GW-2-
「へー。ねーちゃんが二人もいるんだー」
「は、はい。四と八歳差です」
「けっこー離れてんだなー。そんな年離れててどーよー?」
「え、えと……楽しいですよ」
「オレ年離れてねーからあんまりわかんねーんだよなー」
「双子、ですよね……何か言われたりしなかったんですか?」
「そりゃー最初は驚かれたさー。でもまー友だちになるのも早かったなー」
「そんな前向きな姿勢、羨ましいです……」
「逆にーなんでお前はそんなんなのー?」
「う、生まれつきです……」
「変わったやつだなー」
「うぅ……遊木宮先輩には言われたくないです……」
「おー言ったなー? このこのー」
「ひゃいっ!? く、くすぐったいです!」
「あははー」
無事に買い物が終わり、二人は軽く何か食べようということになり、デパートにちょうどあったファーストフード店で食べることになった。
「ワックーワックー」
「ゆ、遊木宮先輩はワック好きなんですか?」
「おー。手頃に食べられるやつはなんでも好きだぞー」
しかし昼は過ぎたといえど客はたくさん来ていて、店内で座るのは無理だった。
持ち帰り用の袋に入れてもらい、二人はデパートから出た。近くにある公園まで行き、設置されてある長椅子に座って一緒に食べ始めた。
「んーおいしー」
「たまに食べるのもいいですね」
モグモグと二人して食べていると、奏汰が陽の頬にソースがついていることに気付いた。
「あ、あの、動かないでください」
「んー?」
ポケットティッシュを使って奏汰は陽の頬についたソースを取ってあげた。
その手つきは慣れているもので、おおー、と陽が感心するほどだった。
「さんきゅなー」
「い、いえ大したことじゃ……」
今更ながら自分のしたことが恥ずかしくなり、顔を赤くして俯く。
対する陽は異性の後輩に顔を拭かれたことに抵抗はない感じだった。
「手馴れてたなー。よくやってんのかー?」
「はは、はい。よくお姉ちゃんに……」
「いーおとーとだなー」
「あ、ありがとうございます……」
その後も何回かまたソースがついていたり、服に染みを作りかけたりして奏汰の出番が減ることはなかった。
食べているだけのはずなのに奏汰は少し疲れを感じてしまうほどだった。
「ごちそーさんー」
そんな奏汰のことなんて気にせずに、陽は奏汰より先に完食し、お腹も膨れて上機嫌だった。
「んー? まだ半分くらいしか食べてねーじゃんー」
「あ、あはは……僕、食べるの遅いので……」
実際憧れの先輩と一緒に外食してるという光景でお腹いっぱいで、更に陽の世話で緊張と疲れが食欲に勝ってしまったのだ。
「それじゃー待ってるよー」
「ああ、あ、ありがとうございます……」
まだ先輩と一緒にいたいという気持ちと先輩を待たせてはいけないという気持ちがぶつかり合い、結局十分な時間をかけて食べ終えた。
「ちょこちょこ食べてかわいーなー」
「か、可愛いって言わないでください! 気にしてるんですから……」
思わず出た陽の言葉に、気にしていることと重ねて奏汰は膨れ顔をする。
こんな顔すんだー、とマイペースに思いながら陽はごめんごめんと謝る。
「そ、それに……ゆ、遊木宮先輩の方が僕より可愛いじゃないですか」
奏汰の正直な一言。その言葉で今度は陽が固まってしまった。
微動だにしない陽に疑問を思った奏汰は遊木宮先輩? と表情を伺った。
陽の表情は、兄である照でも見たことがないであろう耳まで真っ赤なりんご色をしていて、瞳には涙が溜まっていた。
突然の変化に奏汰は驚きを隠せないでいたが、何か奏汰が行動する前に、
「お、おおオおオレは可愛くなんてねーよー!!」
大声をあげてその場から逃げるようにして自転車に乗って行ってしまった。
訳が分らないまま、奏汰はしばらくの間その場で動けずにいた。




