表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/100

GW-3-

 照のゴールデンウィークは至ってシンプルな過ごし方である。

 気のままに起きて寝る。それの繰り返しだ。

 しかし、そんなゴールデンウィークの使い道は今年で消えてしまうことになった。

「照くん! 宿題しましょう!」

 朝から飛鳥の乱入により、大事な睡眠時間がなくなってしまったからだった。

 いつもの十秒に一回のチャイム。彼が出てくるまで何回も鳴らす。

「……少しは寝かせろ。こんな朝っぱらからなんだよ」

 うるさく感じ始めた頃に、ようやく飛鳥を家に招き入れた。

「もう九時ですよ? それにこうでもしないと照くん宿題なんてしませんですし」

「朝っぱらから来ても変わんねーよ」

「それもそうですね」

 家に入れるんじゃなかったと後悔している時に、照はこっそりと陽に招集メールを送っていた。

 それには飛鳥は気付かず、ちゃんと自分の分と照の分の宿題を用意して取り掛かろうとした。

「でもやらなきゃやりませんよね?」

「……他の女友達とは遊ばねーのか?」

「遊びますよ。明日」

 完全に逃げ場がなくなった照は、ため息を長くついてから宿題にとりかかろうとする。

 それを見た飛鳥は、うんうんと頷いて自分の宿題を始めた。

「それにしても照くん、ゴールデンウィークなのにずっと寝る予定だったんですか?」

 宿題に手をつけながら飛鳥は照に訊ねてくる。一方照は飛鳥の問題を解いてるスピードの三割ほどの速さで解いていた。

「悪いかよ」

「いつもと変わらないなぁって」

 そこ、間違ってますよ? と照の答えも見て丁寧に教えていた。

 めんどくさそうにため息をつきながら訂正を加えた。

「お前のせいでできなくなったけどな」

「なら今日で終わらせれば明日から寝れますよ」

「なんで徹夜確定みたいなノリなんだよ」

 早くも飽き始めてペン回しをし始めた照に対して、ペン回しすごいなぁと少し憧れも持つ飛鳥。

「あはは。別に照くんのことバカにしてませんからね」

「バカにしてないならバカって言葉は使わねーよ」

「と、とにかく、徹夜にならないように頑張りましょう!」

 ペン回しおしまいですと言わんばかりに照に勉強を促した。

 しばらくの間二人は宿題に集中していたが、先に照が痛くなってきた頭を片手で押さえながら、ふと疑問に思ったことを口にした。

「……お前さ、こういうの俺以外の男にやってんの?」

 その問いかけは唐突すぎて、えっと飛鳥の思考を停止させた。

 しかしそれは一瞬で、宿題で解いた問題のように簡単に答えを出した。

「やりませんよ。どうしたんですか、急に?」

「なんで?」

 珍しく食い下がる照にこっちが疑問を持ちながらも、真面目に飛鳥は考え始めた。

 今度はすぐ答えが見つからなく、思わず宿題をしていた手が止まるほどだった。

「なんでって……なんででしょう?」

「俺が知りたい。じゃあ瑛太には俺にやってることを同じようにやるのか?」

 真っ直ぐ見つめる照の真剣さに飛鳥は圧倒されながらも、頑張って見つけようとする。

「うーん……多分、照くんが瑛太くんでもやってると思いますよ」

「は?」

 思わず間の抜けた声を出してしまった照だが、今度は飛鳥が真剣な表情になった。

「きっと、隣の人が照くんじゃなくて瑛太くんでも同じようなこと、してますよ」

 ますますわけがわからなくなってきていたが、なんとなく照は飛鳥らしさを感じ、今日何度目かのため息をついた。

「…………なんだそれ。家が近ければいいのかよ」

「そうかもしれませんね」

「…………よくわかんねーやつ」

「あはは……よく言われます」

 苦笑いをして頬をかく。

 結局照の知りたかったことはわからなかったが、飛鳥はこの照の問いかけが、本人の気付かないうちに心のどこかに残ってしまった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ