生徒会長-1-
中間テストが無事終わり、生徒たちが一息つく時期だが、それに代わり雨が降る日が多くなっていった。
「だるい」
「照くんはいつだってそんな感じじゃないですか」
「うっせ。雨だと帰るのすらめんどうなんだよ」
結局この二人の中であの約束はなかったことになり、いつもと変わらない関係が続いていた。
そんなある日のこと。
相変わらずジメジメした長雨が続いている時、照と飛鳥が二人揃って放課後の部室へと向かっていた。
すると、部室の前に上級生と思われる一人の男子がいた。灰色の短髪で頭にあるアホ毛が特徴的な生徒。
「誰ですか、あの人?」
「知るか」
少し離れたところにいる二人にとって、その男子の顔を認証することはできなかった。
が、その男子は部室の扉を必要以上に無理矢理開けようとしていた。
「……で、こういう……んだよ……!」
ブツブツと愚痴を言いながらその場で腕を組み、どうしようかと考えていた。
「あの人怖いです……」
「そーだな」
物陰から見ていた二人もどうしようかと考えざるを得ないことになった。
部員ではない誰かが何か自分たちに言いに来たのかと思ってしまい、ますます不安になっていく飛鳥。
しかしそんな飛鳥の心配を他所に、早くどけよと心の中で呟いている照。
やがて飛鳥が覚悟を決めたように、よしっと活き込んでから男子に近づいた。
「あ、あの……」
「うわぁぁぁあああ!!」
飛鳥が後ろから急に声をかけたにしても、それ以上の反応をして男子は扉に後ずさった。
もちろん、勢いがありすぎて突撃したという結果になったが。
「ご、ごめんなさい! 大丈夫ですか!?」
逆に冷静になれた飛鳥が、ぶつかった衝撃で尻餅をついた男子に手を伸ばす。
あ、ありがとうとその手を借りて立つことができた。
「あの、それで部活に何か用ですか?」
服についた汚れを払っていた男子にそう訊ねてみた途端、男子が思い出したかのように、あーっ! と声をあげる。
「君、この部の部員? 悪いんだけど小早川か瑞凪か遊木宮っていう先輩のこと何か知ってる?」
「え? えーっと、知ってますけど……」
突然の攻めの姿勢に飛鳥もたじろぐが、男子は止めようとはしなかった。
「なんで今日に限っていないの? せっかく時間空けたっていうのにさ」
「あ、あのー……」
「大体、先輩や部長がしっかりしていなくてどーするんだよ。後輩に全て任せてんの? これだから帰宅部は、全く」「うるせえ」
ドスッ、と傍観を決め込んでいたはずの照がカバンを使って男子の脇腹を攻撃する。
予想外の攻撃に、男子も痛がって照を睨みつける。
「何すんだ!! って遊木宮照!!」
「悠里先輩と渚先輩を呼んだから、後は勝手にしろ」
名字を呼ばれて目つきが険しくなりながらも、空いている片手には携帯が握られており、先輩二人を呼んだことには違いなかった。
それじゃ、と踵を返そうとする照だったが、男子はそうはさせないとその肩を掴む。
「お前は個人として聞きたいことが山ほどあるんだ」
「俺はお前に迷惑なんてかけた覚えはねーけど?」
「無断遅刻欠席早退。最近は減ったらしいけど」
「「…………」」
「えっと、その……誰です?」
まさに一触即発の雰囲気に、飛鳥がおずおずと訊ねてくる。男子が答えようとしたその時に、先輩たちが部室に到着した。
悠里が片手を挙げてフランクな態度で応える。
「よう、生徒会長」
「…………え、生徒会長っ!?!?」




