表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/100

文化祭考案-1-

 雨の頻度が下がり、段々と暑くなり始めたこの頃。あっと言う間に期末テストが近くなり、再びテスト週間に入る前。

 既に冬服から夏服に替わり、男子はワイシャツ、もしくはブレザー。女子はリボンも外し、スカートも素材が変わって軽めの服装。

 とはいうが、基本女子はオシャレを意識していたりしなかったりと、両極端な存在がちらほらといるため、結局はみんな色々な制服の着こなしをしている。

 悠里は長袖のワイシャツを捲くって着ていて、渚と飛鳥は学校指定のブラウス。陽は腰にブレザーを巻いて半袖ワイシャツ。此恵は半袖ワイシャツといった風に個々別々である。

 夏休みが終わった九月半ばに北上高校は文化祭を控えているため、その出し物の案がこの時期に決まりつつある。ただし禁止事項は、三年以外の食べ物関係の屋台の禁止だ。

 全学年全クラスと部活、そして先生方による文化祭の案はそれぞれが決める。

 それは帰宅部も例外ではなかった。

「お前たちは何か決めたのか? 私たちは無難に喫茶店になったが」

 悠里と渚は同じクラスで、無事決まったようだった。

「喫茶店かー。演劇部との掛け持ち大変じゃないっすか?」

 喫茶店とは言っても悠里は演劇部の部長である。演劇部も文化祭に参加するし大変な作業だと瑛太は思っていたが、悠里は心配無用と言うように手を振る。

「演劇部の休憩中に喫茶店の仕事を入れるし、そもそも演劇部の衣装を着ながらやれば番宣効果もばっちりだ」

「先輩がそういうなら、構わないんっすけど」

 文化祭は土日の二日間に行われ、土曜は校内のみ、日曜は一般公開となっている。

 演劇部自体も劇を発表するが、それは午前午後に一回ずつの公演で、さらに喫茶店もまだ決めてはいないが一時間のローテーション制なので、あまり負荷はないと悠里が判断したのだ。

「此恵のクラスは縁日ですので、来てください!」

 一年である此恵のところも決まっていて、何種類かの縁日にある遊びを取り入れてやる出し物。賞品はまだ考え中ではあるが、基本は簡易なものになっている。

 縁日という言葉に、懐かしいなぁと瑛太が呟く。

「一年の頃俺らも縁日やって、色々凄かったよな」

「おー。凄かったよなー。あのにーちゃんがあんなことするなんてなー」

 同じクラスだった陽も感慨深げに答える。

 さらに三年生たちも、うんうんと頷きあった。

「え、凄いってどういうことですか?」

「教えて下さいです!」

 知らないのは去年の文化祭に参加していない飛鳥と此恵だけだった。

 照の意外な一面ということもあり、そのことで興味を持った二人は、より知りたい気持ちが高まった。

 が、みんなは揃いに揃って凄かったとの一点張りだった。

「なんでも部は休憩所兼人貸し出しになったよ」

 二人の興味が落ち着いた頃、瑛太も自分の部活の出し物を教えていた。

「大体いつもどおりだし、人貸し出しも予約制になってるから本番にならないとわからないな」

 なんだかんだ一番忙しいのはなんでも部なのかもしれない、と誰もがうっすらと思っていた。準備期間も引っ張りだこな未来が見えていた。

「ボクのところはプールを借りて遊ぶ感じです」

「涼しい季節だけど、人来るの?」

 今になってようやく水泳部が活動し始めてきて、飛鳥も帰宅部に顔を出す機会が少なくなっていた。

 暑い時に冷たい水の中に入れることが羨ましいと思いながらも、暑さが引いていく季節にそれは大丈夫なのかと瑛太は疑問に思った。

「何故か人気らしいです」

「スク水だしなぁ」

 と思い出したかのように悠里は呟く。

 あー、と飛鳥以外のみんなは納得してしまった。

「え、あの、なんでです?」

「あー、オレのとこの出し物はお化け屋敷だー」

 飛鳥の疑問に被せるようにわざと陽は大きな声を出して言う。

 それに乗っかるように部長も続ける。

「お化け屋敷も恒例だな。みんな楽しそうだな」

「お化け屋敷は兎も角として、飛鳥ちゃんたちのクラスは何をやるの?」

 あまりお化けの類が好きではない渚が早々にその話題を切り上げ、別の話題を提示した。

 が、今度の話題は飛鳥を困らせることになってしまった。

「え、えーっと、その……」

 助けを求めるように同じクラスの瑛太に視線を送ってみるが、彼もあははと渇いた笑いしか返さなかった。

 そんな二人の反応に、他の部員たちは疑問を持ち、さらに此恵が手を上げ質問してきた。

「そういえば、先輩はどこです?」

 始めから部室に照の姿がなく、少し珍しいことだったので気になってはいたが、先ほどの二人の反応で思い出したのだ。

「あ、あのですね、少し長くなりますけど……」

 困ったように頬を搔きながらどこから説明しようかと飛鳥は悩んだが、最初から話さないとわからないことなので、今日起こった出来事から話し始めた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ