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文化祭考案-2-

 今日のホームルーム。

 それは一週間のうちにある特別なホームルームで、一時間目を潰してロングホームルームという時間になることがある。

 基本的にそれは色々な時に行うもので、例えばテスト期間の場合は自習時間となったり、席替えをする場合には席の決め方や移動の時間になったり、学校での行事の時の決め事の時間になったりしている。

 そして勿論今日のロングホームルームもそれの例外ではなかった。

「えーっと、これから文化祭の出し物を決めたいと思います」

 男女の学級委員が教壇に立って司会進行を務める。男子が司会、女子が黒板に字を書く担当だ。

 このクラスの先生はちゃんといるが、自分たちの出し物なので自分たちできちんと決めるというので、先生は生徒たちを見守っていた。

「何か、やりたいこととかありますか?」

 珍しく席が学級委員のところ以外全て埋まっている状況なので、できるだけ今日で決めたいと男子学級委員は思っていた。

 それはみんなも同じで、次々と候補が上がってきた。

「縁日!」「お化け屋敷!」「演劇!」「映画!」「昔からの遊び!」

 その候補を一つ一つ黒板に記していく。

 照はそれらを他人事のように思いながら、なんとなく目で追っていった。

 去年、照は文化祭に参加せず一人で学校の体育倉庫の中で隠れて寝ていたので、今年もそうしようと考えていたからだ。

 が、今年は違った。

「照くんは何がしたいですか?」

 クラスが盛り上がっている最中、後ろの席にいる飛鳥がこっそりと話しかけてくる。

 そう。今回はお節介で世話好きな飛鳥がいる。きっと照の心情など考えずに文化祭をみんなと一緒に楽しもうとしている。

 きっと姿を見せないだけで探しに来るのだろう、と思っただけで照を鬱な気分にさせてくれる。

「知らん。勝手にやってくれ」

「そんなこと言わないで照くんも考えましょうよ。きっと楽しくなりますよ」

 ほらこれだ、と見事予想が的中した照だった。

 一通り出揃った案に、学級委員はみんなが決めるために少し時間を作った。そのことで各々いつも絡んでいる面子と一緒になって考え始めていた。

 それで照の机の周りにはさらに瑛太がやってきて、飛鳥も席を立ってこっちにきて、計三人になった。

「どーする? 照はまたバックレか?」

 去年の時を思い出して瑛太は茶化すように言う。同時に照はあの時のことを思い出し、険しい顔つきになる。

「バックレってなんです?」

 いつものように飛鳥は知らないことを聞いてくる。今回は照の表情を見ていなく、あの時のことは聞けなかった。

 瑛太もちゃんと意味を教えてあげた。

「サボるってこと」

「なんでサボったんですか!? こんなに楽しそうなのに」

 それがありえないと断言するように、何故かと照に問いただした。

 だが照はもうあの時のことを記憶の隅に追いやって、椅子を傾けて足を机に乗せる。

「つまんなかったしやる気もなかった。めんどくさかった」

「ダメじゃないですか! じゃあ今回は前回の分もプラスしていっぱい頑張りましょう!」

「嫌だ」

 いつもの照と飛鳥の痴話喧嘩だったが、瑛太はそれを見続けて楽しもうとしていたけど、さすがに時間のこともあるので切りのいいところで介入した。

「じゃあ照を主役に抜擢するか」

「はぁ?」「それいいですね!」

 突然の瑛太の提案に、二人はまったく反対の反応を返した。

 そんな彼の意見をガン無視して、彼女と話し合う。

「主役ができる案は……劇か映画か」「おい」

「映画って作れるんですか?」「聞け」

「あぁ。夏休みに準備やらなんやらとするんだよ」「おい」

「それなら少し大変そうですけど、頑張れますね! 良かったですね照くん!」

「聞けお前ら」

 そろそろ照の怒りの沸点に達してきたところで、二人は無視をやめ、照の意見をようやく聞きだした。

「何か不満か? 主役になれるんだぞ?」

「そういうのはお前の担当だろ」

「俺は影で見守る親友キャラだから無理」

 実際そうなので照は反論できずにいた。

 なので照は矛先を変えて飛鳥にぶつけてきた。

「じゃあいいよ、お前で」

「ボクには無理ですよ、主役なんて」

 キャラは立っているはずなのに、性格で損をしていそうと思ってしまった男二人。二人が何故そんな呆気なく納得したことは、飛鳥にはわからなかったが。

 それから色々と話し合っていた三人組だったが、その三人組を客観的に見ていたクラスメイト達は、

「なんだあの三人組……勝てない」

「イケメンと美少女しかいない……」

「不真面目に爽やかに天然……アニメの人達か」

「二股?」

「夏撫さんいいなー、遊木宮くんに話しかけられて」

「照許すまじ! 爆発しろ!!」

 と色々とコメントしていた。




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