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GW-4-

 昼が過ぎて、太陽が地平線に降りてくる頃。

「あーめんどう」

「あと半分です。頑張ってください!」

 小休止を挟みながらまだ宿題と格闘していた。

 飛鳥はとっくに全て終え、照の宿題を見てアドバイスを出していた。

「照くんって本当のバカではなくて、下の中くらいなんですね」

「最近のお前、俺をバカにしてもなんの抵抗もないよな。つかバカにしすぎてるよな」

「基礎は少し出来てますから、後は応用ができれば」

「聞けよ中の上」

 照の扱いに慣れてきたのか、ほどよくあしらい方がうまくなってきていた飛鳥であった。

「少し頭がいいからって調子に乗るなよ?」

「なら今度の中間テストの時にボクより点数をとってくださいよ」

 ここぞと言う風に、飛鳥は天狗のようにして照を下に見る。

 そんな飛鳥をイラッとした目つきで照は睨みながら条件を言った。

「なら俺の方が高かったら、教室のど真ん中で土下座してボクの方が馬鹿でした許してください照様って言って懺悔して今後俺の対応も改めて反省しろ」

「多い! 多いですって!」

 想像してたことより多いことに驚きを隠せないでいた飛鳥だったが、そこまで言うならとこっちも繰り出してきた。

「じゃあ、ボクの方が高かったら、その……」

 モゾモゾと、先ほどの威勢が嘘のように指を弄りはじめた。

 こういう時に限ってバカなことを言うと確信していた照は、どんなバカな発言がくるかと身構えていた。

 やがて、言う決心がついた飛鳥は小さな声で呟いた。

「…………こ、今度からお前、とかじゃなくて、ちゃんと名前で、ボクのこと、呼んでほしいな……」

 沈黙。

 まさかの発言に身構えていたはずの照は固まり、どうやって返そうか悩んでしまった。

 そしてしばらくして、ようやく言葉が浮かんできた。

「……俺、お前の名前言ってなかったっけ」

「よ、呼んでたらこんなこと言いませんよ!」

「…………」

 流石の照でも引いてしまった。

 そんな照の反応に、自分が間違っていたと理解した飛鳥が顔を赤らめながら弁解した。

「だ、だって友達なら名前や君付けちゃん付けで呼び合うことは普通だって聞きましたから! その……えと……」

 きっと新しくできた女友達に聞いたのだろう。

 向こうもきっと照のこととは理解していなく、普通の友達としてのことで話したのだろう。

 なんだか気まずい空間になってしまい、頭が混乱している飛鳥が何かまた言おうとしたら、

「にぃぃぃぃいいいいちゃぁぁぁぁあああんっっっ!!」

 突如大声で奇声を出しながら陽が勢いよく居間に入ってきた。

 この空間をぶち壊してくれたことに感謝をする照だったが、いきなりの登場に驚きを隠せずにはいられなかった。

「おま、急になんだよ」

「なんでもいいからオレに可愛いって言えーっ!!」

 わけのわからないことを言いながら、ここまで来るのに乱れた息を整えていた。

 そしてようやく照は陽のこの状態に気付き、条件を出してから言う。

「じゃあ、俺の宿題やれ」

「わかったから早く言えー!!」

 まるで薬中毒の患者のようにわたわたとしていて、いつ見てもキモいと冷静さを取り戻している照だった。

「可愛い」

「ふー。落ち着いたー」

 そこにはいつもの気の抜けた陽がいて、汗を拭うように額を拭いた。迷いが晴れたような、スッキリとした顔つきだった。

「ど、どうしたんですか?」

 ここでようやく冷静になった飛鳥がことの発端を確認しようとしていた。

 照はめんどくさそうに陽を指さしながら答える。

「こいつ、異性から真面目に可愛いって言われるとさっきみたいに照れるんだよ」

「え、さっきのって照れてたんですか!?」

「やははー」

 先ほどの狼狽えきった陽などいなく、いつもどおりの陽がそこにいた。

「で、何故か俺が可愛いって言うと治る」

「だってあのにーちゃんが可愛いって言うんだぜー? もー面白くてさー」

「とりあえずこれ全部やれよな」

 テーブルに置かれている残りの宿題を指さして照はその場に寝転んだ。もうやらないという意思表示の現れだった。

「へー……って照くん、ダメですよ! ちゃんと自分でやりましょう!!」

 結局のところ、照の宿題は陽が速攻で終わらせて一日が終わった。





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