勉強会-3-
放課後、帰宅部部室。
そこには帰宅部の部員全員が勢ぞろいしていた。
「なんでお前らがいんだよ」
「照が勉強すると聞いて」
「面白そーだからー」
「人生相談をするって聞きました」
「女の子と二人で勉強会とかカップルか」
「興味深いことだから」
恐らく瑛太がみんなに広めたのだろう。飛鳥が一人でわくわくしていたため、瑛太は察したに違いない。
みんな面白半分で部室に集合していて、照はため息をつくしかなかった。
「それじゃあみんなでしましょう!」
そんな照の気持ちを知らずに飛鳥が意気揚々と勉強道具を取り出した。
「その前に、お前に聞きたいことがある」
「なんですか? 小テストの範囲ですか?」
「お前、ここにいるやつ以外に友達いるのか?」
その言葉だけで飛鳥の行動が止まった。え、それド直球に言う? という他の部員の連中が目で訴えた。
しかし照は真っ直ぐ飛鳥を見た。
しばらくの間部室は無音だったが、ようやく飛鳥が声を発した。
「…………わからないんです。本当に」
「飛鳥ちゃんがよく一緒に食べてる女の子グループは? 楽しそうに話してたりしてるけど」
瑛太が昼休みの光景を思い出しながら訊ねる。
その問いに対して、飛鳥は首を振った。
「なんだかんだなし崩しみたいにグループに入っていて、特になにもしてなくて、ボクは友達だと思ってても向こうはなんにも思ってない、みたいに感じてしまって……」
飛鳥の言葉を黙って聞いていた帰宅部部員たちだったが、みんなで顔を合わせたが、そんなことをお構い無しで照が彼女の後頭部を叩いた。
痛い! と叩かれたところを抑えて飛鳥は照を問い詰めようとした。が、先に彼の方が彼女を問い詰めた
「お前が友達だって思わなくてどうするんだよ」
「え……?」
照らしからぬ言葉に飛鳥はきょとんとしてしまい、呆然としていたら、兄に続いて陽が言い出した。
「友達って、二言話したらじどーてきになるもんだろー」
「友達じゃなかったらまず弁当を一緒に食べたりしないしな」
瑛太が陽の言葉を重ねるように言う。
「此恵はまだセンパイのこと詳しく知らないですし、いい出会いなんてしてないですけど、友達ですよ!」
「向こうが友達だと思ってたらその発言は最悪だぞ」
「うん。その子たちのことすごく傷つけるよ」
後輩、部長、友達が思ってることを口にする。
みんなの気持ちがちゃんと飛鳥に届き、彼女は胸を強く打たれた。
それと同時に、自分の考えていたことが馬鹿らしくなってきて、反省した。
「そうですね……ちょっとボク、今日は帰ります!」
そう言って飛鳥は素早く勉強道具をしまい、部室を後にした。みんな飛鳥が次にすることを簡単に想像できたため、そんな彼女の背中に無言でエールを送った。
「全く。バカだな」
「まぁそれが飛鳥ちゃんの良さでもあるからな」
「オレはにーちゃんが誰かを励ますことにビックリしたー」
「センパイっていつも毒と愚痴と文句しか言いませんですし、珍しいです」
「明日は雪か」
「隕石でも降ってくるかもね」
「…………」




