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生徒会長-3-

 保戸野木初歌。三年生であり生徒会会計の職についていながら、現在進行形で中二病患者真っ最中だ。

 小学校の頃は純粋無垢で、何を言われても信じ込んで疑わないほどの少女だったが、中学の頃、時の流れに身を任せて中二病を患った男子たちを見て、調べていくうちに自分も中二病の虜になっていってしまった。

 その結果、高校入学の時に出会った懐かしき幼馴染みたちの反応は、別人だと信じたかったとのことだった。

「で、今度はうたちゃんの登場ですか」

 ため息をつきながら悠里は言う。

 昔からのあだ名で呼ばれた初歌は、ふっふっふ、と不敵に笑いながらも志馬の隣に席を置く。

「我の再来に肝を抜かしたか。今なら古き友との仲に免じて許しても構わないぞ」

「誰が許されようとする行為をしたよ」

「つか、どうして初歌がここにいるんだ?」

「古き友との久方ぶりの余興だからな。我無くしてどうする」

「要は仲間外れはヤだってことね、はいはい」

 幼馴染みの空気により、飛鳥は自分がここにいてもいいのかと考えだし始めた頃、また議論が再開した。

「遥か古来より行われているこの問答に終止符を打とうではないか」

「お前らも、別にこの部がなくたってみんなで集まれるだろ」

「いちいちそれを連絡しなきゃいけないことがめんどうじゃないか。それに、遊べなかったらどうする」

「その時はまっすぐ家に帰ればいいだろ」

「遊びたいという気持ちをあっさりと捨てられる訳がないだろ」

「そうだとしても、結局ここで待ってて誰も来なかったらどうするんだよ」

「来ないということは部活をしているはずだ。なら一緒に帰れる」

「……ったく、どうしたらお前はこの部を廃部にしてくれるんだ?」

「そっくりそのまま返すが、どうしたらお前はもう言いがかりを言うのを止めてくれるんだ?」

「其方の言うこともわかる。しかしわかってくれ。我が友に掛かる責務が日に日に増していくのだ」

「一部活に執着しすぎだと思うけどな。この学校は部活事にはあまりうるさくないはずだが」

「二年間何もしなかった部活を、これ以上好き勝手させるわけにはいかない」

「せめて後世にまで語り継がれるような記録を残してくれるのならば、我らは何も語るまい」

「記録記録って、大体……」

 また膠着状態になりつつある議論に、この時間に飽きた照が退出しようと席を立った。

 が、それは生徒会長によって阻止された。

「遊木宮照、この後用があるからまだ残っていてくれ」

「そんないつ終わるかわかんねーことに最後までいたくねーよ」

 正論を言われ、うっと一瞬言葉が出なかった志馬だったが、ならばと先に照の問題を片付けようとした。

「お前、このままだと内申がどうなってもいいのか? まだあと一年はあるから、今からでも遅くはない」

「未来のことなんて知るか。別に、今さえよければそれで構わねーよ」

 そう言い残して去ろうとした照に、何かいいことを思いついたらしく飛鳥が両手を叩いた。

「わかりました!」

「わかったって、何が?」

 渚が本を読むのを止めて飛鳥に注目する。他のみんなも同じようにし、飛鳥は注目を浴びる。

 若干この光景に恥ずかしくなりながらも、きちんと説明し始めた。

「部活の活動目的があればいいんですよね?」

「あ、あぁ。ちゃんと記録を残してくれれば、それで」

「それなら、ボクたち青春系帰宅部が照くんを更生させます!」

 シーン、とその言葉によって静まり返った部室にいる生徒全員は、飛鳥の言った事を頭の中で繰り返した。

 そして、ようやくわかったらしいみんなが、声を揃えて返した。

「「「「え?」」」」

 学力に自信がある志馬でさえ、同じ部員仲間である悠里でさえ、友だちのように接することになれた渚でさえ、中二病を患い難しい単語がわかる初歌さえ、同じ時間を過ごすことが一番長い照でさえ、こう聞き返すしかできなかった。





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