はマンションの外に出ようとしていた。陽は兄の分の荷物を持たされて。

「…………ねみぃ……」

「寝ていーいー、にーちゃん?」

「二人とも、ちゃんと起きててくださいよ!」

 欠伸をして眠たげに目をこする遊木宮兄妹。飛鳥は二人が寝ないように見張っていながら、目的地へと向かった。



 場所は駅前。

 時間帯のせいでもあるが周囲に人影もなく、いても始発待ちの人だけである。

 そんな時間帯に集まっていたのは帰宅部の部員たちと生徒会の二人だった。眠たそうにしていたりわくわくしていたりとしている。

「お前たちでようやく揃ったな」

 やはりと言うべきか、照たち三人が集合時間のギリギリに着いた。

「で、これからどこに行くんだ?」

 何も知らされていないらしい生徒会長の志馬が帰宅部部長の悠里に問いただす。律儀に来たことには彼女も驚いていたが。

 が、悠里はそ知らぬ顔で受け流す。

「まぁ細かい話はいいじゃないか。さて、そろそろ始発が出るから行くぞ!」

 事情を知ってる飛鳥を除いた帰宅部はサクサクと駅に入っていく。そんな飛鳥はみんなの後ろを歩き、生徒会も少しは察しがついているため、素直について行った。



 期末テストが無事終わりを告げ、新たに暑いという名の夏がやってきた。

 セミが活発に活動をし、それを聞きながらも北上高校は夏休みに突入した。

 その夏休みの初日に帰宅部はある決まりがあった。

「明日の始発に乗るから、その数日の予定空けて荷物の準備してくれよ」

 そんな部長の命令が下された。

 飛鳥以外は知っていて、あの季節かと感慨深けになっているみんなに、勿論飛鳥は訊いてきた。

「何かするんですか?」

「そう言えばカナカナは初めてだったな。この部は夏休みの初めから数日間、合宿を行うのだ!」

 バン! と効果音がついたように悠里は説明する。

 格好つける必要あったのかと誰もが思っていたが、案の定飛鳥の目はキラキラとしていた。

「が、合宿ですか!? みんなでお泊まりなんですか!?」

「あぁそうだぞ。みんなで海行って、旅館に泊まる。夏を楽しむ」

「海……旅館……!」

 飛鳥の頭の中ではどんな妄想が繰り広げられているのかは大体みんなにはわかっていた。表情がすでに楽しみと書いてあったからだ。

「此恵も楽しみです! センパイから話は聞いてましたから」

 一年なのに知っている此恵は、去年陽からこのことを聞かされていたため、今の飛鳥と同じくワクワクとしている。

「去年は凄かったよなぁ……三年の人たちが」

「そうだね。あれはもう体験できないよね」

「マジで楽しかったー」

「あの先輩たちは本当に凄かったな」

「あんな合宿、二度と御免だけどな」

 去年の合宿を経験した部員たちが次々に言っていく。主に卒業していった先輩たちのことだが。

 が、そんなことより飛鳥と此恵は合宿ができるという嬉しさのあまり、今すぐにでも帰って準備をしそうになっていた。

「あーそうそう、今回は生徒会の二人も連れていくことにするから」

 ふと思い出したように悠里はみんなに言っておいた。二人というのは生徒会会長と副会長のことだ。

 そのことに関してはみんな否定することもなく、むしろ是非一緒にといった様子だった。

「よし、それじゃあ今日の部活はここまでにして、明日に備えるとしよう!」

 おー! とみんな口を揃えて賛成した。



「じゃあ、今日の会議はここまでにしようか」

「お疲れ様でしたー!」

 一方生徒会も、明日に備えて早めに切り上げていた。

「渡会会長、お土産、楽しみにしてますね」

「はいはい。ちゃんと買ってきますよ」

「合宿の時くらい仕事のことは忘れてくださいよ? こっちは任せてください!」

「うん、楽しんでくるよ」

 書記に帰宅部との合宿のことを告げて、彼女は笑顔で見送った。

 彼女を先に帰らせたが、会長と会計の二人はまだ残っていた。少しだけ残っている仕事を終わらせるためだった。

 そのことを書記に知られたら、彼女を心配させると思ったからだ。

「さてと、俺たちも帰りますか」

 終わった書類を見て、志馬は幼馴染みである彼女に視線を送る。

「ふふ……騒がしい宴の前の静寂。存分に楽しもうではないか」

「はは。戸締まりをするから先に行ってて」

 初歌は合宿前だろうが平常運転だった。

「ふんふんふーん~」

 いつもとは違い、珍しく鼻歌を混じりながら初歌は帰る支度をしていた。

 そのことになんとなく微笑ましくなりながらも、志馬は訊いてみた。

「楽しみなんだな」

「そ、そんなことはないぞ!」

「いやだって鼻歌歌ってたし」

 志馬に指摘されるまで自分が鼻歌をしていたことに気付いていなかったらしく、顔を赤くして否定する。

「こ、これはだな……そう、思念会話をしていたのだ! 魔族の者とな!」

「はいはい。そういうことにしておくよ」

「わわ、我が友! 我をからかっているのか!?」

「あははは」

 なんだか昔を思い出した志馬が、ポンと初歌の頭を撫でてやった。

 ぬうぅ、と変な声を出しながらも、その手を拒みはしなかった。




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